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僕たちは明日に向かう  作者: ともむらゆう
第3章 明日への一歩
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八十七話 四季と偽四季

 四季(しき)になったと思しき人物を待ち構えていれば、姿を見せた。僕の知る人だ。

 偽如月(きさらぎ)。可能性は考えていたけど、本当にこいつだったなんて。


「なぜお前が……動ける傷ではなかったはずだ」


 卯月(うづき)が狼狽している。

 僕は見ていないけど、死ぬ一歩手前まで痛めつけたって言っていた。殺してはいないものの、絶対に動けないほどに痛めつけ、放置していたんだ。

 なのに、なぜか偽如月がこの場にいる。


「復讐するために決まってるだろ。絶対に復讐してやるって誓い、死の淵から生還したんだ。欲望が強ければ強いほど、力が増強されるのが十二月(じゅうにつき)。ゆえに、俺の傷も治った。さらなる力を手に入れた。俺は最強だ」


 復讐者ってわけか。復讐心のおかげで復活できるとか、冗談じゃない。

 こいつは、どこまで如月を侮辱すれば気が済むんだ。

 もう偽如月でもないのかな。四季に覚醒したって話だし、偽四季だ。

 どちらにせよ。如月や四季を侮辱している。その名を名乗るなと言いたい。


 どこをどうすれば、偽如月が偽四季になるのかは知らない。知らないけど、実際になっているんだし目の前の事実を受け入れる。

 その上で、もう一度こいつを倒そう。

 事前の取り決め通り、こちらで戦うのは四人だ。僕、冬将(ふゆまさ)、四季、睦月(むつき)


「ふぅん、知っている顔もあれば、知らない顔もあるな。町の中と外、両方にいた十二月が合流したのか。まあ、誰がいようと、全員殺すだけだ」

「おいおい、俺たちを舐め過ぎじゃねえか?」


 冬将は臆していない。四季や睦月も、言葉にはしないけど堂々とした態度だ。

 頼りになる仲間たちだ。


「俺の邪魔をした奴は殺す。敵は殺す。むごたらしく拷問し、皆殺しにする。俺は最強だ。俺は望むままに生きる」


 偽四季は、僕たちを憎んでいるみたいだ。特に僕だね。

 憎悪は感じるものの、見た目は冷静だ。

 以前のこいつは、ポンと手に入れた十二月の力に陶酔していた。新しいおもちゃを与えられた子供のようだった。

 まあ、こいつと子供を同一視するのは、子供に失礼だけど。


 とにかく、力を手に入れてはしゃいでいたのに、今は妙に落ち着いている。

 激しく燃え盛る憎悪の炎と、凪のように静かな心。相容れないはずの感情が同居している。

 それが不気味だ。おぞましいとすら感じる。


「ごたくを並べるのは勝手だが、できるかな!」


 冬将が仕掛け、僕も続く。

 以前までは、冬将の動きにはついていけなかった。目で追うことすら難しい。

 春に覚醒した今なら、肩を並べて戦える。

 二人で戦うけど、偽四季の動きは僕たちの想像を超える。

 僕と冬将の攻撃をくぐり抜け、後方にいる葉月さんたちの方に向かった。


「やらせない!」


 偽四季を止めたのは、四季だ。


「よう、俺の同類じゃないか。お前には礼を言っておくぜ。お前が仲間を喰らう姿を見たから、俺も真似できたんだ。おかげでこの通り、最強になった」

「私に批判できる権利はないけど……誰を何人殺した?」

「さあ? 覚えてないな。最初は長月(ながつき)って奴だったが、外に出てから適当に食い散らかした。新人類が大勢覚醒していたおかげで、俺の餌には困らなかった」


 四季に覚醒するためには、十二月を殺すのが条件じゃなかったの?

 十二月以外の新人類でもあり? 数で補ったってこと?


 よく分からないけど、新人類を殺せば殺すほど力が増すようだ。おそらく、『喰らって自分の糧にする』と強く思えば力にできる。

 それにしても……長月が……


「お前は殺しておくべきだった。私たちのミス。新しく覚醒する如月が、より危険かもしれないと考えたのが間違い。お前以上の危険人物は滅多にいない」


 四季の言葉には、僕も同意したい。

 敵とはいえ殺したくなかったし、とどめを刺さなかったけど、間違いだった。

 あの時とどめを刺していれば、長月も死ななかったかもしれない。こいつに喰われた人も助かったかもしれない。


 他の如月が覚醒し、そいつが危険人物だったら?

 この考えは間違っていないけど、こいつの危険性を見誤ったのが大きなミスだ。

 責任は取れない。死んだ人は生き返らない。

 なら、命に代えてでもこいつを倒すのが、僕なりの責任の取り方だ。


「冬将、睦月さん!」

「おうよ!」

「やれるだけやるが、期待はするな。俺よりも遥かに強い相手だ」


 少し戦っただけでも、偽四季の実力は理解できた。恐ろしく強い。

 僕一人じゃ勝てないから、みんなで勝とう。

 いくら強くても腕は二本だ。四人がかりで攻撃すれば、防ぎ切れない。


 同時攻撃を仕掛ける。正直、味方同士の連係が優れているとは言えないし、お互いが邪魔になるケースもある。

 それでも、なんとか互角の戦いはできていた。僕たちの拳は、ちゃんと偽四季に届いている。


 偽四季が誰かに攻撃しようとすれば、その隙に他の三人が攻める。

 僕との戦いで使ったナイフも、今は持っていないみたいだし、こちらに有利な点だ。

 有利といっても、偽四季のパンチ一発すら脅威になる。まともに食らえば大惨事間違いなしだ。

 偽四季にはたいしたダメージがなさそうだし、本当に強い。


「ちょこまかとうざい連中だ」


 なかなか勝てなくて、偽四季が苛立っている。

 苛立っているからって雑にならないのは、悔しいけどさすがだ。


「睦月のおっさん! 下がれ!」

「すまん……」


 冬将に言われて、睦月がリタイアする。

 両腕がだらんと下がっていた。骨がイカれたみたいだ。あれじゃあ戦えない。

 睦月を気にする余裕は、僕にはない。こっちも必死なんだ。


「ぐ……俺もまずい……」

「冬将も下がって!」

「しゃあねえ……」


 二番目にリタイアしたのは冬将だ。春の僕と冬の冬将は同格なのに、僕が耐えられているのは、こいつが相手だからかな。

 偽如月だろうと偽四季だろうと、こいつは許せない。

 ここで全力を振り絞る。あとのことは考えない。どうなっても構わない。


 改めて、誓おう。

 命に代えてでも、こいつを倒してみせる!

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