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四十二話

遅くなって申し訳ないです。

 生徒会の面々との話し合いもとりあえず終わって、生徒会室の外で待ってもらっていたヘルガさんと合流した。ミトゥレ様はこれから自主練をするらしく、俺に一声かけてすぐに一人で修練場へ行ってしまった。生徒会の人達はまだ仕事があるからと生徒会室に残っているし、彼はさっさとどこかへ行ってしまったし、俺一人残された感じでちょっと寂しい。前世の学校みたいに、友達と一緒にワイワイ騒ぎながら帰る、なんてことが出来ないからな……友達いないし。


「ベイセル様、こちらを。母君様からのお手紙でございます」

「お母様から?」


 寮に帰ろうかと思っていたところで、ヘルガさんから手紙を手渡された。教科書なんかもそうだったが、紙が結構綺麗なんだよな。異世界といえば紙は希少だというのがよくある話だが、この世界では実のところ前世の頃より多少高いくらいだ。機械による大量生産は出来なくとも、産業用に作られた大型の魔道具が似たような役割を果たしている……らしい。


 さておき、手紙を読もう。歩きながら読むのは疲れそうだったので、生徒会室前からは移動しないで、邪魔にならないところに避けておく。異世界言語習得のスキルのおかげで、下手すると日本語よりもスムーズに読めるから楽で良い。



 親愛なる我が子、ベイセルへ。

 貴方が学園へ通い始めてからもうすぐ一ヶ月になるわね。お友達は出来た? 学園生活は楽しめてる?

 そうそう、王女様との仲はどうかしら? あの人がルベルトと一緒に、貴方と仲良くなるように色々と企んでいたみたいだけど、うまくいった?

 貴方がお家にいなくてお母さんはちょっと寂しいです。



 ……と、要約するとこんな感じか。俺が生まれて初めて親元を離れて、こうして学園で寮暮らしを始めた日からもう一ヶ月近くが経っている。これだけ長い間お母様と離れたのも初めてだし、心配してくれているんだろう。はじめてのおつかい……と言うには随分難易度が高い気がするが、まあ他の五歳児ならともかく俺だからな。



 手紙を軽く流し読みしたところで、生徒会室の扉が開いてお兄様が出てきた。そんなに長いこと突っ立っていたつもりはないが、生徒会の仕事は終わったんだろうか。


「ああ、ベイセル。ちょっといいかい?」


 お兄様が声をかけてきたので、手紙をしまって話を聞く体勢になる。別に深刻な表情をしているというわけではないので、変に身構える必要はないが……お兄様がこうして改まって話すときは、結構大事な話ばかりなんだよな。


「お兄様? どうしたんですか?」

「少し前にお母様から手紙が届いてね……たまにはベイセルを連れて帰ってこい、だそうだよ。ベイセルにも手紙が届いたのかな?」


 そうだよな。俺が家にいたときも、お兄様はたまに家に帰ってくる程度でほとんど寮生活だったらしいし……お母様も寂しいってものだろう。お父様と違って仕事が忙しいわけでもなさそうだったし。


「はい、僕にも手紙がきました。ちょうど今読み終わったところです。帰ってきて欲しそうな書き方だったので、近い内に一度お母様に会いに行こうと思っています」


 ただ、今すぐはちょっとタイミングが悪い。今学園から離れれば試合から逃げたなんて思われかねないし、味方してくれる人も減ってしまうだろう。まだ始まってないし、一日や二日程度なら構わないだろうとは思うけど。


「それなら今日……だと急すぎてベイセルも用意出来ていないだろうから、明日かな。王都にある家は学園に近いから、すぐに行くことは出来るよ」


 そういえば、王都にあるらしい我が家には行ったことなかったな、俺。場所も知らないし、学園のあれこれでちょっと忙しかったし。準備するものはメイドさんに任せるとして、他にやることはミトゥレ様へ報告しておくことくらいか。


「そういえば、クヴィスお兄様は今どこにいるんですか?」


 家に帰るということで思い出したが、もう一人のお兄様は大怪我をしたんだった。あの人が大怪我くらいでどうにかなるとも思えないが、まだ見舞いにも行ってないし、一度は行っておかないと。順調に回復してるという連絡は来てるから、無事であることは間違いないんだけど。


「ああ、兄さんは王都の家で療養中だそうだよ。本人は元気だけど、義姉さんが寝かしつけているらしいね」


 ああ、あの人結構心配性だったっけ。自分の身体とかその辺りに無頓着なあのお兄様とは、割と相性が良いとは思う。気疲れはしてそうだけど。


「でしたらやっぱり、明日にでも家に行った方が良さそうですね。お兄様はどうしますか?」


 家にいるならちょうど良いし、お見舞いも兼ねて明日行こう。果物でも買って行けばいいかな? 学園から家まで多少の距離はあるだろうし、途中で買って行けばいいだろう。


「うーん、僕はまだちょっと忙しいんだけど……いい加減行かなきゃ怒られそうだからね、一緒に行こう。あ、書類はこっちで用意しておいたから、明日学園を休んで家に行くのは問題ないよ」


 ほらこれ、と数枚の紙束を渡される。休みの申請書と外出届などなど。これ全部書くのは大変そうだ……まあこの書類は既にお兄様がほとんど書いてくれているようで問題ないが。事前に準備してあるあたり、元々俺を帰らせる予定だったっぽいな。


「明日行くことになったから、僕はロシェに言ってくるよ。ベイセルも、王女様に言っておいた方が良いんじゃないかい?」

「そうですね。部屋に帰った後にでも言っておきます。明日は一泊しますか?」

「そうだね。時間があるわけじゃないから一日だけになるけど、せっかく帰るんだからね」


 要するに休日が一日増えるってことだな。初めて行く家だから多少は緊張するが、実際に家に行ってやらなきゃいけないことといえば、お母様とお父様への挨拶と、お兄様の見舞いくらいだ。行ったことはなくても我が家なんだし、気を張ることもないだろう。


 それくらいならすぐに終わるだろうから、それで残った時間はゆっくり休むか試合のために鍛えるか……せっかくだし、シスとエインのステータスを弄ってみるか。一ヶ月近く地道に鍛えてたから、たぶん色々出来ると思う。急激に大きく成長すると言い訳するのが大変だから、控えめにするつもりだが。


「明日の朝にベイセルの部屋まで迎えに行くから、早めに起きておいてね」

「分かりました」


 とにかく気楽に行こう、気楽に。明日休みだやったー……なんて。

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