6オブザデッド
一方その頃、周回軌道上でエネルギーを使わずに待機している宇宙船なろう号の中である。
パリン、と突如として提督の飲んでいたコーヒーカップが割れた。それを見て、提督は眉を寄せる。
「これ、ひょっとして……。星を探査しにいった人たちに、なにかあったのかな……?」
ふわん、とF.E.H.Uのホログラム映像が出現する。
『心配かい?』
「ん……まあ、ね……」
『大丈夫だよ、人は強い生き物だからね。きっと、進むべきを自分たちで見つけられるさ』
慈愛の笑みを浮かべるF.E.H.Uに、提督もまた微笑んだ。
「そう、なのかもしれないね……。ふふ、ありがとう、フェフさん。みんなを信じて、今は待つよ」
『んっ』
一方その頃、第一の星である。
宇宙船の前ではぐれた人たちと、本体は合流した。そうして、先ほど真実を見抜いたナルホド君の推理を共有する。
「なるほど、そういうことだったのか!」
探査団のリーダーである艦長のアロムは手を打つ。
「どうりで、ツタに襲われ、大地に飲み込まれ、吹き出た水に貫かれたわけだ」
「それでよくそっちひとりも死ななかったな!?」
ツッコミを叫ぶコンビニバイトの箱野ねこ。ちなみにこれもネコ(アメショー)(二足歩行)(身長184cm) だ。
「では、宇宙船を動かすとしよう」
「だが、相手が逃してくれるかな…………」
気がつけば、周囲に生えていた植物は皆、遠巻きにこちらの様子をうかがっている。さすがに宇宙船に今すぐ襲いかかってくるというわけではないようだ。
そもそも、自分たちから撤退しようとしている相手を追いかけて、しかも叩きのめすような理由が……?
ある。
「……植木屋の俺にはわかる」
丈夫なエプロンを着用した塩がうめく。
「やつらは、俺たちを生かしちゃおかねェさ……。この宇宙から消し去ってやる。そんな殺意を感じるぜ……。なぜそこまでするかって……? そうさな、生かして帰したら、いつか復讐するために戻ってくるかもしれねェだろ?」
その言葉とともに、再び植物がじりじりとにじり寄ってくる。ツタに巻き込まれたら、宇宙船も飛び立つことは難しいだろう。
すなわち──。
「……ここで、あいつらをなんとかする役目が必要、ってわけだな」
グリーン・カイザが前に歩み出た。職業は実験体だ。"メカティック・ゴリラ
宇宙に適応するために体の至る所を機械化した、サイボーグゴリラ。かつては、動物園で人気の存在だったグリーン・カイザー三世(以下カイザー三世)だったが、地球環境の悪化により、動物園が潰れてしまう。路頭に迷っていたカイザー三世を世界非政府宇宙真理究明組織、通称宇宙組織が保護して、宇宙実験のために開発されて、カイザー三世はサイボーグ化したのだ!名前新たに参上!グリーン・カイザー三世・ユニヴァース!!さぁ、行けグリーン・カイザー三世・ユニヴァース!宇宙心理究明のための礎になるのだ!!"(原文ママ) である。
しかし彼の持ち物は一欠片の良心。ここでその良心を発揮した彼は、拳を握り固めた。
「さあ、やろうぜ、大自然よ。──機械のちからを、見せてやるぜ」
その言葉とともに、宇宙船を無事、脱出させるための戦いが始まった。
ここでは魅力か幸運の、どちらか優れている方で判定を行ない、これが五人以下になるまで、繰り返される。
果たして、生き残るのは、誰なのか──。
塩やグリーン・カイザの死体が転がっている。時間を稼ぐために戦った彼らは、まさしく英傑であった。
さらに柔道家のあーくらいともまた、力尽きて、前のめりに倒れている。その身一つあればよいと言い切り、持ち物をなにも持ってこなかった彼女は最期、この手に仲間を逃すために戦ったという栄光を握りしめたのだ。
扇動家のベルツ・リーは白手袋を装着し直し、ふむ、とうなる。こんなときはいつだって真っ先に自分が逃げるつもりの男が、立ち止まって拡声器に声を張る。
「諸君らはただ死ぬわけではない。未来のために礎となるのだ。ここで息絶えたところで、人類さえ生き延びることができれば、その名は未来永劫語られ続ける。戦えよ、国民!」
その言葉によって、戦うものの覇気がみなぎった。怯えたものはすでになく、人類の未来のためにこの命を燃やし尽くそうという戦士の眼になったのだ。
もちろん、敵の目を引きつけた代償として、ベルツ・リーは真っ先に狙われ、その胸を貫かれた。だが、死に様は満足げな顔であった。
「それじゃあ、人類の未来のために、がんばっちゃいますか……な? ばあちゃん」
宇宙の果てにまで持ってきたお婆ちゃんの遺骨を掲げ、和裁やる人のトモは、その手刀で襲いかかる手刀を斬り裂いた。これが和裁の力なのだ。力尽きるまで仲間を守った彼は、胸を張って、婆ちゃんのところに行けるだろう。
ケフィア=ヨーグルッチは、乳製品関連会社専属モデルだ。ゴルゴンゾーラチーズを片手に髪をかき上げる。主婦層に大人気のモデル。赤ん坊から老人まで彼の顔を見るだけで乳製品が摂りたくなる、彼のおかげで日本人の栄養摂取バランスが改善され平均余命が延びたなど、逸話が絶えないほどの乳製品顔。ヨーグルト?いいえ、ヨーグルッチです。(原文ママ)だ。
「うちの製品を食べれば、きっとわかり合えると思ったんですけどねえ」
ゴルゴンゾーラチーズを食らう彼は大地の腕を華麗に避ける。何度も何度も避け続ける。これが健康にいいヨーグルトを食べ続けた結果の身のこなしだ。その姿を見れば誰もがヨーグルトを食べたくなるだろう。わたしは別にならなかった。
クリストファー・ネイビスはヒステリックBBA。服装はサンタとサンバを足して3で割ったようなセーラー服(体型はグラマラス)だ。グラマラスとか一番いらない情報だった。愛犬コギー(トナカイ)
を連れて、この星にやってきた。サンタ/サンバ(ルーラー)なので、ツタからの物理攻撃は半減することができる。だが、炎に焼かれたツタの仲間である、アヴェンジャーのツタが混ざっていたので二倍撃で殺された。
「愛犬の、コギーちゃんを、守り、たかった……」
トナカイも丁寧に引き裂かれて肉片と化した。メリークリスマス!!
漁師の秀三郎は、漁師だ。投網を持っている。胸付きパンツ(漁師カッパ)にねじりハチマキ、サングラスの細身のおっさんである。まさか自分が人類を救う英雄になるなんて、思ってもいなかった。けれど、悪い気は起きない。結局、ゾンビどもで溢れた地球では、思う存分船を出すこともできなかったのだ。
「は、だったら、ここで船を守るために戦うってのも、オツなもんじゃねえの?」
投網を張って宇宙船を守るために立ち回るその姿は、まるで隆起する大地を荒波のように従えている。
「うーん、ここの土を使えば、もっといいゴーレムが作れそうだったんですけどねえ」
ゴーレムマイスターのわさおがゴーレムを操りながら、残念そうにつぶやく。
「ま、そろそろ時間ってやつだな」
ホッキョクグマとヒグマの雑種、ナヌラークが手にしていたアザラシを放り投げる。彼の回りには、ズタズタに引き裂かれたツタが散乱していた。だが結局、相手は自然。最初から勝てるはずのない戦いなのだ。
「しかし、これが無駄だとは思いませぬ。誰かが本船に帰り、伝えなければならないこと候」
僧侶(似非)のなる。ふっかつのじゅもんをつぶやきながら船を守るために大地を殴りつけたその姿は、どう見ても武道家だ。だが、この世の無常を悟ったその姿は、確かに僧侶であった。
赤いリボンを付けたペンギンであるベンギンレイムは、煙幕を吹き出す首輪を起動させたまま、辺りを走り回っていた。相手を撹乱する作戦だ。それがどううまくいったのかはわからなかったが、ベンギンレイムは満足げであった。地球の未来に貢献しているという自負があったのだろう。
こけしのマネキン(????)である周雨も、猫じゃらしを持ったまま満足そうに揺れていた。これを持ってきたの誰だ。
筋トレが趣味の作業着マスクの長身男性、尿酸値ヤバイマンはやれやれと首を振る。
「まったく、別にお前ら、死ぬ必要はないじゃねえか。この星だって、どっかで生き残れるかもしれねえ。俺はここでも自分を鍛え続けるよ」
「なるほど、それも面白いな」
結局残っていたアロムは、ぶたれたことが無さそうな顔で顎をさすりながら、うなずいた。あるいは星の支配が届かない場所があるのかもしれない。
その全員の見上げた先には、宇宙船が今、飛び立ってゆくところだった。
***生存者***
ニ〇テンドース〇ッチ
絶影
爆死王
サジタリウス
ぶりなっく
***死亡者***
塩
グリーン・カイザ
あーくらいと
ベルツ・リー
和裁やる人のトモ
クリストファー・ネイビス
***惑星移住者***
羅芋 酔錬
ケフィア=ヨーグルッチ
秀三郎
わさお
ナヌラーク
なる
ベンギンレイム
周雨
尿酸値ヤバイマン
アロム