友人の心配
「ねえ、本当にお義父さんと上手くいっているの?」
昼休みに教室で親友の京子にそう尋ねられた。クラスメートのほとんが昼食を終え外に遊びに出ていた時のことであった。
「大丈夫だよ」
二人は肩を並べ窓からグランドを眺めた。
「でも、その傷もお義父さんが…でしょ?」
由美子の右頬にガーゼが貼られている。
「そうだけど。でも腹は立たないから大丈夫」
「どうして?」
「お義父さんも仕事が決まらなくて、大変なの。私を養わなくちゃいけないっていう責任とか考えていると思うし」
「でも、お酒呑んでばっかじゃないの?近所でも噂になってるのよ」
「仕方ないのよ。かわいそうなのはお義父さんの方なんだから…」
「由美ちゃん!先生にもそう云ったでしょ?先生もすごく心配してたもの。でもね、私には本当の事を云って!前に由美ちゃんが一度、学校を休んだでしょ?ほら、一ヶ月くらい前。それ以来ずっと変よ。何があったの?」
『幸福の種』をあの不思議な女性にもらった時からの事を云っているのだろう。すでに一ヶ月もたっていたのだ。
「由美ちゃん、私にだけは本当の事を云って!」
京子の言葉に心を動かされた。『幸福の種』の事を話そうかと思ったが即座に却下した。
(人に話しては絶対にダメってあの女性は云っていた)
秘密。口に出してはいけないと約束をした。もし、約束を破ってその話を京子にしたために種の効力が喪失したりしては大変である。種は由美子にとって必要不可欠な存在になっていた。
(それにしても…――一カ月も経つのか)
あの『種』はまったく芽を出さないが一体いつ芽を出すのだろう。一ヶ月もあれば大抵の種は芽を出すのではないのだろうか。
ふと、気がつくと京子の心配そうな顔が目の前にあった。
「本当に大丈夫だから心配しないで」
「…」
カラーンと午後の授業開始を告げる予鈴が鳴り響いた。
「分かったけど、も何かあったら私にだけは相談してね。絶対だよ!」




