第一話 ~海軍省~
基本不定期
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あらかじめご了承ください。
1945年3月1日 大日本帝国 帝都 東京 海軍省
「それでは本当なのか?ソ連が攻めてくると言うのは・・・」
大臣執務室に悲壮な声が響く。
「確かです。なんせ当のソ連からの亡命者、それも極東軍の参謀職にあった人物の証言ですからね。」
デスクの前に立つ男がそれに答えた。
「このことを知る者は?」
「ここにいる我々と、陸軍の上層部、それに主要閣僚だけです。」
「陛下はご存じないのか?」
「これは衝撃的すぎます。ある程度対策を検討してからご報告申し上げるべきというのが総理の判断です。」
時は昭和二十年三月、レイテ沖海戦に敗れた日本は日に日に敗戦へと突き進んでいた。
すでに艦隊や航空機を動かす燃料や、食料すら満足に無く、後はただ戦争が終わるまで消耗し続ける状況にあった。
そうした苦境に立たされていた中の2月28日、さらなる衝撃が日本を揺るがした。
「ソ連に日ソ中立条約の破棄と満州などへの侵攻の動きあり。」
事の発端は2月20日に満州国に脱出・亡命してきたソ連極東軍の作戦参謀、ヨシフ・ケレンスキー大佐がもたらしたヤルタ密約の内容と侵攻計画の存在である。
「我々も早急に対策を立てなければならないな。」
「ソ連が攻めてくるとなると大陸からの避難民や撤退してきた陸さんの輸送についても検討しなければなりません。」
「幸いにも彼らの極東艦隊はそこまで強力ではありません。ですから航空基地からの攻撃にさえ気をつけていればどうにかなるでしょう。」
当時、ソ連極東艦隊の母港ウラジオストクには、巡洋艦二隻、駆逐艦十一隻、水雷艇二百隻以上と有力な艦艇が多数存在し、そのほか多数の航空機が陸上基地に展開していた。
「しかし潜水艦はどうする? かなりの数が展開しているそうじゃないか。」
水上艦艇の他、八十隻弱の潜水艦が所属しており、開戦となった場合艦隊や輸送船などにとって重大な脅威となる可能性が高かったのである。
「そこは海上護衛総隊になんとかしてもらうしかないな。」
「現状でも敗戦まっしぐらなのに、共産主義者の相手までしたらどうなってしまうのだ・・・。」
室内にいる者の顔には一様に暗い影が落ちていた。