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呪われ少女と嘘の少年  作者: 子羊
第1章 新たな出会いとともに
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運命の出会いではない


「あれ? もうこんな時間だ」


 少年が、時計を目を向けると午後二時。約束の時間まで、あと一時間だということに気がつき表情を歪める。


「うーん、今ちょうどいいところなんだよな」


 サボってしまおうか、なんて考えてしまうぐらい彼は本が好きだ。

 そして、手に持っていた本を放り投げると、慌てて支度を始めるのであった。


 荷物を鞄に詰め込み、髪のセットやらなんやらをしながら忙しなく動き回る。


 彼は、鏡の中のもう一人の自分と目が合い、微笑みを浮かべた。今の生活が楽しくて仕方がない。


 真っ黒な髪の色で、薔薇のような赤い眼が印象的だ。他の人は少し違う容姿、だが彼は容姿を悪く思ったり、悩んだことは一度もない。


 自分を雇ってくれる人がいる、その事を考えただけで胸が踊るのだ。


 準備が終わり、靴を履きに玄関まできた。


「んー、なんだろう?」


 やけに外が騒がしいことに気がつく。玄関の方まできて、ドアを開けるのを戸惑ってしまう。

 喧嘩だったなら巻き込まれるのも時間の無駄だし、急がなければいけないのだ。


 だが、ドアは一つしかない。ここから出かけるしかないのだ。


 覚悟を決め、ドアを開ける。


 すると、いきなり聴き心地の良い罵声が聞こえた。


「いい加減にして! もううんざりよ、お父様」


 怒鳴っているのに、鈴の音のように綺麗な声だと彼は思った。


「うんざりとはなんだ、うんざりとはっ!!」


「お二人とも落ち着いてください。まあまあ、お嬢様とりあえず、お屋敷に戻りましょう」


 ボディーガードだと言われれば、信じてしまうほどの真っ黒なスーツを着た人達や、一昔前の頑固なお父さん? が一人の少女を囲んでいた。


 話を聞いていても、かなりのお嬢様だと分かる。


 ――でもなんで、僕の家の前で?

 はっきり言って迷惑である。



 同じ黒髪として恥ずかしいくらい。彼女の髪は艶があり、美しい。赤い髪飾りがよく映え、どこか浮世離れした印象を受ける。


 ――まるでお人形みたいに、可愛らしい。


 物怖じしなさそうな雰囲気で、堂々とお父様とやらに怒りをあらわにしている。


 少女が動くたびに、揺れる黒髪。

 どこか懐かしさを感じ、記憶の糸が繋がる。


「すいません、通ります」そう言おうとしたのに、口から出たのはまったく違う言葉。


「……雛乃(ひなの)ちゃん?」


 名前を呼ばれた少女は、キョトンとしてから彼を食い入るように、見つめた。

 綺麗な少女に見つめられ、たじろいだ。なにしろ、人に穴が空くほど見つめられたことがないからだ。

 ――ここまで長いのは初めてかも。


「ねぇ、クロ」


「はい。お嬢様、なんでしょうか?」


 すると、お嬢様と呼ばれた少女は、赤い眼の少年を指差してこう言った。


「こ……こいつよ! こいつが私の婚約者なの!!」


「……はい?」


 顔が引きつり、人生で初めてというぐらいの変な声を出してしまう。

 ――えっ、なに言ってるんだろう? この子は。


「ひ、雛乃……ゴホンッ。貴様、それは本当か?」


 一番始めに反応したのは、顔が怖い、恐らくは雛乃の父親だと思われる人が、微かに動揺しているのが、こちらまで伝わってくる。



 雛乃と呼ばれていた少女は、一瞬で婚約者の背後に隠れて、キュッと服の袖を掴んだ。


「え、えっと」


「お願いっ! 助けて、話を合わせるだけでいいから」


 可愛らしくも美しい少女。そして、小声の囁き、トドメの上目遣いに心を奪われてしまう。


「うん、わかったよ。雛乃ちゃん」


 安心させるように、笑いながら小声で返事をする。


「神木様、当主様がお聞きになっておりますが?」


 サングラスに、黒いスーツ。クロと呼ばれていたが、物凄い威圧を感じる。


「はい、そうです。僕が雛乃さんの婚約者です」


「名はなんというか?」


 顔を近づけ、警戒する父様。

 強面な父親にも一切、怯まずに堂々と名前を口にした。


神木 悠冬(かみき ゆうと)と申します」


 ――お父様をつけようと思ったけど、殺されちゃいそうだからやめとこうかなーなんてね。































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