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23-3オブザデッド


 エネルギー切れ目前の鹿角皇帝なろうエンペラーに、次陣が飛び込んでゆく。


 ビームによる大量撃墜を塞ぐための作戦であった。


 しかしそれは、搭乗員の命を使って鹿角皇帝なろうエンペラーの戦力を削るという、非情な作戦でもあった。


 だが、提督の想いを、搭乗員は全員、理解している。これまでの長い時間を、一緒に過ごしてきたのだ。



「くそう! 来るな! これ以上来ると、もう、ひどいことしちゃうぞ! 残酷だぞぅ!」


 叫ぶものの、鹿角皇帝なろうエンペラーは、手をもがれ、足を拘束され、さらにエネルギーは枯渇寸前。もはや宇宙に浮かぶ棺桶と化している。


 あとはその命を取るだけ──。



 ASHIO-ff(アシオ ダブルエフ)は、3代目だ。アダムスキー型UFOの上に、スターウォーズのC-3POに似たロボットの上半身が付いている。前年度の量産型ASHIOがさらなる進化を遂げて帰ってきた!「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」(原文ママ)だ。小説『I, Robot』を手に、読書をしつつも、アダムスキー型UFOが次々と近づくスペースゾンビを蹴散らしている。


 いよいよ、鹿角皇帝なろうエンペラーに取りつき、ビームでその装甲を削る。


「アナタのライフは、スデに、のこり、3%、デス」

「冷静に分析しないで!」


 ビームを打たざるを得なかった。鹿角皇帝なろうエンペラーはASHIO-ff(アシオ ダブルエフ)を消滅させる。だが、消え去る寸前のASHIO-ff(アシオ ダブルエフ)は笑っていた気がした。倒したはずなのに、俺の勝ちだ、と。ロボットはそう勝ち誇っていたのだ。


 カチガラスハンターは連日の徹夜と上司からのパワハラで疲れ切った結果、死んだ魚の目をした発狂した科学者となり果てたような外見をした、科学者だ。カチガラスハンターは装甲に取り付く。自ら調製したTNT爆弾を仕掛け、鹿角皇帝なろうエンペラーの胴体にわずかな穴を穿った。


 ここから侵入するのは難しいだろう。もう一度──とTNT爆弾を設置しようとしたところで、周囲をスペースゾンビが取り囲んでいることに気づいた。カチガラスハンターはニィッと狂気的な笑みを浮かべる。


「よぉし……俺のTNTを味わいたいか? いいぞ、存分に、喰らっていけ」


 白衣の下には、大量のTNT爆弾が仕込まれていた。スペースゾンビが「っべ」と声を漏らした直後、宇宙には巨大な華が咲いた。死んだ魚の目の男が咲かした死に華だった。


 クローズ・サンダーはWHO職員だ。ブラッド・ピットそっくりで、マスターキー(斧)を持っている。斧さえあればたいていのドアは壊せるのだから、マスターキーということだ。さて、ここに少し穴が空いたが、開けない扉がある。クローズ・サンダーは斧を構え、カチガラスハンターの空けた穴に叩きつけた。マスターキー(斧)はその瞬間、光を放つ。


 ガコッ! と一気に巨大な穴が開く。これが、マスターキーの力だ。


「クローズ・サンダーじゃなくて、オープン・サンダーになっちまった、ってことだね。HAHAHAHAHAHA」


 宇宙空間で手を打ちながら大爆笑をしていると、装甲の内部から突き出てきた触手に頭を撃ち抜かれて死亡した。だが、これで道は開けたのだ。



 ねねこはこたつのぬしだ。もこもこで、杏露酒を抱えている。こたつに乗ったまま、ふらふらと宇宙空間を漂っているところで、スペースゾンビが入りたそうな目をしていたので、こたつに入れてやった。


「暖かい、ですね」

「そうにゃ」

「……暖かい、ですね」

「……そうにゃ」


 会話が続かず、その空気の気まずさに耐えかねてねねこは息を引き取った。どうしてあのとき入れてあげてしまったのか。わからないけれど、人は良心を忘れては生きられないのだ……。



 防衛医科大学校看護学科学生のアイは、アサルトライフル銃剣付きを抜剣し、制服姿で装甲の中に飛び込んでいった。アイが先駆けであった。


「……暗い、ですね……。それに、ヘンな匂いまで……」


 装甲の中に潜んでいる高次元生命体フェフを討ち取って初めて、地球の仇を取ったと言える。アイがいまだに制服を着用しているのは、ともに学んで滅びた防衛医科大学校看護学科の仲間たちの無念を忘れないようにしているためだ。


 暗がりからワニが飛び込んできた振り返りざまに銃剣を付きたて固定し、アサルトライフルを連射する。だが、その分厚い皮膚に阻まれ、銃弾は跳弾の雨となった。それを浴びたアイは血まみれで、宇宙空間に散る。防衛医科大学校看護学科の仲間たちが「よくやったね」と出迎えてくれる。そんな夢を見た。



 掃除妖精(自称)は掃除妖精(自称)だ。職業が説明になってないな! 外見は、40cmくらいのメイド服を着た妖精。掃除と称し、何でもかんでも『吸引力の変わらないただ一つの掃除機』で、吸い込んでいくはた迷惑な妖精。名前も職業も自称であり、ただの名無しの妖精。(原文ママ)だ。


 吸引力の変わらないただ一つの掃除機を手に、装甲の中へと飛び込む。今まで誰からの迷惑がられてきたけど、今回はとびっきりだ。なんといっても、地球を割った悪の親玉みたいな人に、こんなに迷惑がられることができるのだから。


「そこだね! 死んでー!」


 掃除機を向けると、そこに勢いよく触手がスポッとハマった。あれ? と掃除機を振る。あっ、抜けない。


「……ま、相手の触手の一本を使用不能にしたから、まっ、いっか!」


 深く考えず、掃除妖精(自称)は頭を貫かれて死亡した。いいのいいの、来世に期待。だって妖精って、そういうものだから!



 ただのニートではないハイニートだ。な慧。それに先生のルナルナ。さらに倉庫勤務のユウ・キリシマは三人で装甲内部へと侵入した。別に仲良しというわけじゃない。ただ、倒すべき敵が同じだけだ。


「暗いな……くそ、どうして俺がこんなことを……。宇宙船に引きこもっていればよかった……。はいニートなんだから……」

「灯りをもってくればよかった、ですね。あ、おクスリ入ります?」

「いや、いいよ……。早いところ、こいつで狙いをつけないと」


 ユウ・キリシマがグラビティガンを左右に振る。ちなみに慧が持ってきたのはひのきの棒で、ルナルナ先生は、ピンクのお薬だ。戦力は俺しかいねえ。ユウ・キリシマはガチでそう思っていた。


「あっ!」と気づいたときにはもう、遅かった。慧は頭を撃ち抜かれる。続いて、ユウ・キリシマ。女は一番最後にしてやろう、ということか。クソ、ここまでか……。瞑目して、ユウ・キリシマは衝撃が襲ってこないことを不審がり、目を開く。


 ルナルナ先生が胸を貫かれて、吐血していた。


「あんた、どうして!」

「だって、先生……一応、先生、だし……?」


 微笑みながらごふっと血を吐く。その奥で光が瞬いた。ユウ・キリシマはルナルナをかばいながら、反射的に引き金を弾いた。「ぎゃ!」という声がする。


 しかし、相打ちだ。ユウ・キリシマの腹も貫かれた。もう命はわずかだ。ため息をつく。


「どうしちまったのかねえ、俺は……」

「………………」


 死にゆく男が、死んでしまった女を抱えながら、宇宙を漂う。これもまた、ひとつの結末であった。



 眼鏡をかけた痩躯の男がギルバート。革命家だ。もう片方の、ゴリラが山神ルーシー華子真由美紗奈早苗円香明神智和田輪廻清藤蟈畿之娘。おかしな取り合わせだ。ふたりはしかし、意外なほど見事なコンビネーションを発揮し、装甲内部を探索していた。


 ゴリラはお母様の形見である高次元生命体絶対殺す銃を手に、辺りを注意深く見回している。ギルバートはそんな彼女を、好ましくすら思っていた。


 容姿など関係ない。山神ルーシー華子真由美紗奈早苗円香明神智和田輪廻清藤蟈畿之娘は箱入り娘(英才教育を受けている)だ。革命家として、このように品格の高い女は、使える。それがゴリラであっても。


「なあ、キミ……。もし、この戦いが終わったら、一緒に……」

「ゴリ!?」

「いや、その、なんだ。面映いものだな、こういうことを言うのは」


 飛び上がって、山神ルーシー(以下略)はギルバートを見つめる。ちなみに魅力はどちらも3同士。お似合いのカップルではないだろうか。ギルバートも彼女を使える道具だと思っていたはずなのに、不思議な胸の高鳴りを感じていた──ところで。


「僕の見ている前でラブコメとか、絶対に許さねえからな!!!」


 怒りの炎を目に灯した高次元生命体フェフが、ものすごいスピードでやってきてふたりを念入りにバラバラにした。つまり彼は、前線に引きずり出された、ということだ。



 毘沙門天ゆるいこは同人百合作家だ。もふもふの帽子をかぶっていて、ふわふわな青いコートを身につけている。持っているものはくさびだ。よく撃ち込まれるアレだ。


 同人作家というのは基本的に自分のやりたいことをやる人種である。なので、毘沙門天ゆるいこはひとりで装甲内部までやってきた。どうしてそうしたのかわからない。そうしたかった、という以上の感情がない。


 現れた高次元生命体フェフは、こちらを窺っていた。話してみたいと、思ったのだ。


「ねえ、あなたは……もう、こんな戦いをやめたいと思っているの?」

「え? う、うん、まあ……なんか、形勢不利だし……」

「だったら、和平を結ぶっていうのはどう? 話せばわかるんじゃないかな?」

「わかるかなぁ……自分で言うのもなんだけど、僕だいぶすごいことしてると思うけど……」


 確かに。世界滅ぼしたり、地球割ったり。


「でも、やってみないとわからないわよ!」

「え? ま、まあそうだね……。じゃあお言葉に甘えてみようかな」


 そのとき高次元生命体フェフは初めて、頬をほころばした。巨大なワニのような姿のどこが頬なのか正確にはわからなかったが、これには毘沙門天ゆるいこも満足げにうなずいた。そして背中を見せた次の瞬間だった。


「ばかめ! 死ねえ!」


 背後からのアンブッシュだ! 毘沙門天ゆるいこは頭をがぶりとやられて、一撃で絶命した。フェフは高笑いをあげる。なにが信頼だ、バカバカしい! このお話は、裏切りと策謀の物語なんだよ!


 そのとき、足になにかが突き刺さる感覚があった。毘沙門天ゆるいこの持っていたくさびが、高次元生命体フェフの足を貫き、床に縫い付けているのだ。そんなもの簡単に振りほどき、ふりほど、ふり……。あっ、無理だ。全然、取れない。なんだこれ。意志の力か。それとも怨念か!?


「えっ…………えっ!? やばいぢゃん!?」


 ザッ、ザッ、ザッ、と装甲内部を大勢の兵が歩いている音がしてきた。


 いよいよ高次元生命体フェフは、追い詰められた。



 次回、高次元生命体フェフ死す!!


***生存者***


水野力みずのぱわー

足の生えたじゃがたらいも

ブルース・フォー

ヌメット・スネーク

シグルド

日柳すみれ

ぺぺぽん

みさと

永瀬-Ⅲ

さけさかな

箱野ねこ

JUNY

しろてん

アポロ

原稿が終わらないあかり

羽海野渉

かどくら

クラウン

オレンジ・キッシュ

雨乃 時雨

タンドリー

エマ・ウッズ

シール・アイリスフレイム

リョクア

宣伝部長

ジルオール

越谷 杏子

黒無(クロム)

古馬海

ジイ・ファンタジー

ウニみちながサガ

ニコラウス


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