4オブザデッド
「なぜゾンビがいたのか……。食料貨物庫にまぎれていたようですね……」
カチガラスハンターは顎に手を当てる。彼は科学者だ。ゾンビの足取りからルートを割り出し、どこからダクトに潜入をしたのか。それを探り出していた。
提督はふむふむとうなずく。
「なるほど……では、誰が裏切った、というわけでもないんですね」
「そのようですね。今や、地球はゾンビまみれの星ですから」
「ま、わたしは信じてましたけどね」
内部に裏切り者がいないのは当然だ。地球という星に住んでいた以上、人類はみな、家族のようなものだ。ゾンビを手引きする理由などない。なぜなら、新たに住む星が見つからなければ、人はみんな死んでしまうのだから。
「では、そろそろ星への調査団を派遣しましょうか」
「そうですね……。惑星探査船ゴニンダケイキノコールへの乗員を募集しましょう」
というわけで、40人の乗員を募集することになった。
*第一の星へ向かうメンバー*
リア充
羅芋 酔錬
ニ〇テンドース〇ッチ
ベルツ・リー
クリストファー・ネイビス
アロム
尿酸値ヤバイマン
りめ
水野力
あーくらいと
なる
ケフィア=ヨーグルッチ
秀三郎
ゾんビ
東北ずん子
サジタリウス
ぶりなっく
絶影
ナルホド君
猫好きのタケル
かざにゃ
箱野ねこ
イロハモミジ
塩
もふ公
わさお
平成 斎悟 (ひらなり さいご)
グリーン・カイザー三世・ユニヴァース
周雨
左慈
爆死王
ナヌラーク
トモ
慧架
東中さん
自称グルメモブおじさん
ペンギンレイム
シャーリー
コンティウス・サイゴン
壺
募集に応じた40人は、宇宙船の甲板に集まっていた。
窓から覗くその星は、どうやら緑に覆われた植物の惑星らしい。酸素があることはすでに確認されており、ハビタブルゾーンにあるため温度や重力も安定している。
という説明を受けて、全員がホッとした顔をする。これなら死ぬ心配もないだろう。だが、危険な原生生物が住んでいるかもしれない、という話はあった。
「どんなに危険だって、70億人以上のゾンビよりはマシだろ?」
格闘家の羅芋 酔錬が、肩をすくめる。
「そうよ。あたしたちに任せといて。代わりに、地球を救った英雄はあたしたち40人ってことになっちゃうけどね?」
金髪の美少女、柔道家のあーくらいともその髪をふぁさぁとやりながら、口元を緩めた。
かくして、40人乗りの宇宙船、ゴニンダケイキノコールが第一の星へと降りていった。
果たして、この40人のうち、何人か生き残るのか……。あるいは、この星で目的を達成し、一同は地球に帰ることになるのか。
提督は祈りとともに、宇宙船ゴニンダケイキノコールを見送った。願わくば、全員が生きて帰ってこれますように!
すべては、間もなく明らかになる!
さて、宇宙船は無事、第一の星に着陸をした。
最初に降り立った扇動家のベルツ・リーが「ここはベルツ星と名付けよう!」と拡声器で言い放つ。他の40人も、思い思いの、星の名前をつけてゆく。
少しだけ星の描写をしよう。見たことのない植物が大量に生えた、ジャングルのような惑星だ。動物はおろか、昆虫の姿もなく、濃い酸素がまるで絡みつくように
むせ返っている。
当然、歩く道のりも植物をかき分けながらになるので、遅々として進まない。探索には時間がかかりそうだ。
ゴーレムマイスターのわさおが、ゴーレムに植物を切り倒させながら、二本指を立てる。
「目的はふたつだ。食料と水。さらに危険な生物がいるのかどうか。危険な生物に関しても、排除できるかどうか」
「しかし、これだけ植物が生えているんだ。食料と水はありそうだな」
もふもふのコリラックマ、もふ公が重くうなずく。
「あれ、なんか」
振り返った水野力は、ぼそりとつぶやいた。
「腕力、あるいは知力のどちらかで判定を失敗した人たちが、はぐれていない……?」
はぐれたものは、合計で28人だった。尿酸値ヤバイマンが眉根を寄せて、つぶやく。
「…………あいつら28人、どこにいったんだ?」
先頭を歩いていた平成 斎悟 (ひらなり さいご)は平成の終わりを告げる妖精
だ。ぼんやりと空を見上げる。太陽に似た星が輝いている。まるでここは古代の地球のようだ。どこからかひょっこりと恐竜が顔を出しそうな雰囲気もある。
「まるで、あの頃だな……」
意味深なことを言うが、特に意味はない。ただ、そういう妖精だから、そういうことを言っているだけだ。
「ここが地球じゃないなんて、不思議な気持ちだよなー」
満面に笑みを湛えたロシアンブルーの着ぐるみ、左慈がうなる。銀の匙を手にした、中の人だ。
ここは地球とは一兆光年くらい離れた星なので、どんなに遠くを眺めても地球が見えたりはしない。
そんなとき、ヒュンッという音がした。
『え?』
平成 斎悟 (ひらなり さいご)と左慈は振り返る。その次の瞬間、凄まじい勢いでふたりの体は引っ張られていった。
「え!?」
と振り返ったのは、小学生のコンティウス・サイゴンだ。彼は元気に走り回る大根らしい。大根て。
ともあれ、大根が見たものは、ツタに絡め取られてその全身にズブズブとツタを注入され、体液を吸い取られてカラカラに乾いたふたりの姿だった。
「ちょっ、えっ!?」
ここで思うことがある。ここは植物が襲ってくる惑星という設定だったのが、40人の探索者の中に、けっこう植物が混ざってるんだよね……。もうだめだ、今から設定をこじつけるのは無理だ。よし、彼らは外からやってきたものに容赦しないということにしよう。そうします。
大根も同じように、ツタに絡め取られて吸収された。
残る25人は悲鳴をあげる。危険な原生生物がいないなんて、とんでもない。ここに生えているありとあらゆる植物が、この星では人を襲う敵なのだ!
四方八方からヒュンヒュンとツタが襲いかかってくる。
いちぶじょうじょうきぎょうに勤めているリア充はツタに襲われる。そもそもアバターは地球からここまで電波とか届かないので、地球を離れた時点でかき消えていました。じゃあここにいたのはいったい……? 幻……?
イロハモミジは庭木だ。真っ赤な紅葉に色づいた、木だ。同じ木である以上、植物同士の対話ができるはずだ。そう思ったイロハモミジは襲い来る植物に説得を試みた。
『待って! 私達は地球からやってきたんだ! 私たちの星は滅んでしまって、だからここで一緒に暮らさせてもらわないか──!』
『殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す………………』
あっ、これ絶対無理なやつだ。
イロハモミジは全身を引き裂かれた。加速のついたツタの一撃は、厚さ20センチの鉄板をもたやすく斬り裂く威力があったのだ……。
なぜかスタジアムで戦う系の料理対決漫画で、観客席から「バカヤローッ そんなもんがうまいわけないだろーッ」などの浅はかなヤジを張り上げる係のモブである、自称グルメモブは拳を握りながら叫ぶ。
「バカヤローッ! 人を人とも思わないやつなんて、この俺が全員燃やし尽くしてやるぜーッ!」
ハズレ馬券の束(競馬漫画のモブを演った時に空高くまき散らしたものの余り)を投げつける自称グルメモブ。だが、その頭部と顎がすっぱりと裂かれた。メインキャラと画風が違う(明らかにアシスタントが描いている)ので、殺され方も雑なのだ。これが主人公ならば、まだ……。
だが、ピンと来た。枝豆農家の女子高生、東北ずん子は顔をあげる。
「そうです……。相手が植物なら、燃やしてしまえば……! そうすればこの星は、私達のものです!!」
そのとき──ズドン、と地面がなにやら不気味に震動をした。そんな気がした。
星に降り立った34人の運命はいかに……!
**死亡者**
平成 斎悟 (ひらなり さいご)
左慈
コンティウス・サイゴン
いちぶじょうじょうきぎょうに勤めているリア充
イロハモミジ
自称グルメモブ