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僕たちは明日に向かう  作者: ともむらゆう
第3章 明日への一歩
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七十八話 合流

 四季(しき)と姉は、収穫なしで戻ってきた。すぐに呼び戻されたし、食べ物を探す暇もなかったんだ。

 住人から少しだけ食糧をわけてもらい、食べておく。何も口にしないよりは、少しでも食べておく方がいい。

 眠っていた冬将(ふゆまさ)を起こして、三人の意見も仰ぐ。


「外にいる十二月(じゅうにつき)が動いたとは考えにくいよ。混乱に乗じて動くことはあっても、自分たちから積極的に動くとは思えない」


 姉が意見を述べた。僕よりも睦月(むつき)たちを知っているし、参考になる。

 外で何が起きているか、考えても答えが出ない。僕たちがどう動くか話し合い、結果的に外に交渉を求めに行くってことになった。

 問題があるとすれば、生き残りの住人たちだ。


「仕方ないわね。長月(ながつき)が残って。あなたが一番信頼されてるわ」

「了解だ」


 怪我の治療をしていた長月は、住人の信頼を得ていた。戦闘向きではない事実も合わせて、彼が町に残る方がいいとなった。

 外に行くのは七人だ。


 リーダーの葉月(はづき)さんを筆頭に、十二月の卯月(うづき)神無月(かんなづき)。春の僕と夏の姉、冬の冬将。最後に四季。

 七人で外に向かい、交渉を求める。


 戦力的には充実している。僕が春に覚醒したことで、春夏秋冬の三人がそろっているんだ。

 使者として外に出た時とは雲泥の差で、七人もいれば攻撃されても全滅はない。

 外と町の境界線まで移動し、結界を抜けようとした時だ。


「誰かくるわ。十二月の気配よ」


 葉月さんが警戒を促した。

 十二月の誰かって誰? 睦月たちは外にいるし、新しく覚醒した人かな。

 如月(きさらぎ)……は偽物が生きているはずだ。弥生(やよい)水無月(みなづき)霜月(しもつき)の誰かになる。

 味方なのか敵なのかは不明だ。偽如月のように、敵対するつもりかもしれない。


「一人ではないな。三……四人か?」

「わたしも四人分の気配を感じるね」


 卯月と神無月は、人数を把握していた。四人いるらしい。

 四人ってことは、まさか睦月たち?

 そうと決まったわけじゃないし、警戒は緩めずに待つ。敵対行動を取るようなら反撃する。


 そして、姿を見せたのは、本当に睦月たちだった。

 十二月四人に加え、秋陽刀(あきひと)もいる。ついでに、一人場違いな人も。

 見た感じ、怪我人はいない。外の警備を無傷で突破するのは困難だし、警備の兵すら碌にいないほど混乱中なのかな。


夏帆(かほ)、生きていたか」

「私はなんとかね。でも、霜月が……」


 姉が霜月の死を伝えた。

 睦月と皐月(さつき)は悲しみの表情を浮かべたけど、他の人は平然としている。意外とドライな反応だった。


「おっさん、案内サンキューな。嘘ついてたらぶっ殺してたぜ」

「案内したんだし、手を放してもらいたいが」


 秋陽刀は、兵士の一人を捕まえていた。会話からして、案内させるために捕まえたんだろう。

 町に攻めてきて、捕虜になっていた隊長さんだ。せっかく外に戻ったのに、秋陽刀に捕まったのは不運だね。

 秋陽刀が隊長さんを解放する横で、睦月が挨拶をする。


「俺は睦月だ。このチャラいのが師走(しわす)。眼鏡をかけているのが文月(ふみつき)。少女が皐月で少年が秋陽刀」

「あなたが睦月? それに……皐月?」


 葉月さんは、皐月の顔を凝視している。穴が開きそうなほどじっと。


「皐月に手ぇ出すなら、俺が相手になるぜ。覚醒済みの秋の力を舐めんなよ」

「秋陽刀は落ち着いてください。私が何か?」

「いえ、前任の皐月に似ているなって。皐月の若い頃の写真を見せてもらったことがあるのよ。あなたによく似ているわ」

「私の実の祖母ですし、血のつながりがあれば容姿も似るでしょう」

「お孫さん? そうなのね。文月や師走が生きていれば喜んだでしょうに」

「葉月さん、雑談は」


 のんびりしている場合じゃないし、僕が突っ込んでおいた。

 葉月さんもすぐに気を取り直してくれる。


「ごめんなさい。私は葉月よ。一応、町にいる十二月をまとめてるわ。それで、どうしてここに?」

「外が大パニックになっているからだ」


 睦月が外の様子を説明してくれる。

 なんでも、新人類が何万人も覚醒していて、混乱しているって話だ。鎮圧もできていないし酷い状態だって。

 今なら警備が手薄になっていて、町にも入れそうだと考えた。町にいる十二月と合流するためにやってきた。

 おおよそこんなところだ。


 次は、葉月さんがこちらの様子を伝える。

 何日も戦いが続いていて、住人はほぼ全滅した。十二月にも被害が出ている。

 昨晩、いきなり部隊が撤退したので不思議に思い、外に出ようとしていた。


「外に出て何をする? 戦争か?」

「不毛な戦いは、早くやめたいと考えてるわ。交渉したいわね。新人類が大勢覚醒しているなら、交渉もしやすいわ」


 僕たちは、十二月の覚醒ペースが早まっていると考えている。数日か、早ければ一日未満で覚醒しているし、これは永遠に終わらない。

 十二月だけじゃなく、新人類まで覚醒するなら、推測に信憑性が出る。


 何万人、何十万人と覚醒している新人類を全滅させたって、すぐに覚醒するだけだ。これまた永遠に終わらない。

 旧人類は、新人類を受け入れざるを得なくなる。滅ぼす選択肢はない。

 だったら戦争も終わる。


「そちらが隊長さんを捕まえてくれたのは助かるわ。仲介役になって」

「おいおい、無茶言うな。俺にそんな権限はない」

「なくてもなんとかして。外の平和を守りたいんでしょ? 大パニックになっている現状を許容するの?」

「許容するとは言わんが……」

「外では、どれだけの新人類が覚醒しているのか知らないわ。仮に皆殺しにしたって、新しく覚醒するわよ。戦争はするだけ無駄なの。新人類の殲滅は絶対に不可能なんだから」


 隊長さんの協力を得ようと説得している。

 旧人類の方針は、新人類の殲滅だった。怪物を皆殺しにしたがっていた。

 皆殺しにすれば戦争も終わる。恐ろしい怪物はいなくなり、人間だけが残って平和に暮らす。ハッピーエンド。


 旧人類の望むハッピーエンドは、絶対に訪れない。推測じゃなく確信している。

 怪物が怖かろうと憎かろうと、どこかで手打ちにするしかないんだ。

 理解してくれる人がいれば争いも終わる。


「政治家もバカの集団じゃないでしょ。合理的な判断ができるはずよ」

「合理的とかじゃなく、俺は仲介役になれないって言ってんだ。俺が『新人類が交渉したがっています。どうか交渉してください』とか言っても、聞き入れちゃもらえない」

「私たちよりはマシでしょ。なんとかしなさい。ここで揉めていれば、犠牲者が増えるだけよ」


 隊長さんは拒否して、葉月さんが食い下がる展開が続く。

 早く外に行きたいのに、揉めているせいで足止めを食らっている状態だ。


「……この際、本音を言うぞ。権限がないのも嘘じゃないが、どっちかっつうと建前だ。新人類に肩入れして、裏切り者扱いされるのが嫌なんだ」

「あなたねえ!」


 温厚な葉月さんにしては珍しく、声を荒らげていた。

 隊長さんは、この期に及んで保身を優先しているし、葉月さんも怒っている。


「使えない奴を使おうとしても、労力の無駄遣いにしかならない。放っておけ」

「睦月の口から『使えない奴』って出るとか笑うぜ」


 秋陽刀が小馬鹿にした発言をしたけど、睦月は相手にしない。

 こういうやり取りに慣れているのかな。

 睦月の言い分にも一理あると思ったのか、葉月さんは諦める。


「仕方ないわ。私たちで行きましょう。睦月たちもついてきてくれる?」

「問題ない。十二月の序列は関係なく、葉月の指揮下に入る。ずっと戦ってきたそちらの方が、俺よりもリーダーとして適任だ」

「私もリーダーって柄じゃないけどね。じゃあ行きましょうか。あなたは好きにしていいわよ」


 隊長さんは、睦月たちの案内役としてここまでついてきた。

 仲介役をしないなら用済みってわけだ。悪いけど構っていられない。

 睦月たちが加わり十二人になった。このメンバーで外に向かう。

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