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よく晴れた春の日の一幕

「また今日も来たん?ええかげん、うざったいんやけど」


 心底うんざりしたような声が僕と彼女しかいない学校の屋上に響く。


「まあまあ、そんなこと言わずに。学校の嫌われ者どうし仲良くしようよ」


「チッ、誰が嫌われ者や、どの口がいいようるねん。私は別に嫌われとらんは、ただちょっと怖がられとるだけ。嫌われとるんは、お前だけや」


「舌打ち、いや僕も嫌われとるけど君もそうとうだよ。小動物みたいな、いかにも無害です~みたいな見た目してるくせに口を開けば罵詈雑言が飛び出してくる。転校してきてまだ1か月のなのに、もう誰も話しかけてこないことがその証拠だよ」


 この女、“(みやこ)さや”は小柄な可愛らしい容姿に鈴の音のようにきれいな声だというのに、その愛らしい口から聞こえるのは刺すような言葉ばかりだ。


 転校初日この女はその可愛らしい容姿でクラス中のうわさになった。

二日目この女はその愛らしい口から出てくる凶器で学年中のうわさになった。

三日目この女はその華奢な身体からは想像できない力業でクラスメートをみんなの前でボコボコにして学校中のうわさになった。

本人曰く、絡まれて面倒になったらしい。だからってあそこまでやるか、飯田さん鼻ひん曲がってたぞ。


「うっとおしいなあ、お前もくびり殺したろか」


 きわめつけにこれだ。しかもこの女、本当にやりかねないと思わせる何かがあるから笑えない。


「ごめんごめん悪かったよ、いっしょにごはんを食べよう」


「えっ何いっしょに食べる気でおるん、ありえへんのやけど」


「・・・今日はメロンパンだよ」


「しゃーないなあ、次はカレーパンかな」


 うやうやしく彼女にメロンパンを献上する。そうして食事を共にする権利を得る。

何をやってるんだって?確かにバカみたいなことしているだろう、だがこんな女が相手でも誰かとおしゃべりすることは何にもまして幸福なのだ。

この年でキャバ嬢に貢ぐおっさん達の気持ちがよくわかることになるとかやばくない?









「このメロンパンおいしいね」


「何でお前、私と同じの食べててるん」


「いや君に買うぶん見てたらメロンパンがおいしそうでね。なにか問題でもあったかな」


「別にただ何かなこうな・・・何かあるんよ」


「おそろいだね☆」


「うわっ、きっしょ」


 さすがにその反応は傷つく。だが、まあ・・・うん。

明日のお昼はカレーパンか。


「お前、今ろくでもないこと考えてたやろ顔に出てるんだよ顔に。はあ、もう教室でめし食ってろよ」


「嫌だよ、いっしょにごはん食べる友達は君しかいないんだ。1人でごはんなんてつらすぎる」


「ともだちぃ~?」


おう、辛辣~


「そうだね、友達じゃなくて話し相手だったね、ごめんごめん」


「よくわかっとるやん。それにしてもこのメロンパンなかなかおいしいやん」


 彼女はそう言うとメロンパンをもぐもぐと食べだした。パンをいっしょうけんめい食べている姿はなんだかリスみたいに見えて可愛らしい。

しゃべるとあれだけど。


 彼女が食べ終わるのを待って声をかける。

 

「前から聞きたかったんだけど屋上に入ってきてるの?たしか鍵かかってたよね」


「あんな古いやつ針金で一発や、くだらないこと聞いてないでちゃっちゃと教室に帰り」


「君はどうするの?」


「ねむい」


それだけ言うと彼女は横になる。この春の陽気の中、昼寝するのはさぞ気持ちいいだろう。


「おやすみ、いい夢を」


「うっさいわ、しっしっ、はよ行き」


「了解、また明日ね」


返事はない、もう寝てしまったのかもしれない。

そんなことを考えながら屋上の扉をしめた。



本作品の世界では歴史の一部が現実とは少々異なります。そのため現代社会とは常識やら社会秩序なんかが違ってたりします。

年代は2020年頃だと考えてもらって構いません。疫病なんかは流行ってません。というかこの世界線で飛行機なんて超金持ちか政府高官しか乗れませんよ。時代は船ですよ船。というわけで世界的パンデミックにはなっていないという設定です。

語りだしたらきりがないので、このいう話は次回のあとがきあたりで書いていきたいと思います。


あと彼岸花の咲く季節には完結したいと考えています。

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