エピローグオブザデッド
宇宙船なろう号は、第一宇宙速度でしばらく地球の回りを周回することにした。
しばらくってどのくらいか? 陸地が冷えて固まるまでだから、そうだね……。ざっと、6億年ぐらいかな……。仕方ないので、マルバツゲームとかをして過ごした。スマブラはまだできない。
毎日毎日ただひたすらにマルバツゲームだけを繰り返すことを見かねたメンバーのひとりがその頃『小説家になろう』というサイトを作った。これは宇宙船なろう号から名前をもじった、小説投稿サイトだ。まだ原始的なサイトだったが、それぞれが自由に楽しい小説を投稿していったため、そのシステムは徐々に洗練されてゆくこととなる。
その後は、原始海洋をぷかぷかと浮かんでいた。だいたい今でいうアフリカの辺りだ。ちなみにこの際、宇宙船なろう号の船体から剥がれた微生物が地球の海に溶け出て、これが原始生命の誕生した生命の起源と言われている。
小説家になろうにも、誰かが投稿したテンプレがまるで原始生命のように拡散し、一躍ファンタジーブームが巻き起こることになった。
また それからさらに19億年が経過すると、地球はヒューロニアン氷期と呼ばれる氷河期に入った。いわゆるスノーボールアース化だ。この頃、お外で遊ぶのが難しくなってきたので、メンバーはさらに小説家になろうに没頭することになった。
ヌーナと呼ばれる超大陸が出現すると、メンバーは思い思いの土地に住み始めた。北が好きなもの、南が好きなもの、様々だ。
別れは寂しくはなかった。どうせ不老不死だし、地球は宇宙に比べれば圧倒的に狭い。どうせいつしかまた巡り会えるだろう。
なぜなら、スマブラが発明されるまで、時間はまだまだあるのだから。
大陸が地殻変動を繰り返し、大小様々な大陸に分化されてゆくように、小説家になろうもファンタジーや恋愛、ミステリーや戦記、SFなど、様々なジャンルに分化されていった。
それからまた再び、長い時間が流れた──。
***
エピローグ:神代
ライターであった羽海野渉のポメラはすでに使えなくなっていた。当然だ、ポメラは小さな電池で何時間ももつパワフルで素晴らしい執筆道具だが、それでも電池がないと使えない。何十億年も使い続けられるようには設計されていないのだ。
「手書きかぁ……ま、仕方ないかな……」
仕方なく彼は手書きでライティング仕事をすることにした。仕事を依頼してくる人はいないけれど、仕事とは自らの手で作り出すものなのだから。その後彼は現地人に教えを壊れ、この世界に文字の文化を生み出し、記録という概念を生み出すことになった。
栗は栗だ。栗スマスの精であり、平成最期の奇跡を持っている。栗は、誰にも食べられないまま賞味期限が切れた栗が平成最期の奇跡で、擬人化しました。とある。なるほど……。ではその栗は誰か自分を食べてくれる人を探して、世界中をさまよっていたことにします。
旧約聖書の禁断の果実、ギリシャ神話のアンブロジア、インド神話のソーマ、それらはすべて実は栗を示していたのでした。そう、奇跡とは、彼のもたらした平成最期の奇跡のことを指し示しているのだ。
シグルドは大英雄で、CVツダケンの眼鏡をかけたイケメンだ、彼はその後、魔剣グラムを手に数々の英雄譚を成し遂げ、そしてファーヴニルを退治した。彼の伝説から、ニーベルンゲンの歌が作られ、数々の土地で長く愛されることになる。
ジイ・ファンタジーは筋肉質のハゲヒゲであり、土佐剣鉈 櫻吹雪を所持している。狩人だ。新たな新天地に達しても、彼は獲物を狩りながら生き続けていた。
同じく、みさとは漁師だ。頭に赤いタオルを巻いた女性であり、銛を手にしている。ジイ・ファンタジーとみさとはさらなる獲物を求めて、北へ南へと旅を続けた。古代から生きている巨大な生物は狩りがいがあった。しかし、長い時を生きる彼らにとっては物足りなかった。そしてついに、ふたりはこれ以上ない強敵へとめぐりあう。
「これを狩るためにワシは生まれてきたのかもしれんな」
「腕が、なりますね!」
ジイ・ファンタジーはベヒーモスを狩った。みさとはリヴァイアサンを狩った。ふたりの死闘により、神話の時代は終焉へと至った──。
***
エピローグ:古代
オレンジ・キッシュは作業着姿、20代前半の男だ。手持ちタイプのコンクリート破砕機を持っており、土木系の学生である。彼は流れ流れ、ついに才能を見出されることになる。そう、建築王ラムセス2世だ。
オレンジ・キッシュは彼に仕え、多くの建築を担当した。その後もエジプトに長くとどまり、不老不死の彼は当然ながら多くの王に仕え続けた。そうして、昔から一度だけ挑戦してみたかった、あの高次元生命体フェフのピラミッドを思い出し、チャレンジをした。
「よし、やってみっか」
結果、ギザのピラミッドは彼ひとりの手で作られた。
かどくらはジャケット着た普通の人?だ。ギガマイン(戯画マイン)を持っている、運送屋である。運送屋の仕事に誇りをもっているほどではない。彼は普通の人なのだ。だが、昔取った杵柄というものがある。その当時、彼はマケドニアにいた。もうおわかりだろう。
「働くの、面倒なんだけどなあ」
アレキサンダー大王の大遠征において、物資の枯渇が起こらなかったのは、彼が兵站の運送を担っていたからとされる。
箱野ねこは、コンビニバイトだ。チョコレートをずっとずっと持っていて、ネコ(アメショー)(二足歩行)(身長184cm) だ。ひょこひょこといつもの通り、毎日をただ過ごしていただけだが、現代日本人の知識をもっているので現地人からいろいろとアドバイスを求められることもあった。
「えー……? じゃあ、雑草とか抜いてみたらー……?」
そんなことを続けているうちに、いつしか箱野ねこは『バステト』と呼ばれるようになっていた。バステトが豊穣を司る女神と呼ばれているのは、箱野ねこのアドバイスが常に適切だったからなのだ。
永瀬Ⅲは女中見習いだ。黒髪のポニテで、紺のワンピースに黒のエプロンをしている。あと、シェラカップを持っている。当時は女中見習いだった彼女だが、改めて女中の道を極めようと思いたち、彼女は仕事をすることにした。ようやく現地人も育ってきたことだし。
「はい、ご主人様、ただいま永瀬Ⅲが参ります──」
いつしか彼女は立派な女中に成長し、世界各地を転々としながら時の権力者のもとで支えた。秦の始皇帝、アレキサンダー大王、ナポレオンなどがその代表であり、彼らの栄華の影には永瀬Ⅲの支えがあったと言われる。
リョクアは銀髪黒目。メス。服装マントのみ(下着なし)。カエル風の被り物をしている。魅力が高い千年ニートだ。果汁グミ(ぶどう)を持っている。不老不死の彼女は、毎日をだらだらゴロゴロして過ごしていた。最高の日々だ。
「あー…………もう一生、働かないー……」
中国の山中に引きこもっていた彼女は、銀髪やカエルのキグルミといったこの世あらざる風体と、その不老不死の逸話から、やがて伝説の女仙として語られることになった。周知の事実だが、「仙人」はリョクアが名乗った「千年ニート」という言葉がなまったものである。
足の生えたじゃがたらいもは生足魅惑のじゃがたらいもだ。あつあつのとろけたバターを常に頭からかぶっている。銀河連邦星間巡視隊事務係だった。しかしもう、銀河連邦はない。
「えっ……ただの、じゃがらたらいもですけど?」
しかし足の生えたじゃがたらいもは、アンデス地方において神の恵みとも称され、現地人の食糧事情を救った。彼はのちに、スペイン人たちと共にヨーロッパへ渡っている。世界中の多くの餓死者を救ったのは、間違いなく彼の功績だった。
黒無は全身真っ黒なローブを常に着込んでる。顔は髪に覆われていて全く見えない。ローブで殆ど分からないが後ろも首が全部隠れる位長い髪をしている。黒髪黒目の日本人。一応カラコンを入れたり、髪を染めたりはしていない。中の上位にはいい顔してるんだから勿体ない子。俗に言う残念イケメン。服のセンスはないのでローブの中の服は真っ黒なだけの長袖長ズボン。 99%の努力と1%の幸運により、実は魔法が1つだけ本当に使える。その魔法とは爆裂魔法。勿論憧れの人はめ○みん。おまわりさん、山を消し飛ばしたのはこの人です。 (原文ママ)だ。杖(そこら辺に落ちている木の棒を削った為めっちゃ細い)をもち、魔法使い(自称。30歳童貞では無い)、高校生だった。
彼はその後、長い時を経て真の魔法使いとして覚醒した。ブリテンの王アーサー・ペンドラゴンに「ああ、その剣? エクスカリバーっていうの? かっけえな。抜いちゃえば?」などなど、多くの助言を行ったのは、彼である。その後シャルルマーニュ英雄譚にも彼の存在を確認することができる。
ニコラウスはショーン・コネリー+もっさり白髭だ。何か入ってる大きな袋(中身は不明)を常に担いでいる。そんな彼は現在のトルコである小アジアのリキュア地方において、さまざまな奇跡を起こし聖人と呼ばれた。サンタクロースの起源になったと言われている。
「恵まれない子どもたちに……メリー・クリスマース!」
***
エピローグ:中世~ルネサンス期
さけさかなは受験生だった。制服を着て、赤本を手にしている。だが、学校そのものがなくなってしまったこの世界で、受験生をいつまで名乗ってもいいものか。さけさかなのアイデンティティは崩壊寸前だった。
「受験、受験……あっ、そうだ! 科挙!」
その後、隋で行われた科挙を一発かつ、トップの成績で突破した。だが、それだけではさけさかなは飽きたらなかった。その後、598年から1905年まで、約1300年に渡って、さけさかなは科挙でトップの成績を取り続けた。(しかし登用は断っていた) 科挙が廃止されたのは、科挙荒らしさけさかなの要因が大きかっただろう。
ウニみちながサガは宮野ボイスのグラサンマントだ。ゾンビィ製作Pを名乗っており、イカゲソを持っている。彼は文明が発達してくると、懐かしさを求めて日本へと渡った。
「ああ……やっぱ、これこれ(宮野ボイス)」
その後彼は、平安貴族と親交を深めた。藤原道長の名前は彼の名を取って付けられたと言われる。有名な句「我が世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」の望月とは、満月のように美しいウニの身を表している。
エマ・ウッズは庭師だ。工具箱を持っており、"髪型はナチュラルボブ。白シャツにデニムで、園芸用のエプロンと麦わら帽子を身に付けている。めっちゃ可愛い。
エマは孤児(詐欺被害に遭い、母は詐欺師にNTR、父は自殺)。天真爛漫。純真無垢。天使のような心優しい娘。幻覚幻聴の症状がある(庭のカカシさんとよくお喋りをする)。女医によくなついている(百合)。
椅子を破壊するのが得意。"(原文ママ)だ。申し訳程度の百合要素、ありがとうございます。
「お庭、お庭、うつくしく~♪」
庭師としての仕事は、そう、庭を整えることだ。エマ・ウッズはその後も、ヴェルサイユ宮殿など、世界的に有名な庭園を直接手がけたとされる。今でも記録に残る数々の美しい庭のすべてには、エマ・ウッズの関わりが見受けられている。
クラウンはピエロだ。道化師だ。赤い風船をもち、あちこちで「ハァイ、ジョージ?」と話しかけてくる存在である。そんな彼は、当然、宮廷道化師として多くの王に仕えた。
だが道化師の仕事とは、ただ王を退屈させないためのものではない。時として政治に介入し、多くの歴史を動かしてきた。中世ヨーロッパの王室に出入りしていたクラウンがいなければ、今のヨーロッパ地図は大きく様変わりしていたと言われる。
船医、日柳すみれは功労者だ。中学ジャージに便所サンダル。上に白衣を羽織っている。日柳すみれがいなければ、宇宙船なろう号は壊血病で崩壊していたことだろう。
「船医として求められる限り、私は、どこにでも行きます!」
そんな日柳すみれは、船医としてフェルディナント・マゼランの世界一周に同行し、フィリピンにおいて彼を窮地から救った。ちなみに、45億と10年片思いしている相手の写真はまだ大事にしまっている。いつかどこかで再会できるといいね。
JUNYは芸術家を志すドラゴンの卵の模様の赤い染みをちょっと塩焼きだ。ミトコンドリアとアメーバの間に生まれる前の人魚であり、地球のようなものを持っている。ちょっと全体的になに言ってるかわかんないですね。ナンセンスな文章で構成されているものって、どう取り扱えばいいかわからないので、よろしくないですね。
しかし、わたしたちは全体的になに言ってるかわかんない人物を知っているだろう。そう、レオナルド・ダ・ヴィンチとは彼の別名のことである。
原稿が終わらないあかりは売れない同人作家だ。ジャージ。あたりに転がってるカップ麺とエナドリの缶の姿をしており(それ部屋の描写じゃない????)古いパソコンを持っている。あかりは同人誌に真剣に向き合い続けて、やがて同じように真剣に創作に打ち込む同士と出会った。
「そうなんですよ! それ、いいじゃないですか、アイドルですよ!」
ウィリアム・シェイクスピアは後にこう語っている。私の芸術を理解し、そしてずっとそばにいて支え続けてくれたのは、原稿が終わらないあかりその人であった、と。
***
エピローグ:近代
筋骨隆々で浅黒い超健康体のモヒカン男の水野力は、無職(探偵助手だったが探偵の兄が昨年死亡したため)だった。兄の形見の武装車椅子(自爆装置付き)に乗っている。そんな彼は今でもずっと探偵を続けており、そもそも彼がいなければこの世界に『探偵』という職業は生まれなかっただろう。
「そう、探偵……。ま、兄貴みたいにはうまくできないけど、がんばってるさ」
彼はただひとり、アーサー・コナン・ドイルという弟子を雇った。兄の面影をもつ人物だった。アーサー・コナン・ドイルはその後、数々の探偵小説を生み出し、その基礎を確立させたと言われている。
雨乃 時雨はコックだ。おたまを常に持っている。かねてから憧れだったフランスの地に飛んだ彼は、そこで様々な料理と出会う。しかし、現代日本の価値観で食事を楽しんでいた雨乃 時雨は、衝撃を受けた。なんて、雑な、料理!
「ええい、僕に任せてくださいよ! 本当に美味しいフランス料理ってやつを見せてやりますよ!」
名前もジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエとフランスっぽい名前にした雨乃 時雨はフランス料理のレシピ編纂にも力を注いだ。彼の名は料理人に授けられる栄誉称号『ディシプル・オーギュスト・エスコフィエ』(オーギュストの弟子、という意味である)として、今も現代に残っているのだ。
しろてんは20代後半短髪の青年だ。警官(宇宙課)であり、ビームライフルを持っている。彼は世界を股にかけ、飛び回り、あまたの未解決事件を解決に導いた伝説の警官となる。
「どんな事件も、俺に任せてくれよ!」
また現代の話になるが、海外ドラマのホワイトカラーというタイトルは、当然ながら今も世界中に伝説とともに語られるしろてんの名前が元になっているというのは、今さら言うまでもない話であった──。
古馬海は浦和レッズのユニフォームを着ているマッチ売りである。ウィスキーを持っている。この、新たな地球の歴史においてマッチ売りという童話の内容は少々違っている。それはかわいそうな冬に凍えるマッチ売りの少女を、コバカイと呼ばれる人物が助け出す話になっているのだ。
「ほらほら! これでも飲んで、飲んで!(ウィスキーを飲ます)」
そんな古馬海はイギリスにおいてサッカーの基礎を築き、熱狂的なファンを作り上げた。フーリガンの起こりである。
***
エピローグ:現代
宣伝部長はゾンビだ。無職(前科五犯)で、女の生首(腐りかけ)を持っている。ずーーっと持っている。1話からずっと出ていたゾンビで、生き残ったゾンビだ。誰も気づかなかった。どんなに提督がいい話をしている傍らにもいて、潜んでいたゾンビだった。
「俺をスルーしやがって……よくも、よくも……」
彼はただひとり生き残ったゾンビとして地下に潜伏しており、再びこの地球をゾンビの海に変えるために再起を誓っている。でもスマブラの発売日は楽しみにしている。
越谷 杏子は密偵だ。チョロそうであり、あんぱん(こしあん)を常に持って、張り込みを続けている。今では伝説的な密偵だが、その名が歴史の表舞台に出ることはなかった。しかし、西冷戦中に彼女がいなければ第三次世界大戦が起こっていたとされる。
「ま、密偵っていうのは、そういうお仕事だからネ」
また、仕事の最中に数多くのイケメンスパイと出会い続け、彼らと出会いたびにジェームス・ボンド的な恋に巡り会い続けている。いつか最愛の人と出会ったその日、もしかしたら彼女は密偵としての仕事をやめ、ひとりの幸せな女になるのかもしれない。
ヌメット・スネークもまた、裏の世界で生きるものだ。所持している武器の弾薬を無限に生み出すバンダナを巻いている。武器は持っていない。NGO活動家(主に潜入任務)をしている。彼は越谷杏子とともに東西冷戦の裏で活躍した。
「…………」
彼はのちにビッグボスと呼ばれるようになる。またコジマ・カントクという日本人は彼をモデルにゲームを作り、それらは大ヒットをして世界中の人達に愛された。
アポロは宇宙創設者だ。宇宙飛行士の基礎とも呼ばれている白衣の26歳の男性。宇宙の危機を感じとり、死後の世界から駆けつけた。「地球は青かった」という言葉はこの人物が考えたとも言われている。(原文ママ)だ。
「地球は青かった」
その通りすぎて、もはやなにも書くことがない。そんな彼はのちにロシアに渡り、ユーリ・アレクセイヴィチ・ガガーリンと名を変えた。常にこれからも宇宙に関わりながら生きてゆくのだろう。宇宙素晴らしい。宇宙万歳。
ブルース・フォーはトラックスーツを着たアジア人。雰囲気はある。カンフー映画アクターであり、三節棍を常に持ち歩いている。彼はこの46億年の間に、ありとあらゆる中国拳法を収めた。0・001インチパンチと呼ばれる必殺技は、彼の代名詞にもなっている。
「考えるんじゃない。感じるんじゃない。そう……スティックを勢いよく弾いて、スマッシュ攻撃を繰り出すんだ……」
彼の流派を学んだ男は、彼の名前を与えられブルース・スリーと呼ばれたが、しかしあまりにも偉大な師に自分は永遠に一歩届かないという意味を込め、1文字削ってブルース・リーと名乗ったという。
シールー・アイリスフレイムはウォリアーズオブカースト社の主席デザイナーであり、カラーパイを常に持ち歩く。シールーが設立した会社はファッション社であるが、それはあくまでも表の顔に過ぎない。
「あなたのそのセンス……ふぅん、見どころ、アリね」
世界を裏から牛耳る組織であり、最強の傭兵団、ウォリアーズオブカースト社だ。古くはテンプル騎士団やフリーメイソンと関連があるとされた秘密結社のボスは、きょうもANANを見て、デザインの勉強を楽しんでいる。
ぺぺぽんは中古アイテムショップ店員だ。右ほほに十字の傷があるエプロン姿の男であり、旧式ゲームのコントローラーをずっとずっと持ち歩いている。その姿形は、伝承にある世界最古の古物商とよく似ていた。
「さ、なんでも、買い取るよ。そう、命、以外はね? フフフ……」
人知れず中古アイテムを買い取り、困っているものの下へと届ける。そんな頬に十字傷のある存在は、少なくとも4000年以上前から世界各地に残った文献で語られている。pepeponの名が転じて、Weaponへとなったというのは、もはや覆しようのない事実だったのだ。
タンドリーはなんと火の鳥だ。人類を信じる心をもっている。タンドリーは創世以来人々の命の営みを見守ってきたが、その不老不死の秘密を求めたあまたの人物に狙われ続けてきた。それでも人類を信じ、暖かい心で見守ってきた。畜生鳥とか呼ばれていない。
なにを隠そう、46億年続いている『小説家になろう』という投稿サイトを作ったのも、タンドリーである。
タンドリーは最近になって企業を立ち上げた。
いつまでも雛鳥のような人類を可愛らしく思い、その慈愛を込めて──。
社名を──ヒナプロジェクト、という。
細身のイケメン、ジルオールは高校生だ。妹の写真を今でも持ち歩いている。ゾンビに食われ、自らこの手で仕留めてしまった妹の写真を、だ。
「…………」
46億年経った今、現代は様々な歴史の介入が合ったにもかかわらず、なにか高次元生命体の修正力が働いたのか、昔の地球とほぼ変わらないあり方をしている。
ジルオールはカリフォルニアにある、自宅の前に佇んでいた。
46億年前と変わらぬ、なにも代わり映えのない自宅だ。
ガチャリ、とドアが開いた。そこからは仲睦まじい兄妹が出てきた。手をつないだ家族だ。幼い妹の背丈は小さく、そして男の方はかつての自分と同じ顔をしていた。
この世界に生まれ、ゾンビに襲われなかったジルオール家である。
あっ、となにかを言って、この世界のジルオールは家の中に引っ込んでいった。妹はその場にちょこんと取り残される。そう、ここでゾンビが襲ってきて、自分は玄関の方から妹の悲鳴を聞いたのだ。その後、なにもできず、ただゾンビに変わってゆく妹を呆然と眺めていた。
だが、この世界にゾンビはいない。妹は兄が戻ってくるのを、お利口さんに待っている。
「…………」
万が一と思って、ここに来てしまったが……やはり、会いにくるべきではなかった。46億年もの愛情があふれてきて、今すぐにでも抱きしめたくなってしまう。
思いを振り切り、背を向ける。そのときだ。声が届いてきた。
「え……? おにい、ちゃん?」
「──」
ジルオールの足が止まる。妹が、たたた、とこちらに近づいてくる。ジルオールは首を振った。
「……元気でな」
「え、どうして、お兄ちゃんがふたり!? ね、お兄ちゃん!」
ジルオールは背を向けたまま手を振った。あの妹の隣にいるのは、今の自分ではない。だから、これでいいのだ。
46億年間、乾いていた両目から涙が流れ落ちる。そのときだ。ポケットのスマホが震えた。メッセージの着信だ。
それは、日本のパセラに緊急集合、というメッセージだった。かつて仕えていた上官からの誘いに、ジルオールは泣きながら頼りない笑みを浮かべた。
「……久しぶりに、会いに行くか」
そう、あの妹の隣に、この世界のジルオールがいるように。自分のそばには、あの日以来、固く繋がった絆がある。大切なものは失ったけれど、今の自分はひとりじゃないのだ。
「提督──元気かな」
見上げた空は、きょうも晴れやかだ。宇宙空間の漆黒の闇とは程遠い。ここには命がある。愛があり、そして大切な人達がいる。
いつだって、時は前に進んでいる。これからどんな人生を送ることになるかわからないけれど、それでも、明日は明るいと信じられた。
だって、明日はついにあのゲームの──発売日なのだから。
***
エピローグ:提督
かつて提督と呼ばれていた人物は、ソワソワしていた。
列に並び、今か今かとヨドバシカメラの開店を待ちわびている。
あっ、お店が開いた。一万円を握りしめながら、ゆっくりと動いてゆく列に続き、ついにお目当てのものを購入した。
ようやく、ようやくこの日が来た。
その後提督は、カラオケのパセラへと移動する。そこにはすでにみんなが集まっていて、カラオケのプロジェクターにはSwitchが接続されていた。
集まっているのは、当然、33名の、かつては搭乗員と呼ばれていた人たちだ。
ずっと提督が発売日になったら一緒にやろうよと呼びかけ続けていたために、集まってくれた古い、古い、仲間たち。なんと誰一人かけることがなかった。(ゾンビもだ)
提督は満面の笑みで「ジャーン」とカバンから買ってきたばかりのものを取り出すと、せかせかとパッケージの包装を剥いて、ぱかっとケースを開き、Switchの本体にソフトを差し込んだ。
プロジェクターの大画面にムービーが流れ始める。すでにコントローラーはちゃんと八個接続されており、一同はそのときを今か今かと待ちわびていた。
提督は、振り返りながら皆に向かって言う。きょうは集まってくれてありがとうだとか、そんな謝辞を。しかしすぐにじれったくなったのか、それはそうとして、とコントローラーを手に取りながら、こう言うのだ。
「それじゃあみんな! スマブラ、やろうか────!」
本日は2018年12月7日。
80億年と46億年、それに2018年の時を超えて、一同はついにここにたどり着いた。
地球は滅ばず、本日は晴天、明日も平和な日々が続いてゆくことだろう。
ふと、どこかで高次元生命体フェフを加えた11名の高次元生命体たちも、スマブラに興じているような気がした。
ひとつになったフェフとF.E.H.Uは無邪気で、人がよくて、みんなとのスマブラもきっと楽しめるだろう。そう、フェフさんは本当はいい人なんですよ。本当に。ちょっと皆さん、フェフさんを誤解しないでください。このお話はフィクションです!
ともあれ、そんな気がして、提督は──。
「あっ、ちょっ、なにそのアイテム!? 新しいやつ!?」
思う存分、八人対戦を遊び倒すのであった──────。
***
参加者、318名。
生存者、33名。
2018年、クリスマス企画
『宇宙オブザデッド』
~318人の仲間とともに~
(今回も一日過ぎて)完結!
おつかれさまでしたー!!!!!!!!
***
ジュネーヴ大学古ゲーム学科のハンス教授は、日誌をつけていた。その最中だ、大発見があると彼が呼び出されたのは。
行ってみると、ナイル川に続くスーダンの川のほとりから、あるものが発掘されたのだと言う。
第二区の東のはずれから発掘されたそれは、すっかり腐食したプラスチックのケースがあった。
「なんということだ……発売したばかりだというのに、こんなはるか昔から、これが地球に……?」
かくして、スマブラから始まり、スマブラでこの物語は、幕を閉じるのであった────。
今年もなんとかやりきりましたね!!!!!
やりきれたかな? やりきれなかったかな? わかんないな! すべては文字数のせいです。10万字超えるのってなんだよ、ありえないよ……人が一日半で書く文字数じゃないよ……。
いやあ本当に今回は、さすがにキツかったですね。宇宙モノがこんなに書きづらいとは……。人を殺すのって大変なんですよね、めっちゃ労力がかかる……。死ね、死ね、早く死ね、と口走りながら必死にキーボードを叩いていました。こわぁ…………。
にしても、こんな忙しい師走の時期に付き合ってくださったみなさまには、本当、感謝しかありません……。ありがとう、ありがとう……。本当にありがとう……。
更新中はみなさんからかけられる温かい励ましに、もう涙こぼれそうだったよ……。
しかし去年のあとがきみたらウケるw 「来年とか文庫一冊分になるんじゃなかろうか……こわい。」って言ってますねこいつ。なるんじゃないんだよ! お前がそうしたんだよ! 他人事みたいに言うんじゃねえぞみかみてれんよぉ!
来年は文字数五万字以内を目指したいと思います。文字数を減らし、それでもみなさんに満足してもらえるような秘策を、きっと来年11月ぐらいのみかみてれんさんが考えていてくれると思うので、そう、未来を信じて!
それでは謝辞に参ります。
今回も登場人物管理に協力していただいた黒井へいほさん。本当にありがとうござます。死亡者リスト、生存者リストを表記することができたのは、彼のおかげです。ひとりでとか、もう無理だから!
続いて、いろいろと企画の相談にのってくださった鰤/牙さん。エピローグは彼の助力が強いです。歴史関係にめっちゃ強い。来年もよろしく!!!
ツイッターでご応募いただいた方、活動報告に書き込んでくださった方々も、本当にありがとうございます。登場人物がいてこそのこの企画です。今回見て楽しかったーとか、今回参加し忘れちゃったんだよなあ、って方は、ぜひぜひ、来年参加してくださいませませ! 人が増えてもやりきってみせるよー! バリバリー!
さらに感想をくださった方、ツイッターで実況してくださった方々には本当に助けられました。タグっていいね、感想がひとまとめになって! わたしタグ好きー!
そうそう、それと最大のスペシャルサンクス、鹿角フェフ先生。今年もすみませんでした。でもフェフさんは、わたしとわたしのやることが好きだからね! 許してくれるんじゃないかな!? いえ、ほんとうすみません。割とマジな感じで。すみませんでした。
ではでは、一日遅れてしまいましたが、今年もこの言葉で締めようと思います。
それでは、皆さん────
────メリークリスマス!!!!!!!!
来年もよろしくねーーーーーーーーーーーーーーー!
(そしてわたしは、すぐさまにスマブラの電源を入れるのであった──)




