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四十一話

「ベイセル君の要望を受けて、君達二人の試合を生徒会主導で執り行うことになりました」


 相談した日から数日が経ったある日の放課後。俺とミトゥレ様、それとバロールさんが生徒会室に呼び出された。呼び出された理由は当然、試合に関すること。バロールさんは事前に聞いていたようで、あまり驚いておらず、断る素振りも見せなかった。それどころか随分やる気で、俺に挑発的な視線を送り始めた。俺は出来るだけそっちを見ないように話を聞くことにしている。


「試合の概要をまとめた書類を学園長に提出する必要があるので、この場で色々決めていきます」


 司会進行役は副会長さん。いつもと違って丁寧な言葉づかいになっている。生徒会長さんは不干渉を貫くようで、さっきからずっと目を閉じて沈黙している。お兄様は忙しそうに何かの書類を書いていて、他の人達は別の用事で生徒会室にはいないらしい。


「とはいえ、既にこちらである程度のことは既に決めてあるので、これからそれを説明させてもらいます。何かあれば言ってくださいね」


 俺が提案してからまだ一週間も経っていないのに、もう色々と決めてあるらしい。流石は生徒会というべきか。


「まずは要望のあった全校生徒による試合について。これは一定の期間をとって、生徒会主導で生徒の参加を募ります。不参加者は集会場での観戦を推奨……先生方には不測の事態に備えていただきましょう」


 バロールさんが何も言わない辺り、これについては異論はないらしい。これで多数対多数になることは確実だから、後は勝ち方を考えよう。これだけ大事にしておいて、負けるわけにはいかない。……生徒会VSそれに反対する人達って構図を考えていたが、生徒会長さんがこうして沈黙している以上、それは無理そうだ。副会長も不参加予定だし、生徒会の主力二人が不参加ならその構図にはならないだろう。お兄様が味方になるだけでも頼もしいのは間違いないが……まあ、仕方ないか。


「一定の期間というのはどのくらいだ?」

「おおよそ一ヶ月程度を目安にしています。集まりが良ければ早めに終わりますし、逆に悪ければ長引くこともあるでしょう」


 バロールさんは、周りが上級生だらけのこの生徒会室でも敬語を使わないらしい。肝が据わってるのか、怖いもの知らずなのか。あれ、どっちも同じ意味だっけ?


「自主的に勧誘はしてもいいですか?」


 これは出来ればダメであってほしいんだけど。俺にはあまり知り合いがいないから、上手く出来そうにないし。


「あまり積極的でなければ構いません。ただし、参加者は学園の生徒のみとします」


 う、勧誘アリか。やらなきゃ相手に取られそうだし、気合い入れていかないとな。参加者は学園の生徒だけ……ウチのメイドさんを連れていきたかったんだけど無理か。まあ相手もその手段が使えないわけだし、諦めよう。


 ……あれ、これってシスとエインはどうなの? 学園の生徒ではないんだけど、かといって参加させないなんてありえないし。一応聞いておこうか。


「以前彼と戦った時のように、ワイバーンの子供などを連れていっても良いですか?」


 これでダメとか言われるとものすごく困るんだけど。エインとシスが参加不可になると勝ち目はほぼないし。最悪、試合中止に追い込むしか……。


「……バロール君、どうですか?」

「構わない。ただし、貴様だけだ。他の生徒が連れるのは許さん」

「もちろんです」


 ……セーフ。わざわざ「など」なんてつけたのは当然シスを参加させるためだが、それについて触れられなかったということはOKをもらったということで。


「君達二人が中心の試合なので、ベイセル君とバロール君が各チームのリーダーとなってのチーム戦です。他の参加者はどちらかのチームに所属すること、リーダーの指示を聞くことを徹底します。また、試合の勝敗は、リーダーが敗北した時点、または終了予定時間が過ぎた後のチームの残り人数によって決定されます。ただ、流石に上級生達との実力に差がありますので……特別なルールを設定する必要があります」


 早めに相手のリーダーを倒すか、時間切れまで持ち込むか、ってところか。長期戦の方が面白そうではあるんだけど……最初に数で勝ってないと厳しそうだ。一転突破でリーダーのもとまで行く方が分かりやすい……が、リスクも大きい。悩ましいところだな。まともに上級生に当たったりでもしたらあっさり負けるだろうし、特別ルールはありがたい。……そうなると逆に、相手に上級生をぶつけることが出来なくなりそうなのが困りどころだが。


「リーダーへの直接攻撃禁止が妥当でしょう。それと、君達リーダーにはこちらで用意する魔道具を所持してもらいます」


 魔道具ということは、何かしらの効力があると予測出来る。防壁でも張ってくれるのか、それとも観戦用に位置情報とか映像とかが分かるようになっているのか……後でミトゥレ様にでも聞いてみようか。魔道具コレクターな彼女なら何か分かるだろう。


「その魔道具を奪われて相手の拠点に設置されると敗北となります。今はまだ現物がないので、当日までにこちらで用意します」


 魔道具を奪い取ってくるって戦法もある、ということか。直接攻撃じゃないなら上級生でも何とか出来る手段はあるだろう。副会長さんが味方ならその手段で楽にいけそうなんだけどな……。


「第二修練場及び第三修練場が拠点となります。バロール君が第二、ベイセル君が第三修練場を拠点としてください」


 いや、まあ第二だろうと第三だろうと大した違いはないだろうけど。……勝利条件の一つが相手の魔道具を拠点に設置することなわけだから、拠点防衛は大事。俺が負けたら即負けだから俺の護衛も大事。後は……第二修練場と第三修練場を使うということは、範囲が広いということだから、色んな場所の情報を逐一集めなきゃいけないし、リーダーなんだから上手いこと指示もださなきゃいけない。……やること多いなあ。


「試合の期間は一日……朝学園の授業が始まる時間から、放課後まで。授業の一環としてやるわけだから当然ね」


 入学式のときのあれもそれくらいだった(ハズだ)し、そうなるかな。長く続けられるほど気力も体力もないし。


「最後に、報酬について。参加した生徒達者には、勝利したチーム所属ならより多くの、敗北したチーム所属ならある程度の、成績評価点が与えられるでしょう。それから、リーダーの二人。ええと、バロール君が勝てば婚約解消、ベイセル君が勝てばそのまま……本当にこれでいいのね?」

「無論」

「はい」


 そういえば、俺が勝っても何もないってのはかなり不利な話だよな……今更だけどさ。まだ学園生というには曖昧な立場だから成績とかはあまり関係ないし。とはいえ意味がない訳ではなくて、どっちも貴族だから評判とかは普通の人以上に大事なことだ。


 ……それと、負けちゃいけない戦いを経験するのは大事だと思ってる。わざわざ自分からそういう状況を作った上に、味方もたくさんいるけど。


「ミトゥレさんもそれでいい?」

「ええ」


 ここに来てから一切喋ってなかったミトゥレ様が、平坦な声で答えていた。……なんとなく雰囲気が怖かったから今までそっちを見なかったし何も言わなかったけど、やっぱり怒ってるんだろうか。


「それじゃ、今日はこれでおしまい。何か問題や変更点が出たらまた呼ぶから、よろしくね」

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