12オブザデッド
また一方、宇宙空間でのデスバハムート(真)との戦いも、大詰めを迎えていた。
刃が再生可能な日本刀を携えて、機体に乗った玲は、次から次へと量産型デスバハムートを斬り伏せていた。宇宙居合術を使うそのダークヒーローは、今度こそ、とデスバハムート(真)の姿を捉えた。
「チェストォオオオオオオオオオ!」
斬! と宇宙空間に漢字が浮かび上がった次の瞬間、デスバハムート(真)は見事真っ二つに斬り裂かれた。
宇宙船なろう号の中で歓声があがる。しかし、その直後──。バン! という音を立てて、玲の乗っていた機体はぺしゃんこに潰されてしまった。見やる。そこにはさらに巨大なひとつの影があった。
そう、デスバハムート(SSR)だ。量産型よりも、真よりも、今の時代はSSRが上回る。SSRとついていれば、だいたいなんでもすごく強そうに見えるのだ。
『どうだ! それは一回3000円のガチャを回して、0.0000001%の確率でしかでない特注のデスバハムートだ! 景品表示法にも違反している!』
「そんなこと、胸を張って言うことか!」
ついに提督もタメ語になって叫ぶ。敵対種族に丁寧語でいる必要などないのだ。
しかし、F.E.H.Uが慌てて叫ぶ。
『駄目だ! デスバハムート(SSR)の実力は、さっきのデスバハムート(真)
の一垓倍だよ! 僕らが束になってかかっても、叶わない!』
「一垓かぁ~~~~~!」
外見ほとんど変わってないのになー……と提督はうなだれる。まるで色だけ変えて使い回すRPGのようだ。
「ま、それじゃ、一垓倍の力、見せてもらいますか!」
そう言って出撃していったのは、GODZILLAだ。言って? 言ってってなにをだ……。GODZILLAなのに……。
体長118.5メートル!皮膚は高い柔軟性と耐久力を持ち、自衛隊の最大火力(誘導爆弾)などの直撃を耐える代物!!体内のエネルギー転用による口腔からの熱線放射能力を誇る東映の怪獣!!!(原文ママ)だ。持ち物はその身ひとつで、職業は怪獣。いや、怪獣って職業じゃないでしょ。人間が職業人間です、とか言うかよ……。
とまれ、喜び勇んで出ていったGODZILLAはデスバハムート(SSR)に睨まれただけで蒸発した。あのGODZILLAが!
「では私が」
今度はチクタクマンだ。職業が邪神ニャルラトホテプである。四次元ポケット(中身含め完品)を持っていて、APPは18だ。(てれん先生の筆力に期待します)と書いてあったけど、こんな更新の最中にそんなこと期待するの、ある日空から一兆円ふってこねぇかなーってほざくぐらいの夢物語だよ? ころすぞ!!!!!!!!!!!!! チクタクマンもデスバハムート(SSR)に睨まれて消滅した。ファイアーのにらみつけるは、相手の防御力を一段階下げるだけだってのに!
さらに撤退が間に合わなかったやつらが多くいた。そのひとりが、ウナギが食いたいだ。漁師で、ウナギを炭火で焼くときに使う串を持っている。外見は、ウナギのように細長くはないらしい。持ち物はともかく、なぜ外見までウナギに寄せてきたのか。あと、なんだろう、ウナギ? 食べたかったのかな? ともあれ、彼はウナギを食べられずに宇宙で爆散した。最期の言葉は「蒲焼ー!!!!!」だった。
委員長のからもだ。学級日誌ロボに乗って先ほどまでデスバハムートを相手にしていたが、所詮は相手にしたのはNのデスバハムート。Nっていうのは、SSRのエサにしかならないし、最終的には合成素材よりも手間がかかるので、よく売り飛ばされるのが関の山のカードだ。なにを言っているのかよくわからなくなってきたけど、からはSSRの洗礼を受けて消滅した。みんなの委員長が……(涙)
中井はトナカイだ。ソリを持ったトナカイだ。いや、今や宇宙を駆けるトナカイロボに乗ったトナカイだ。毎年この季節におこなうので、トナカイやサンタは大勢いるんですが、宇宙空間でデスバハムートを蹴散らしたトナカイは、中井が初めてだろう。その栄誉を胸に、トナカイはしかしSSRに砕かれた。みんな何歳までサンタさんを信じてた?(突然の雑談) わたしはよく覚えてないです。でもいたらいいのになあ、って今でも思います。特にオチとかないです。
ぬでぬでぬーでは駄菓子専門職人で、ハンドミキサーを手にした軟体生物的な不定形だ。よくそれに駄菓子職人って属性をつけようと思ったな。SSRもぬでぬでぬーでを前にしてみると、うわっ、なにあれキモ……みたいな顔をしていたけど、精一杯にらみつけてきた。ぬでぬでぬーでの存在はこの世界から消し去られ、三秒後にはもう誰も覚えている人はいなかった。ぬでぬでぬーでって言葉をわたしはきっと、もう一生タイピングすることはないと思います。
黒野 筋肉。その筋肉は見事だった。なんといっても、3メートル超えた筋肉の塊であり、彼は筋肉至上主義教 教祖なのだ。ゾンビで滅ぼされる前の世界においては、教徒は70億人ぐらいいたらしい。かくいうわたしもそのひとりだ。筋肉鍛えないとね……。作家だって身体が資本だからね……。
「くそっ、デスバハムートSSR! お前は、筋肉が、筋肉がないのに……! くそっ、くそっ!」
悔しがりながら、黒野 筋肉はSSRに斬り裂かれた。ロボットに筋肉はないのだ。ちなみに彼の持ち物は、てれん先生の本でできたバーベルだ。
わたしの本というと、12月21日に発売したプラネット・ウィズの上下巻が一番新しいものですね! さらに12月29日の冬コミには、百合同人誌の『負けませんからと言い張る顔のいい女の子を、全力で屈服させる百合のお話』が出ます! そして1月には漫画原作の単行本『父さんな、デスゲーム運営で食っているんだ』の2巻が出ますので、よろしくお願いいたします! なんて自然な宣伝を挟み込ませてくれるんだ、ありがとう、黒野 筋肉! お礼に死ね!!!!
さらにバイきんぐの小峠がデスバハムートSSRに睨まれて、最期の言葉を叫びながら散っていった。「なんて日だ!!!!!!!!!」 わかる。クリスマス24時間更新をしている最中のわたしはその気持ちにあふれている。楽しいからやっているんだよ!!!!!
SSRの強さはまさしく一垓級だ。宇宙開闢に匹敵するほどのエネルギーをもつこの怪物を倒す手段は、いったいどこにあるというのか。提督は歯噛みする。
「このまま、宇宙の塵となるしかないのか……」
と、うめいたその直後、目を見開く。SSRが動かなくなったのだ。
さてはなにか、またよからぬことを企んでいるのか、にゃんにゃんにゃ~ご☆星人……と疑わしい目を向ける提督の前、相手は悲しいほどに動揺していた。
『なななななんあなななななんでにゃ!? どうして!? 動かなく!? 電池が切れた!? 単三電池18垓本で動いているから!? 違う!? じゃあどうして!? あっ、基地からのWi-Fiが……あっ、あっ、あっ……』
遠くで、光が瞬いた。凄まじい衝撃波が、宇宙船なろう号をシェイクする。なにがあったのか、すぐにわかった。
そう……あの、40人の英雄たちが、星くずとなったのだ……。彼らの死は無駄ではない。提督は一秒だけ黙祷を捧げ、そうして倒すべき敵をにらみつける。
敵艦隊の艦長は、文字通り猫なで声をあげた。
『ごろにゃ~~ん☆ にゃんにゃ~ん☆ ぼく、悪い猫じゃないよ、にゃんにゃん☆』
提督は指を前方に突きつけた。
「全軍! 突撃!」
『にゃ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!』
かくして、量産型デスバハムートNだけを所持していた、にゃんにゃんにゃ~ご☆星人は、宇宙船なろう号の一斉攻撃により滅びた。
母星が砕け散り、宇宙にいた船もたった一隻だったので、文字通りの絶滅である。
75兆人のにゃんにゃんにゃ~ご☆星人の命を背負った提督は、されど前を向く。
わたしは決して忘れないだろう。星に散っていった40人の仲間のことを。
自分たちがまた航海を続けられるのは、その仲間たちがいてくれたおかげなのだ、と。
「いこう、次なる星に……」
『……泣かないで、てれんさん』
「泣いて、なんていないよ……」
そうだ、提督は泣いてなんていない。だってクリスマス更新は毎年すごく楽しいし、ちょうどここで折り返しなのだ。12話まできたのだから。
さあ行こう、第三の惑星へ。
しかし、そのとき、宇宙船のどこかで赤い眼をした何者かが産声をあげた。そんな気がしたのだった。




