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第四話


 今日は、この前ヘルガさんに頼んだシスの修行をしてもらう日である。……実はあの頼んだ日から1週間は経っているんだが。どうもヘルガさんが今日まで時間が取れなかったらしい。

 まあそれはともかく、訓練とはいえ戦うわけだから多少は暴れても良いような場所にきている。俺は家から出させてもらえないので、メイドさん達がいつも訓練に使ってるらしい中庭を使わせてもらう。


「それではベイセル様。準備はよろしいですか?」


 まずは模擬戦で現在のシスの実力を把握しよう、ということでヘルガさんとシスが向かい合わせになる。そして俺は少し遠くで邪魔にならないように観戦するつもりだ。

 ちなみにヘルガさんの使う武器はナイフである。今は万が一にもシスが死んでしまうといけないので使ってないが。


「僕は問題ありませんよ。シスは大丈夫ですか?」

『ぼく頑張るよご主人様!』


 うにょーんと伸びてやる気を見せるシス。それファイティングポーズなの? 可愛いからいいけど。


「やる気は十分みたいですね。それではヘルガ。お願いします」

「かしこまりました。……では、参ります」


 ヘルガさんの宣言と共に、ヘルガさんの姿がかき消える。……えっ。


『……へ?』

「……少し、やりすぎましたね。魔法が使えるといっても、やはりスライムということですか」


 俺とシスは呆然として動けないまま、ヘルガさんがシスに向かって突きつけている手刀を眺めていた。い、いつの間に。俺達が動かないのを確認して、ヘルガさんは手刀を下ろした。


「す、すごいですねヘルガ。正直何が起こったのか全くわかりませんでしたよ」


 いや、ホント。あれは残像が残るどころのレベルじゃなく、瞬間移動の類だろ絶対。気づいたら終わってたぞ。


「申し訳ありませんベイセル様。やり過ぎてしまいました」

「いえ、これ程の実力差を意識していなかった僕のミスです。ですが、次はもっと手加減してくれますか?」

「はい。ですが、いくら手加減をするとはいえ、実力差がありすぎますので、今は模擬戦よりも前に地力の底上げの為の鍛錬をしましょう」


 そうだな。手加減にも限度があるし、とりあえずステータスの底上げが必要だ。

 ところで、ウチのメイドさんって皆あんなにあり得ない動きが出来るんだろうか。……戦うメイドさん、アリだな。


「そうですね。流石にシスには早過ぎたようです。シス、大丈夫ですか?」

『う、うん。すごいんだねヘルガって。ぼくも頑張らないと!』


 うん、まだビックリしてはいるけど、やる気はまだまだありそうだ。ちょっとだけ、さっきまで伸びてた部分が項垂れたけど。


「しかし、スライムの鍛錬って何をすれば良いんでしょうね」


 走り込みとか、触手を作らせてそれの素振りとか、木に向かってたいあたりとかが妥当か。シスは魔法型だから、魔法の鍛錬もした方がいいかもな。


「とりあえず、シス。今使える魔法を使ってもらってもいいですか?」

「魔法を当てる的は、こちらをお使い下さい」


 ヘルガが言うこちらとは、何故か置いてあった木製の人形だ。中々大きくて、1メートル以上はあると思う。

 それを立たせて、スカートから取り出した道具で人形の足を地面に固定した。……何でそこから取り出したし。中は見えなかったけど。


『頑張るよー。えーい!』


 シスがぴょんぴょん跳ねて、シスの前に光の玉が現れてそれが人形に向かって飛んで行った。光の玉は野球ボールくらいの大きさで、飛んでいくスピードはゆっくりだ。子供がふわりと投げるボールくらい。

 正直、予想よりかなり遅い。それでも威力が高ければまだ良かったんだけど。人形がちょっと揺れる程度の威力だった。


「これは……魔法の鍛錬も必要ですね」

「ベイセル様はスライムを戦闘用に育てるおつもりですか?」

「ええ、そのつもりです」


 いくら弱かろうと、希望はある。それにシスはまだ2歳だからな。弱いのは仕方ない。


「それに、まだ鍛えてもいない内から結論付けるのは早いですよ、ヘルガ」

「……はい」

『ぼくはまだまだ弱いけど、これからもっともっと頑張るよご主人様』


 シスもやる気は十分あるみたいだし、続けていけばその内強くなれるだろう。スキルの多い俺の従魔なんだから。


「シス。今から僕の魔法をかけますから、じっとしていてくださいね」

『わかった!』


 よし。じゃあシスに付与魔法をかけよう。取り敢えず、INT上昇から。


「付与『魔』『威』『増』」


 俺の付与魔法は文字を使って発動させる事が多い。魔力を使って空中に魔法陣を出現させ、そこに魔力で文字を書くスタイルだ。

 このやり方になったのは、この世界の魔法使いは厨二っぽい詠唱だとかを使わないと発動出来ないらしいと知ったからだ。別にその詠唱が悪いとは言わないが、無駄に長くて覚えにくくて意味が通じにくいので色々な欠点がある。それに恥ずかし過ぎて魔法の発動が出来なくなりそうだし。書くだけならまだマシ。

 まあそれでも他のやり方を見つけるまではそれを使わないとダメかと思っていたんだけど、どうも俺にはそのやり方は合わなかったらしい。またしても理由は魔力属性。それとなくヘルガさんに聞いたところ、無属性魔法は発動方法が既存の方法と違うことが多いらしい。

 そんなわけで、前世の知識を頼りに色々な方法を試した結果、今の方法に至ったのである。日本語でもいけるから、色々な文字が思いつくし、文字数も少なくて良い。与属性魔法しか使えないけど。

 と、まあそれは置いといて。無事にシスにINT上昇効果を付与できた。


「シス。もう一度あの人形に光属性魔法で攻撃してください」

『わかったー。えい!』


 もう一度シスに魔法を使ってもらうと、今度はドッジボールくらいの大きさの光の玉が、思いっきり投げたくらいのスピードで飛んでいった。


『おおー!』

「僕が支援すれば、十分な威力にはなるようですね」


 魔法が当たった人形は、固定具を壊して吹っ飛んで行った。……ちょっと威力が上がりすぎな気もするが、まあ良いことだ。おそらく従魔にかけたから、何かしらの補正がかかったんじゃないかと思うが。


「……流石ベイセル様です。あれほどの強化をなされるとは」

「僕の予想以上に強化されていましたけどね。とりあえず目標は僕の支援魔法なしでこの威力を叩き出すことですね。シス、良いですか?」

『分かった!』


 しばらくはシスにはさっきの威力が付与なしでも出せるように特訓してもらおう。その間俺はシスに魔力を渡して長い時間特訓出来るようにしようか。

 そういえば、ヘルガさんは俺が無属性だってことを知っている。以前魔法の練習をしてた時にあっさり見つかった。

 ヘルガさんがお父様やお母様に報告しているのかは分からないが、まあ現状そのことに関しては何も言われてないから問題ないんじゃないかと思ってる。特に態度がおかしいってわけでもないし。

 危機感が薄いって言われると、その通りなんだろうけど。そういうことは何か起こってから考えれば良いんじゃないかな。貴族やってる両親の考えることなんて元一般人の俺にはわからん。

 まあいいや。考えても分からないことは考えない。とりあえずシスに強くなって守ってもらおう。魔物使いなんだし、魔物に頼るのはおかしくないはず。




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