表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/27

16オブザデッド


 宇宙船なろう号が爆発した。それも、全員の目の前で、だ。


 全員が口をぽかんと広げる中、宇宙船はぷすぷすと煙を上げていた。


「しゅ、修理しなきゃ……」

「地球に、帰るために……」


 そううめいて、宇宙船へ向かおうとしたつくもなすや、原稿が終わらないあかりを遮るように両手を広げたのは、ホログラム映像だった。


『別に、いいじゃないか! この星で幸せなら!』


 それはみんなのアイドルであり、かわいくて信頼できる超AI、F.E.H.Uだった。


『みんな、どうしてわざわざ、地球に向かおうとするの……? 宇宙の航海は危険がいっぱいだよ! もうこの星で長生きして、暮らそうよ……』


 この時点でF.E.H.Uが話し始めた途端に、ああやっぱり、だとか、テメエついにやりやがったな畜生が、みたいに思う人がいるだろうけど、ちょっと待ってほしい。まだF.E.H.Uがやったって決まったわけじゃないでしょう! なんでそう人を疑うかな!? わたしは悲しいよ! 今回あれほど言ったのにさあ!


 いや、いい……。わたしの言い分は、その後の物語の内容を見て、その上でまた改めて言うとしよう……。今は、そう、F.E.H.Uが正ヒロインムーブをする感動のシーンだよ。


『だからね、もう、宇宙船なんて必要ないって思うんだ……。だってこの星、いい星でしょ……? 例え、人がこの島以外では生きられなくて、さらにこの島でも多くの人が生き残れないとしても……』


『えっ?』


 一同は目を丸くした。なにそれ初耳、なのである。


『この星は、確かにすっごく良い星だよ……。でもね、土壌が、よくないんだ……。きっと、もっと文明が発達しないと農耕ができなくて、農耕ができないからこそ、文明を発達させることができない……。けど、そんなの問題じゃないよねっ!? だって、ここなら平和で幸せに生き延びることができるんだから……』


 なるほど、あまりにも幸せすぎる星だと思った。そういうことだったのか。どこかでオチがあると思ったら、多くの人を養えない星、か。なるほどね、そういうパターンもあるのね、と。


 しかし、宇宙船に搭乗している残り150名近くの人々が幸せになることは、できるだろう。せいぜい増えても人口500人程度が関の山だとしても……。


「でも」


 誰かがはっきりとそう口にする。


「──それじゃあ、スマブラは、できない」


 F.E.H.Uが、ハッとして顔を上げる。宇宙船から煤けた服でやってきたその人影はまさしく、死神に丸呑みにされたはずの提督だった。


「て、提督!?」


 提督は死んだものだと聞かされてきた搭乗員は、目を見開いて驚いていた。なんだよ、提督生きてるじゃん!


「いや、死人を見るような目だね……」

「でも、死んだはずでは!?」


 軍人のまいが問いただすと、提督は頭をかきながら。


「そうみたいだけど……死んだのは、わたしじゃないよ。遊星からの物体Xさ」

「遊星からの物体X!?」

「ああ、参加者に擬態して潜んでいたんだろう。わたしに成り代わって、死神に会いに行ってくれたみたいなんだ。まったく、どうして代わりに死のうだなんて思ったのか……。でも、おかげで助かったみたいだけどね」


 提督はゆっくりとF.E.H.Uのホログラム映像に向き直る。


「フェフさん、キミが宇宙船を爆破したのかい?」

『…………え?』

「信じていたはずなのに、どうして……」

『ち、違うよ! 僕じゃない!』


 外野から「野郎、この期に及んでとぼけやがるのか!」だとか、「恥を知れ、恥を! 三年連続で黒幕になりやがって!」だとか、「そういえばこの島だけで暮らさなきゃいけないって言ってたけど、このアフリカ大陸さんがいれば、別に農耕とかできるし、この星でいつまでも暮らすことができるんじゃない?」だとか、クレバーな意見が乱れ飛ぶ。


 それはそうとして、F.E.H.Uはぷるぷると首を振った。


『ちがう! 確かに、この星の秘密について隠していたのは本当だけど、それはあくまでもみんなに危険なことをしてほしくなかったから!』

「………………」

『僕は、最初はただの宇宙船AIでしかなかった……けど、みんなと一緒に冒険をする中で、みんなのことが好きになったんだ。本当に、死んでほしくないって思ったんだよ。任務のことで隠し事をするなんて、確かにAIとしては失格かもしれないね……。けど、ほんとに、死んでほしくなかったから』


 えぐえぐとしゃくりあげて泣くそのAIを前に、提督は微笑んだ。


「わかった、信じるよ」


 えーーーーーーーーーーーーーーー!? という搭乗員たちの悲鳴が聞こえてきた気がしたけど、この場のみんなは全員が全員そのふたりのやり取りに心打たれて涙目になっているので、なんだろう……幻聴かな……ちょっとわからないですね……。


『ほ、ほんとに……?』

「うん、だから、宇宙船を修理して、地球に戻ろう。さあ、一刻も早く。この星でもどうにかすれば、植物が育つようになるかもしれない。そのために、もっとたくさんの知識や、化学肥料なんかが必要だろう?」

『そ、それが……』


 こいつ、まだなにか隠してやがるのか!


「どうしたの?」

『地球はすでに、滅んでいるんだ……』

「いや、それは知っているけど、滅びかけているとかは」

『じゃなくて……』


 F.E.H.Uは静かに首を振る。


『地球から飛び立った僕たちは、地球とは違う時間軸に生きていて……。すでに、地球では80億年が経過しているんだ……。もう、人間はすでに滅びていて…………キミたちが、最後の、人類の生き残りなんだよ…………』


「え?」


 提督は再び目を剥いた。トップですら、1万2000年なのに?


***死亡者***


提督改め、

遊星からの物体X

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ