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限られた刻の中で  作者: 小鳥
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こんな筈じゃなかった


 いえーい!黒髪入手成功!


 私は危ないところを助けてもらった魔族から黒髪を貰うことに成功した。お礼に余っていたクッキーをあげたけれど、そんなんじゃ足りないほどの恩を感じる。今度また会えたらちゃんとしたお礼を渡そう。


 今は黒髪を入手した後、グラタンの材料を買うのも忘れてダッシュで家に帰ってきたところだ。


 それにしても、この髪の持ち主は思い出すだけで顔がにやけちゃうほどイケメンだった。あんな美形今までに見たことがない。そんなイケメンから髪を頂けるなんてラッキー!


 早速、この美しい髪をお人形に付けなきゃね!


 私は髪を人形サイズに整えようと思い、一度人形の頭に当ててみた。すると、しゅるしゅるしゅるっと髪が勝手に人形の頭に入り込み、人形の腰の辺りまで垂れたロングヘアーが出来上がった。


 それはちょうどこの髪の持ち主の魔族と同じくらいの長さだ。


「へぇー、おもしろーい!勝手に髪の毛になった!」


 こんな風に髪を付けられるとは思っていなかったが、魔法の存在する世界だしこういうものなのかな、と勝手に納得した私。


 この人形は男とか女とかの違いはなく、比較的簡素な作りのものだけど、着せているものがピンクのフリフリドレスなので黒髪のお姫様といった見た目になった。


「うわぁ、可愛くなったねぇ。髪の毛の持ち主がイケメンだったおかげかな?」



 私は人形を持ち上げて目と目を合わせると、早速お願いしておくことにした。


「お人形さん、どうか私の家族を守って下さい。私が居なくなっても悲しまなくて済むように側にいてあげてね」



 すると突然、人形の髪が眩いほどの輝きを放った。


「なっ?!なに?!」


 驚いて人形を落としそうになるのをなんとか持ち直しているうちに、バービー人形くらいの大きさだったものが着ているドレスと共にムクムクと子猫サイズまで大きくなった。

 無機質な人形だった筈の体は生身の人間のように変化し、ビー玉の瞳が潤みを帯びたダークパープルに色付いてパチクリと瞬く。

 

 この瞬間、人形は魂の宿った生き物に変わった。

 


「なんだぁ?おまえ。俺様のご主人はどこだ?」


「うわぁ!」


 その意外な出来事を唖然とした表情で見ていた私だったが、小さな口から発せられた男の声に驚き、遂に手にしていた生き物を床に落としてしまった。


「ぐぉっ!いってぇな!なにしやがる!」


 得体の知れない生き物は床の上に落ちた後、自力で立ち上がりピョンピョン跳ねて怒りをあらわにしている。


「おい女!聞いてんのか?!俺様のご主人はどこなんだよ?」



 えーと、このピンクのフリフリを着たクソ生意気お喋り野郎はなに?なんなの?



「ご主人って……もしかして私かな?」


「はぁ?!何言ってやがる、お前のはずないだろが。俺様の髪とは似ても似つかねえ色してやがるくせに」


 あー、なるほどね。確かに人形には持ち主の髪を付けるって言ってたな。ということはこの人形の言うご主人はあの魔族って事か。でも、髪を貰ったのは私だし……


「その髪はある人から貰ったものよ。私が貰ってあんたを作ったんだからあんたのご主人は私ってことで」


「ざけんな!嫌だね、お前みたいな弱そうなやつ。俺様は認めねぇ!」


 はぁ?!もうっなんなのよ!せっかく綺麗な黒髪ゲット出来たってのに!これじゃツンツルテンのままの方がマシだわ!


「うるさいなぁ!しょうがないでしょ!あんたのご主人はわ・た・し!ただの人形のくせに盾つかないでよね!」


「俺様は人形なんかじゃねえ!俺様は使い魔だ!!」


「使い魔ぁ?なによそれ」


「そんな事も知らねえのかよ?!使い魔ってのは、魂の無い器に強力な魔力の篭った髪を使うことで生み出される魔物の一種だ」


「魔物?!あんた魔物なの?ただの人形だったのに?」


 お守りになってくれると思ってたのに、こんなの聞いてないよ!


「そうだって言ってんだろ?そういえばお前人族だよな?使い魔は魔族の魔力でしか生み出せねぇんだぞ。やっぱ魔族でもねぇお前がご主人なわけねえ!」


 うわー、そう言う事か!魔族の髪を使ったからこんな訳わからない生意気使い魔が生まれちゃったのかー!



 どうしよう……髪の毛むしり取ったら元に戻るかな?



 ……うん。よし、やってみよう。



 私は真剣な表情で両手をワキワキさせながら生意気な使い魔に迫っていった。


「な、なんだよっその手は……お、おいっやめろ!何する気だぁぁぁぁ!」

 


 ドタバタッドタバタッ


「待てぇーい!」


 ガシャンッドンッガタンッパリーン……




「なんじゃぁ?今日はやけにリゼちゃんの家が騒がしいのぅ。ゴキブリでも出たかの?」


 日課の散歩をしていたご近所のお爺さんがリゼの家を見ながら呑気に呟いた。



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