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四期の手紙  作者: U-yoshi
8/9

 


 お祝いの言葉とほんの少しのメッセージ、連絡先を添えて。

 出来る限りいい女を演出する。多過ぎず少な過ぎず彼が負担に思わない様な手紙で、でも連絡は必ず来ます様に。自分なりの絶妙な手紙を彼に渡した。あの時の状況や感情は覚えている筈が無い。顔から火が出たのだから記憶が飛ぶくらい誰も許してくれるだろう。

 彼からメールが届く様になった。 涙が出る程嬉しかった事は覚えている。  


 それからも二人で会う事は無かったが、皆で集まった翌日などは「楽しかったね」「また飲もうね」とメールを交換した。私の稚拙な片想いに相応しく彼は優しかった。無能な自分に対する恥ずかしさも悔しさも消えず、恋程スパルタなものがこの世にあるだろうかと頭に血が上る。彼の優しさが私を惨めにする。彼に釣り合う女になりたいと私を駆り立てる。  





 彼の隣に居た女性を見掛けなくなっても、彼の隣に座りたがる女性が居なくなる訳では無い。私が彼の隣に座れるのは本当に稀で、今日というチャンスを逃せば次はいつになるのか分からない。そもそも次いつ会えるかも約束し合う仲では無いのだから、今日を逃せばまた指をくわえて待つだけの幼稚で未熟な私に戻ってしまう。今日はずっと彼の隣で彼と沢山お喋りしようと思った。  

 みんなも交えて、というスタイルに変わり無いが、彼の隣に座る事だけでも今の私には嬉しかった。一緒にお酒を飲みながら食事をしたりお喋りをしたり、楽しい時間を過ごした。彼も楽しそうにしている。相変わらず見事な笑顔で私を眩ませる。  


 化粧直しの為席を立ち、暫くして戻ると私が座っていた筈の席に別の女性が座っていた。


「隣いいですか?」と彼に聞く。 彼は私が隣に座る事があまりにも不思議な様子で、私が彼と離れて座る事が当たり前のか様に、全く別の席を私に勧めた。 彼は私に興味が無いのだろう。手紙を渡した事も実は迷惑で、かと言って仲間内で邪険に扱う事も出来ず、仕方なく当たり障りの無いやり取りを買ってくれていたのだ。

 嫌われているのならもう怖がる事は無い。私が彼に片想いをしていようが、してなかろうが、彼は私が嫌いなのだ。では、隣に座っても嫌われる事に変わりは無いだろう。


「隣いいですか?」と、もう一度お願いした。



  私は彼の隣に座りたいのだ。



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