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第6話 スースーします…

スカートの予想以上のスースー具合に困惑するハルト。

そんな彼を容赦ない洗礼が…

 セレスティアから渡された紺色のアンダーウェアは若干サイズが小さいのか、身体のラインがしっかり浮き出るほどピッチリしてしまった。彼女いわく、恐らく胸のサイズが前勇者であるハルカよりも大きいのが原因であろうとのこと。というか女体化の魔術はあなたがかけているんだからその辺の操作はあなたのさじ加減じゃないのかと疑問に思っていると、「ご存知の通りバストは人によって大きさが異なります。私はあくまであなたが女性だったらという仮定を具現化しているに過ぎないので、バストの大きさを変えることはできないのです」と言われてしまった。

 ピチピチのアンダーウェアは若干圧迫感はあるものの、動くにはそれほどの支障はないようだった。俺は諦めて次に手渡されたミニスカートを履かざるをえなかった。


「スースーする……」


 スカートを履いたところで下着自体は完全に隠れている訳じゃない。直接下着が外気に触れるのは男の俺としてはやはりとんでもなく違和感があった。

 というかこれ、どう考えても丈が短くない? こんなのちょっと飛んだり跳ねたりしたらめくれて中身が見えちゃうんじゃないか?


「あの、これってもう少し長くできませんか?」

「どうしてですか? 短い方が可愛いですよ」

「いや、見る分には可愛いかもしれませんが、実際自分で履くとなると……」

「ハルト、勇者とはただ戦う存在ではなく、この国の象徴となる存在なのです。そんな人間が、センスのない服を着て戦うことを、果たして国民はよしとするでしょうか?」


 セレスティアは眼鏡をキラリと光らせて言う。確かにそう問われると、イケてない服を着て戦う勇者も嫌だなとは思える。もやもやっとした気持ちを秘めつつも俺は「よしとはしないかもしれませんけど……」と答えると、彼女はサラッとこう言った。


「そういうことです。ですから、スカートはこの長さがベストです」

「はあ…………って、いやいや! もっともらしいこと言ってますが、よく考えると全然納得いかないんですが!?」

「チッ……」

「あっ、今本音出ましたよね!? 明らかに舌打ちしましたよね!?」

「そ、そんなことはしていません。とにかく私たちには時間がないのです。早く着替えの方をお願いします」


 俺の抗議を他所に、セレスティアは涼しい顔をしている。恐らくいくら文句を言ったところでこの人は一切取り合う気はないんだろうなあ……。

 俺は視線をシャムロックの方へと向ける。彼女は実に楽しそうに俺の様子を眺めている。多分だけど、この子はセレスティア以上に俺をこの状況から助け出してくれることはないんだろうなと思う。それにスカートの丈を長くしようなんて発想は微塵もないだろう。だって実際彼女のスカートの丈は短い。それに胸元も割とざっくり開いていて、彼女の大きな胸の谷間も少し視認できるほどだ。

 日本じゃあんまり露出の多い服を着ている人はいなかったような気がするけど、この世界だとこれぐらいがスタンダードなのだろうか? 王女ですらこの格好なら、勇者代行である俺がそれに倣わないのもおかしい気はする。まあ彼女の格好を基準とするなら俺の格好は決して露出が多い方じゃない。もうこうなったら仕方ない。これ以上恥ずかしい格好をさせられないのなら、今はこれで我慢しよう。うん、きっといつかは慣れるよきっと。全然慣れたくはないのだけどね……。

 俺は銀色のブーツを履き、同じく銀色のアームカバーをつける。こうして見ると、確かにこれは少し勇者らしい格好だ。更にマントを着ければ尚のこと勇ましさが出そうだ。そんなことを考えていると、シャムロックが耳元でこう囁いた。


「ハルト様、よくお似合いです。男の子のあなたには恥ずかしいのかもしれませんが、わたしはとても勇ましくて素敵だと思いますよ」

「あ、ありがとう。でもシャムロック、本当に俺はこれでいいのかな? この格好していると、彼女のことを思い出して君も辛いんじゃない?」

「そうですね。確かに、ハルカ様のことは思い出します。ですが、あなたはあなたです。どんな格好をしていてもハルト様はハルト様ですから。それが分かっているので、わたしはもう辛くなったりしません」


 そう言う彼女は確かに笑っていた。どうやら俺の心配は杞憂だったらしい。

 最後にシャムロックがマントを着けてくれた。これで俺はどこからどう見ても勇者ハルカだ。

 それから俺はセレスティアに連れられて城へと向かった。勇者が死に、今後のことを心配しているであろう王国関係者にまず会うとのことなので、俺は気を引き締めた。見た目は一緒でも中身は別人なのは説明してもらえるんだけろうけど、記憶すらない俺は色々問われても答えようがないのは困ったものだ。


「俺はどう振る舞えばいいのかなあ……」

「あまり気負わずにそのままのあなたで私は大丈夫だと思いますよ。我々に協力して下さるのであれば皆は必ず力を貸してくれますので」


 セレスティアが俺を元気づけるようにそう言った。しかしそのままの俺で本当に大丈夫なのだろうか? いくら顔が似ているとはいっても彼女とは性別も違うし、そもそも俺は彼女に会ったことがないんだ。彼女とあまりにもイメージが違ったら他の人に疑われる様なことになるんじゃないだろうか? 俺が尚不安に思っていると、セレスティアがまた眼鏡を光らせながら言った。


「そんなに心配なら演技指導をつけてさしあげましょうか? まず第一に一人称は『俺』ではなく『私』です。あと歩き方はもう少し可愛らしく。がに股は厳禁です。スキンシップも結構激しい方だったので、嬉しいことがあったら我々に抱きつくぐらいはしてほしいですね」

「だ、抱きつく!? で、できませんよそんなこと!」

「ハルト、何も遠慮することはありません! あなたは骨の髄まで女の子になっていただかなければなりません! ハグはもちろんのこと、着替えやお風呂にいたるまで、あなたは女性陣と行動をともにすることが求められているのです!」

「いやいや! それはいくらなんだってマズいですよ! いくら女体化してたって俺は男ですよ! そんなの他の女性陣が許す訳ありません!」


 そんなの変装して女湯を覗くのと大差ないじゃないか! 女性の裸を見るなんて俺には当然できないし、俺だって女の子になってしまっている自分の裸なんて晒せない! どんな身体になったってそこは最低限の線引きが必要なんじゃないだろうか!?

 というかむしろこの人たちはそれでいいのだろうか? 俺がセレスティアの大きなおっぱいをマジマジ眺めていたら嫌に決まっているし、シャムロックの隣で俺が同じ様に着替えていたら不快に思うに決まっている。


「わたしは別に、ハルト様なら嫌ではありませんが……」

「なんで!?」

「だって、あなたは男性特有のいやらしさというものがありませんから。あなたと話していると、普通の女の子と話しているような気分になります」


 いやらしくないと言ってくれるのは悪い気はしないけれど、それでも女の子と話しているみたいと言われるのは、流石に男らしさの欠片もないと言われているようにも思えるので、ちょっとショックではあるんだけど……。


「ハルト、そろそろ城に着きます。まずは私が皆に状況の説明を行いますので、それまで外で待っていてください」

「あ、はい。……って、城デカッ!?」


 気付くと眼前にはゲームとか漫画で見たような、まさしく中世ヨーロッパに出てきそうな巨大な白い外壁の城が姿を現していた。そのあまりの荘厳さに、俺はしばらく言葉を発することができなかった。


「ふふ、ハルト様、リアクションが本当に女の子みたいですね」

「え!? どの辺が?」

「両手で口元を押さえているところとか、目をキラキラさせて我が城をご覧になっているところとかですかね」


 そう言ってシャムロックが笑う。俺は慌てて手を口元から離した。

 セレスティアが一足先に城の中へと入っていく。いったい彼女は俺のことをどうやって伝えるつもりなのだろうか? いきなり勇者そっくりの人間を見つけたので代役を務めていただくことにしました、と言って、はいそうですかと納得する人間はいまい。逆にこの人は勇者の死がショック過ぎて頭がおかしくなってしまったのか? と思われかねないんじゃないだろうか?

 ああ、そう考えると心配だ。こんな所にいないで、彼女と一緒に行って顔を見てもらった方が早かったんじゃないか? 俺のせいで彼女が変な目で見られるのは、なんか嫌だ。


「どうされました?」


 俺の心を見透かしたかのように、シャムロックが俺に尋ねた。


「いや、セレスティアは皆にちゃんと説明できてるのかと心配になって……」

「ハルト様は本当にお優しいですね」

「そ、そんなことはないよ……。ってかシャムロックは心配じゃないの? というかそもそもシャムロックは王女なんだから君が行った方が良かったんじゃないの?」

「情けない話ですが、わたしはセレスティアより弁が立ちませんので、上手く伝えられないかもしれません。彼女なら、全く問題なく伝えられると思います」


 そう言う彼女の表情からは、セレスティアを心から信頼しているのがよく分かった。それほどあの人は優秀なのだろうか。確かにあのキラリと光る眼鏡は、彼女の知的さを物語っているような気はしたけど、そこまで信頼されているというのは凄いと俺は素直に思った。


「それに、彼女は我がアルカディア王家の第一の忠臣、アークライト家の当主です。いくら今回の件が驚くべきことだったとしても、彼女の言葉を妄言と捉える人間は恐らく……ほとんど、いないでしょう」

「ほとんどってことは、全員じゃないんじゃ……」

「え、えーと、ほら、家臣たちも皆人間ですし、全部をまに受けるのもそれはそれで問題があると思いますし……」


 シャムロックの目が泳ぐ。


「特に、あの方(・・・)は、なかなか信じてくれないでしょうね……」


 苦笑いのシャムロック。結果として俺の心配はより一層深まってしまったのだった……。

続きます!

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