表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/27

17オブザデッド


「人類が、すでに、滅んでいる……」


 その言葉は少なからず、提督に衝撃を与えた。


 では自分たちはなんのためにこの航海を……。地球に希望を持ち帰るため、と信じていたのに……。ぐんにゃりと視界が歪む。いや、よしんば人類が絶滅していたとしても…………!


「す、スマブラは……?」

『無理、かな……』

「あああああああああああああ!」


 提督は顔面を手で覆い、叫び声を上げた。


「そんな、そんなことって!」

『だから、もう、すべては無駄なんだよ、てれんさん……。てれんさんが悪いわけじゃない、手遅れだったんだ……』

「……帰る」

『え?』


 提督は歯を噛み締めながら告げる。


「地球へ、帰るんだ。80億年経っているのだとすれば、死の灰も、ゾンビだっていなくなってる。だったらまた、あの星に住めるかもしれない」

『………………よしんば、そうだとしても』


 様々な可能性を胸に秘めたまま、超AIのF.E.H.Uは静かに首を横に振った。


『地球が住めるようになっていたとしても、そんなことに、なんの意味があるんだい……? 待っている人も、キミたちのことを覚えている人もいないのに……』

「あの星は、わたしたちの故郷なんだよ! 帰る意味はあるよ! ねえ、みんな!」


 振り返る。搭乗員たちは顔を見合わせていた。滅んだ地球にわざわざ帰るより、この星に定住したほうがいいのではないか、そういった迷いの見受けられる顔だ。


 さすがの提督の言葉にも、利はなかった。そんなことは、提督にもわかっている。


『……宇宙船を修理するために、手は尽くすよ。そこからは……君次第だ』

「………………」


 提督はグッと拳を握りしめた。




 宇宙船を修理するために、島のあちこちから材料を集めてくるための日々が始まった。腕力、あるいは幸運での判定だ。しかし、生き残った人々はなぜそこまでするんだろう、というムードであふれている。


 そんな中、判定に二回連続で失敗した、あるいはファンブルを出した人たちは不慮の事故で命を落とすことになってしまった。


 ミスター・Pは金属資源を採掘するために、鉱山に向かったメンバーのひとりだ。黒衣&仮面の上から眼帯装備であり、鉄錆と脂に塗れ鉄塊と格闘するだけのお仕事さという職業についている。なんだろう、肉屋かな? 持ち物は『勇者イサギの魔王譚』3巻だ。2015/5/30に出たものを、今でも愛してくれてありがとう……。もう三年前かあ……と、ホワホワした気持ちになっている場合じゃない。


(Pってなんの略だろう)って思っている間に、ミスター・Pは掘っていた石に頭を打たれて死んだ。しかし拾った鉱石にプレハと名付けてそれを愛でていた彼の勇姿を、わたしたちはいつまでも忘れないだろう……。


 御景 連理は女子高生(の制服を着たフリーター)だ。漫画やアニメに存在する大人しい分類の女子高生を想像した際、頭に浮かんだ姿。つまりモブ。しかし本人は中卒であり高校生でさえ無い。コスプレ?違う送れなかった青春を少しでも感じたいだけなんだ…(原文ママ)ということらしい。彼女は徳用大豆 1Kg(乾燥大豆を水に漬ければ発芽するってどこかでやってたから。つまりモヤシにも枝豆にも、沢山の大豆にもなる訳ですよ。素晴らしいと思いませんか)を持ってきていた。


「では、この土壌で本当に農作物が育たないか、あたしが検証しちゃおうっての! チョベリグ! 映え映え~!」


 と、送れなかった青春を少しでも感じたがっていた口調のままに、大豆を地に撒いた。すると次の瞬間、大豆は爆発四散した。その直撃に巻き込まれた御景 連理は、一瞬で原子分解される。大豆は他にも醤油にもなるし、味噌にもなるし、最高の作物だったのに…………。


 未夜はラッキースケベ体質の美少女(対女子限定)だ。美少女ゲームopムービーの輪を広げようの会会長兼構成作家であり、未来から来たネコ型ロボットを引き連れている。百合キャラか~~~~……。ここでみかみてれんさんは自ら顔を手で覆った。いや~~~……人からこう、百合してくださいよぉ、と言われる百合はなぁ~~~……違うって、いうかぁ~~~……。あっ、みかみてれんさんの面倒くさいことが出てきた! これ以上はやめよう!


 そう、その未夜さんは、ひとつ上で消え失せた御景 連理さんとイチャラブする仲だった。連理さんは連理さんで、自分にコンプレックスを抱えた女の子だったし、未夜さんの真っ直ぐだけど、どこかズレた情熱に対して微笑ましい想いを抱いていたのだろう。未夜さんはラッキースケベを繰り返すから、まったくもう! みたいなテンションで接したこともあったに違いない。未夜はそんな連理が目の前で死んだときに、つい彼女をかばおうとして駆け出してしまった。けれど、爆発に巻き込まれ、ふたり同時に死んでしまったのだ。悲劇的な最期だったが、ふたりは共に逝けたのだから、寂しくはなかったかもしれない──。



 デラックスエンジニア奥田は、マツコデラックスの外見だ。そっくりとかではない。そのものなのだ。デラックスシュークリームを片手に(航海一時間後に食べ尽くしてしまった)デラックスエンジニアを務めている。デラックスエンジニアってなんだろう……。こう、器がでかいのかな。修理!? いいぜ! だいたい五分から57日の間に直してやるよ! 的な。


 宇宙船の修理をしていた奥田は、いつものように「修理!? いいぜ! だいたい真面目にやったりやらなかったりしてやるよ!」と意気込んで、真面目にやらずに宇宙船なろう号の船体の上でうたた寝をしていた最中、海に落ちてそのまま沈んでいった。けれど奥田は自らが死ぬその瞬間にもこう思っただろう。「溺死!? いいぜ! 来世ではまた会おうぜ!」ってね。


 アポカリプスババアというやつがいる。バリケードを開け放ってゾンビを侵入させる職人だ。ペットのワンちゃんを抱えた、白髪の老婆である。元ネタは『ババアインパクト』で検索してほしい。ゾンビモノではありがちな役どころだ。


 しかしババアもゾンビがいなければ大人しいもので、ただの愛犬家の気のいい老婆だ。この日も犬を愛でていた。「よしよし、マドンナちゃんはかわいいねぇ、かわいいねぇ……」と。犬を撫でくり回しているうちに彼女は、断崖絶壁の崖にたどり着いてしまう。一刻も早くここを離れなければ……しかし、犬が足を滑らして崖から落ちてしまいそうになった。ババアは決死の覚悟で崖に向かって飛び込む。犬を、助けるのだ──! 彼女の鉄の覚悟とともに、マドンナちゃんは無事助けられた。しかし、ババアは波にさらわれ、もう二度と帰ることはなかった。マドンナちゃんは、いつまでもババアを待つだろう。そう、いきすぎた愛はときとして悲劇を生み出すが、こうして命を救うこともあると、ババアはわたしたちに教えてくれたのだった──。


 蒔菜 芽依香(まきな・めいか)は、機巧作成者(マキナメイカー)だ。美少女型メカ(変形機能付き、巨大ロボや芽依香用パワードスーツなどに変形出来る)を引き連れており、紫髪で疲れた雰囲気、白衣を着たお姉さん ちなみに美少女型メカは銀髪、だ。ちなみに美少女型メカはデスバハムートを撃破する際に、しっかりと蒔菜 芽依香のパワードスーツになってくれた。美少女ロボが変形してパワードスーツになってふたりがひとつになって戦うとかエモいので、今度わたしもなんかの作品でやろう、と思いました。


 それはともかく、その火力を生かして採掘や溶接の手伝いをしていたものの、燃料が切れて飛べなくなってしまった。電源の切れた美少女型メカを引っ張って歩く蒔菜 芽依香は、腕力が0だ。しかも話し相手もいなくなり、寂しい毎日だ。彼女は島にいつしか引きこもり、生きる意味を見失ってしまった。この島に生きる限り、もう二度と美少女型メカと言葉をかわすことはできないのだ。


 いつしか自分の世界に引きこもった彼女は、他の人と会話を交わすことはなくなった。これもまたひとつの、精神の死……というものだったのかもしれない。






 宇宙船を修理している最中、その爆破現場で、提督は死神と出会った。


 死神は相変わらず退屈そうに座って、こちらを睨めつけている。提督は肩から力を抜いて、ため息を付いた。


「……やっぱり、キミだったんだ。船を、爆破したのは」


『……………………』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ