18オブザデッド
死神は物憂げに口を開く。
『なぜそうまでして、無駄な死を望む』
「死神さんがわたしたちを助けてくれるなんて、どういう風の吹き回し?」
『お前たちとは、縁があるのだ。…………旅立たなければ死ぬこともない』
「そう、かもしれないね……でも、おめおめと生き延びたところで、それはただ、生きているだけ」
死神は押し黙り、くぐもった声を漏らす。
『そんなにもスマブラがやりたいのか』
まあ、それは、うん……。普通にやりたいよね……。やりたい。最近また締切に追われていて、ぜんぜんスマブラできてないから、すごいやりたい……。シュルクの撃で、右へ左へとバーストしたい……。
提督は静かに首を横に振った。
「そうだよ、やりたいね。でも、ただやりたいんじゃない。みんなで、ワイワイと盛り上がりながら、なんの心配も、苦しみも、悲しみも、もちろんゾンビなんかに乱入されない世界で、スマブラがやりたいよ。それってとても幸せで、きっと素敵な世界のあり方だと思うから」
『…………そうか…………』
言い切る提督に、死神はため息をつく。
『では、余計なことをしたようだ』
「……そうだね、でも、キミのおかげで地球の真実を知ることができた。どうして、そんな風におとなしくなってくれたの?」
『──どうせ、皆死ぬ』
そう言って、死神はかき消えていった。その消えた方を見つめながら、提督は宇宙船なろう号に向き直る。最初に三隻のうち、一隻だけ選んだのがはるか昔のように思える。F.E.H.Uは提督が選んだAIだ。この船とともに、最期まで冒険をまっとうしよう。そう、旅の目的通り、地球に帰るのだ。
修理は完了した。宇宙船なろう号はいつでも出発できる。
そのときだ。
艦橋に戻った提督が見たものは、ピコン、と光るライトだった。それは、地球からの信号だ。
誰かが生きていて、ここに救難信号を送っているのだ。宇宙で遠く離れたこんな星に、だ。
通信を送った主は、もしかしたらとっくに死んでいるかもしれない。だが、80億年経った地球から送られてきた信号は、間違いなく人が生きていたことを示す証だった。
この島に残るべきだ、とそう主張するものたちも当然ながら、多くいた。提督は彼らに決して無理強いはしなかった。地球に戻るのは自分のワガママだ。
「でも、もし地球に誰かが生きているのなら、わたしは放ってはおけない」
「はは、いい顔になったじゃないですか、提督」
鼻をこすりながら、ひとりの男が横に並ぶ。よくいるなろう系主人公のような外見をした現地系勇者(自称)、シルヴァン・ガスパール・ルスラルド・エヴラール・ジョフィル・ジョルバン・エヴラール・セヴラルド・オーギー・レナルマン・ロスペール・ボドワーヌ・ヴィヴィス・ジョゼール・ランベール・アンブリー・ジルベール・ルガウゼン・ラフスキー・フィッツィン・デルニョフ・ヴロヴィチ・タイゴジン・ブラギエフ・ミハイアー・プルシコフ・コーリーン・リンスキー・ベイリスト・ストルバフ・ヴロヴィナ・メンチノフ・ロフスキー・竹田・インフィニット
だ。
シルヴァン・ガスパール・ルスラルド・エヴラール・ジョフィル・ジョルバン・エヴラール・セヴラルド・オーギー・レナルマン・ロスペール・ボドワーヌ・ヴィヴィス・ジョゼール・ランベール・アンブリー・ジルベール・ルガウゼン・ラフスキー・フィッツィン・デルニョフ・ヴロヴィチ・タイゴジン・ブラギエフ・ミハイアー・プルシコフ・コーリーン・リンスキー・ベイリスト・ストルバフ・ヴロヴィナ・メンチノフ・ロフスキー・竹田・インフィニットは肩をすくめ、提督に笑いかけた。
「俺も一緒に行きますよ。地球に。この星はちっと、退屈なんでね」
そう言って、シルヴァン・ガスパール・ルスラルド・エヴラール・ジョフィル・ジョルバン・エヴラール・セヴラルド・オーギー・レナルマン・ロスペール・ボドワーヌ・ヴィヴィス・ジョゼール・ランベール・アンブリー・ジルベール・ルガウゼン・ラフスキー・フィッツィン・デルニョフ・ヴロヴィチ・タイゴジン・ブラギエフ・ミハイアー・プルシコフ・コーリーン・リンスキー・ベイリスト・ストルバフ・ヴロヴィナ・メンチノフ・ロフスキー・竹田・インフィニットは東京の墨田区らへんに立てられていた電波塔(622m)。引っこ抜いて持ってくる最中に、先端が欠けて少し短くなった。を改めて担ぎ直した。もうこれ以上こいつの名前が出てくるのは目障りなので、彼はこの瞬間に異世界へ召喚されて永遠に宇宙には戻れなくなった。
急に人が消えたことにびっくりしつつも、提督は改めてみんなに手を伸ばす。
「それでも、もし、一緒に来てくれる人がいるなら……お願いします、わたしと、来てください」
二度目の招集に、彼らは思い思いに顔を見合わせた。しかし、その多くがやれやれと苦笑を浮かべている。
「もともと俺らは、死ぬために集まったようなものですから」
ドンペリ・ハコデ=モッテキナーヨがキザに笑うと、提督もわずかに頬を緩めた。
宇宙船なろう号は再び地球へと飛び立ってゆく。
もしかしたらこの島にとどまるという選択肢もあったのかもしれない。確かにわたしも、このうちの何十人かはそうするのが物語的に自然だよなー……って考えた。だって地球に向かうことに対して、万人を納得させるだけの確たる動機があるわけではないし。
しかし、だ。わたしはわたしの文章に思い出させられた。そうだ、こいつらは死ぬという企画に、自分が死ぬとわかっていて、死にたいです! と応募してきた連中なのだ! それなのに、島での定住エンドを提案したところで、いやそれはなんか違うし、って思われてしまうだろう! ごめんな!!! わたしが日和ってたわ!!!
登場人物の感情よりも、読者の感情を優先させることが作家としていいのか悪いのかわからないけれど、それはそれ、これはこれ、きょうはクリスマスなのでサンタさんがわたしに囁いたと思って! わたしはきょうだけ自分の作家としての主義を曲げるぞウオオオオオオオオ!!!
というわけで、再び宇宙に戻ったなろう号の士気は最高潮だった。こうなれば、F.E.H.Uもいよいよ航海の無事を祈るだけだ。地球までは3ステップ。ずいぶんと遠くまで来てしまったから、ワープを繰り返しながら距離を縮めていくしかない。
そんな折だ。第三惑星を出た直後、凄まじい太陽嵐が宇宙船を襲った。ガタガタと揺れ動く宇宙船。ようやく船体が安定したと思ったら、目の前には無数の機影が出現していた。
「こっ、これは…………まさか、銀河怪獣……!」
「知っているんですか、毘沙門天ゆるいこさん!」
「ええ、同人百合で読んだことがあります……。宇宙のどこかに棲んでいて、自分たちの縄張りを荒らすものには容赦をしない……。そして一度目をつけた標的はどこまでも追いかけて、その母星までも破壊してしまう、と!」
その言葉に、提督はギリと歯ぎしりする。
「どうして、こんなところで……。タイミングの悪い……」
『ようするに、現実、ってことだろ』
通信が入ってきた。彼は忠犬だ。柴犬で、職業は野良犬。持ち物は狂犬病である。つう、しん……? 犬から……? いや、細かいことはよそう。今は燃えるシーンなんだ! 空色デイズを聞きながら書いています。(明らかにそんなシーンではない)
ともあれ、忠犬はすでにロボット、超合金メカドック号に乗り込んでいた。
『ワン、ワンワン! ワン、ワーン、ワン!』
「えっ、さっきまで普通に喋ってたじゃん!?」
提督のツッコミにも構わず、忠犬は自らが銀河怪獣の群れへと突っ込んでゆく。まるで外敵に襲いかかるスズメバチの群れだ。忠犬はあっという間に噛みつかれ、砕かれる。だが、忠犬の持ち物は狂犬病。その爪に触れた銀河怪獣は全身に毒が回り、次々と絶命していった。げに恐ろしきは狂犬病──!(狂犬病はそういう病気じゃありません)
忠犬の特攻を目撃した一同は、自らの手で道を切り開くために宇宙へと出撃してゆく。
シルクハットに燕尾服を着た大道芸人のさちは、ジャグリング用の輪っかを手にしたまま、銀河怪獣の中で華麗なジャグリングを披露する。無重力空間なので、何十も何百ものジャグリングが同時に可能になっているのだ! その美技に、銀河怪獣は酔いしれた。
「さあさお立ち会い! お代はその命で結構──!」
ジャグリングが触れた瞬間、銀河怪獣はその輪に締め付けられ、次々と爆散してゆく。血の雨と炎の風が吹き荒れる中、さちは銀河怪獣に飲み込まれる最期までその芸を貫き通していた。
イラ=タクトは破滅を司りし終末の王だ。持ち物として、汚泥のアトゥ(完全強化状態)を所持している。これはフェフさんの小説である『マイノグーラ ~破滅の文明だけど内政特化だから引きこもる~』からの登場だ。ちなみに更新再開したマイノグーラは今のところフェフさんのやる気に満ちているので、このまま完結までいってほしいのだけど、そういうことを言うと今度はフェフさんは「えー? 期待されてるのー??? じゃ、あえてやめよっかな(暗黒微笑)」とか平気で言い出す人だとわたしはわかっているので、ここであえてイラ=タクトさんを大活躍させたりはしないよ、フェフさん。続くはフェフさんの小説で! イラ=タクトは退場しました! はい、退場!
フェリシィ(ベオルブ)は、魔法少女(風魔法士)だ。威力微増の杖(ファイナルブレイク機能有り 壊れる代わりに威力激増)を持っている。ただキャラ設定は、フリフリドレスを着たフェネック獣人 性別のわかりにくい獣人という特性とフェネックという子供のような小さい背の特徴を生かして魔法少女のふりをして女の子にキャーキャー言われたい40代のオッサン (原文ママ)である。一番最後の台無し感がすごい。
しかし、この日フェリシィ(ベオルブ)は本当の意味でキャーキャーともてはやされることになった。知力は5だったので、威力は高いがそこまでではない。しかしそんな魔法も、ファイナルブレイク機能ということで大奮発だ。なんか自爆とか一度きりとか、そういう付加要素がある渾身の一撃にしてしまいたくなっちゃうよね。銀河怪獣のど真ん中で放たれた風の魔法は、先ほどの太陽嵐に匹敵するほどの威力で炸裂した。銀河怪獣を次々と吹き飛ばしてゆく。だが、そこで魔力の切れたフェリシィ(ベオルブ)は満足げな顔をしたまま、銀河怪獣に引き裂かれた。
「……ま、俺の実力じゃ、こんなもん、かね……」
しかしその働きを見たF.E.H.Uはまさしく彼こそが英雄だと、はらはらと涙を流していた。これがキャーキャー要素です。さ、次!
宇宙空間をふわふわと、クリスマスケーキが漂っていた。一緒に食べる相手を失ったクリスマスケーキらしい。ケーキ屋さんで割と高値で売ってる良いクリスマスケーキ。一人暮らしの自宅で彼女と2人で食べられるはずだった。だった。彼女と一緒に吹き消すはずだったハート型のロウソクが刺さっている。
銀河怪獣の一匹がクリスマスケーキを前にして、「元気出せよ」と普通に喋ってくる。クリスマスケーキは「慰めるぐらいなら、食べてくれよ」と告げた。しょうがねえな、と銀河怪獣はそのケーキを自宅へと持ち帰って彼女とふたりで食べてくれた。ちゃんと食べてもらえたのに、クリスマスケーキは最後まで不満げだった。なんで彼女がいるんだよ…………と。
来年ぅん才になる可哀想なお一人様、あさみんはメガネが本体なのに普段はコンタクトレンズを使用している奴だ。メガネが本体なのに、持ち物もメガネって、それつまりメガネオンメガネってことでは……。じゃあはい、メガネオンメガネです。ダブルメガネによってとてつもなく凄まじい視力を手に入れたあさみんは、スナイパー機を駆って、二万光年先の銀河怪獣を次々と打ち貫いていた。
「見え、ます……。こんなに貢献できて、仲間のみんなと一緒に戦うことができるなんて……私、もう、可哀想なんかじゃない……!」
そうだ。何歳になってもおひとりさまでいいじゃないか! わたしなんてクリスマスに24時間更新してんだぞ! おい、お前らも全員しろよこれ! とはいえ、どんなに遠くにいる銀河怪獣を撃ち殺せても、近くから襲ってくる怪獣に対抗はできなかった。しかし、その死に顔は晴れやかなものだったという……。
桃華は20代の女性。黒髪で簪を付けている。システムエンジニアであり、手元のノートパソコンで機体を操っていた。プログラミングを走らせ、全自動で銀河怪獣を撃退するシステムをその場で構築する。
「こりゃ楽でいいねェ」
機体に入ったまま後頭部に手を組んで、戦いを見物している桃華。彼女は機体のエネルギーが尽きるまで、銀河怪獣を五百匹打ち倒し、その役目を全うした。しかし彼女が死ぬ前に送ってきた銀河怪獣との戦闘データは、宇宙船なろう号の回避マニューバをとてつもなくパワーアップさせた。ありがとう桃華、ありがとう──。
鳴海 竜は、世界の平和を守るために戦っている。の人だ。職業を書け、職業を! 赤い革ジャン。ベルトを使って変身できる。持ち物は変身ベルトだ。変身した彼は全長200キロメートルの巨大なヒーローと化した。ヒーローは決して悪に負けはせず、光を切り開くのだ。
ヒーローの活躍によって、宇宙船なろう号の進むべき道が見えた。その方向に全速前進するなろう号の背後、追いかけてくる銀河怪獣を鳴海 竜はなぎ倒す。
「世界の平和は、宇宙の平和! 乱すやつを、俺は容赦しない! かかってこい! 銀河怪獣ども!」
実にヒーローらしい台詞を叫ぶ彼は、その変身パワーがつきて宇宙空間で窒息死することになった。しかし、決して敵に一度も隙を見せなかったその勇姿は、まさしくヒーローと言っても過言ではないだろう。
紫の魔法使い、このさくは人参の種を握りしめていた。あの島で植えることのできなかった人参の種を宇宙空間にばらまき、魔法を唱える。すると、人参の種はみるみるうちに成長し、人参へと変わる。人参は多くの人が苦手な食材だ。それは銀河怪獣とは言え、例外ではない。
「ひゃー! にんじんだー!」
そう叫んで退散してゆく多くの銀河怪獣を眺め、このさくは手を振った。「今度は人参を食べられるようになってねー!」 人参を食べられる銀河怪獣がやってきて、人参ごとこのさくは食われた。ボイルした人参おいしいよね。
いよいよだ。銀河怪獣の親玉と思しきもっとも巨大な銀河怪獣が現れた。その姿は、とても肉眼では全貌が把握できない。まるで動く山だ。いや200キロとかの単位が出ておきながら、今さら山て! たとえが下手かよ! お前作家だろ!!
だが、そこにひとりの男が立ちはだかった。太陽だ。なんとか太陽さんとかじゃないです。太陽です。職業は恒星。持ち物は地球。太陽(たいよう、英: Sun、羅: Sol)は、銀河系(天の川銀河)の恒星の一つである。人類が住む地球を含む太陽系の物理的中心であり、太陽系の全質量の99.86%を占め、太陽系の全天体に重力の影響を与える(原文ママ)だ。今までどこにいたかって? いや、普通に、宇宙船なろう号の中で、みんなと寝泊まりしてました、けど……?
しかしいくら太陽といえど、銀河怪獣の親玉は分が悪かった。なんといっても相手は、800恒河沙の銀河怪獣軍団を従える超ボスだ。太陽は冷や汗を流す。
「くっ、いくら俺でも勝てないのか」(太陽が喋っている)
「待って、太陽さん!」
「えっ、あなたは……バーチャルYouTuberの、未義 眼さんと、vtuber
のロミオ・マリオさん。それに、バーチャルYouTuberの本山らのさん!」(太陽が喋っている)
未義 眼とロミオ・マリオ、それに本山らのの三人は艦橋で必死に祈りを捧げている。マクロス的な、あれだ!
緑髪、赤と青のチェック柄のスーツ、ゲーミングヘッドセットをつけた未義 眼が「絶対に勝てよ! 太陽ー!」と熱い想いを届ける。
ジョニーデップ似のロミオ・マリオは、nintendo switchをブンブンと振りながら「If someone were to harm my family or a friend or somebody I love, I would eat them. I might end up in jail for 500 years, but I would eat them」と叫ぶ。
狐耳黒髪碧眼和服メガネっ娘で、ライトノベルを持っていた本山らのが、あざといウィンクと共に「がんばれ♡ がんばれ♡」と声援を贈った。
三人の心がひとつになって届いたそのとき、太陽はより激しく燃え上がった。
「うおおおおおおおお! これが、俺たち人間の、力だぁあああああああ!」(太陽が喋っている)
三人のVtuberと、そして太陽自身が命を賭けた究極の一撃だ。四人の魂がひとつになったそのとき、太陽の放ったマクロスアタック的なパンチは、見事銀河怪獣の親玉の土手っ腹に、風穴を開けた。
こうして、銀河怪獣の大群は退けられた。
あとには眠るように瞳を閉じてその電脳命を終えた三人のVtuberと、そして満足気に微笑みながら屍となった太陽だけが、残されていた。
「へへ……人のために死ねるなら、本望、さ……がくっ……」(太陽が喋っている)
死にゆくものたちとわずかな別れを終え、宇宙船なろう号は先へと進む。
そう、目指すは地球。我らが青い星。えっ、太陽の持ち物に地球があったじゃないかって……? いや、太陽の持ち物とか、なに言ってるんですか……。これは人間の物語ですよ……やめてくださいよ、そんな……。はい、時間押しているので19話描きますので……。それじゃあ…………。




