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三十八話

「貴様、何故またここに来た」


 フラグだったかもしれない。大したことはないだろうとたかをくくっていたというのに、ミトゥレ様の元へ近寄った途端にキツい声を浴びせられた。彼だけでなく、周りの生徒達の大半からも睨まれているようで、肩身が狭い。俺の味方はおそらく隣に座っているミトゥレ様だけだろう。後はどうでもよさそうな数人と、傍観している教師がいるくらい。


「貴様ごときは王女様に相応しくないと言っただろうが!」

「……貴方にそのようなことを言われる筋合いはありません」


 そんな風に軽く聞き流してミトゥレ様の隣に座る。この人に何を言われたところで、ミトゥレ様とは(あまり知られていないだろうが)婚約をしているわけで、それは家の家族と王家の一部が決めたことだ。たかが貴族の子供数人程度が騒いだところで変わるわけがない。……ただ問題は、年齢的に仕方ないとはいえ俺に実績がないから、文句はいくらでも言われそうだという点か。


 実績なんてそう簡単に作れるものでもないからどうしようもないが、いずれ何とかしないといけなくなるだろう。もしくは、お父様やお兄様が色々手を回してくれるか……どちらにせよ、一朝一夕には無理な話だが。


「……あの子、大口叩いた癖に逃げ帰った子よね」

「……イェールオース家も大したことないな。あんな子供しか育てられないなんて」


 こうして自分からこの場に来ておいて何だが、ここまであからさまな嫌悪の視線と陰口を向けられていると流石に堪える。さっきお兄様にああ言われていたから多少は覚悟していたが……これは取りつく島もなさそうだ。当事者のバロールさんはもとより、他の生徒達からの雰囲気が予想以上に悪い。


 それに、小学生くらいの子供にそういう風に言われるのはちょっと傷つく。これが中高生くらいの相手ならこっちから煽ってやることも出来るが、小学生くらいの子供に嫌われるのは俺が悪人になったみたいで悲しくなる。


「ベイセル、大丈夫か?」

「あ、はい。僕自身は特に思うところはありませんが……」


 全く気にしないとまでは言わないが、怒るほどでもへこむほどでもない。一応転生者だし、何よりも心強い味方がいるからな。


 俺よりもむしろ、傍に控えているヘルガさんの方がキレてると思う。表情には出していないが、抱えられてるエインがじたばたもがいてるから、なかなかに力が込められていそうだ。


「ヘルガ、エインが苦しそうですから力を緩めてやってください」

「っ! ……申し訳ございません」

「……きゅぅ」


 慌てて解放されたエインは床にへたりこんでダウンしたみたいだが、一応大丈夫ではありそうだ。エインを優しく抱え上げると俺に顔を擦り付けて甘えてきたので、頭を撫でながら魔力を流してあげた。卵の時からずっと魔力を与えていたせいか、こうして魔力を与えるだけでかなり元気になるようで、今も多少元気になったようだ。


「きゅっ!」

「元気になりましたね。ヘルガ、気を付けてくださいね」

「……申し訳ございません」


 まあちゃんと反省しているようだし、エインの方もちゃんと元気になったし、気絶したりといった問題があるわけではなさそうなので、この話はこれで終わりにする。


「……ふふ、本当に大丈夫そうだな」


 周りを完全無視した俺達のやり取りに、多少は元気を取り戻したみたいで一安心だ。その代わりに周りの目がより一層きつくなったが……まあ大したことじゃない。


「王女様も、何故あんな子供と……」

「きっと何かが……」


 ……しかし、このまましょうもない意地を張ってこの場に居続けたところで、ミトゥレ様に迷惑をかけるだけだな。家の方はこの程度の悪口なら俺が心配することじゃないし。そっちはお父様やお兄様にお任せだ。


「……申し訳ありません、ミトゥレ様。ご迷惑をかけそうなので、やっぱり今日は帰ります」

「すまない、ベイセル」

「いえ、こちらこそすみません」


 どっちにしても迷惑をかけるんだろうけど……こう申し訳なさそうな顔をされると、失敗したなと思う。今日ここに来たこともそうだし、そもそもあの試合で逃げたこともだ。


「また逃げるのか、この負け犬が!」


 後ろから聞こえる罵声に、漫画やアニメの主人公だったらこの挑発に乗って決闘でもするんだろうな、なんて思う。さっきからほとんど同じような悪口しか言われてないこととか、反応が子供っぽくてこうして無視するのが申し訳なくなってくる。


 しかし、どうしたものか……。このまま帰ったとしても状況は悪くなる一方だろうから、何かしら対処をしておかないといけない。一番良いのはもう一回戦って勝つことだけど、流石にそれは厳しすぎる。正直面倒だから放置したいんだが、色々拗れそうなんだよな……。


 第三者からの対応はお兄様に頼むとしても、問題はその程度じゃ止まりそうにないってことだ。仮に大人しくなっても不満は残るし、あるいは隠れて俺に嫌がらせをしてくるようになるかもしれない。怒った子供が相手なんだから、俺が何を話したところで聞きやしないだろうし。


 とりあえず一旦帰ってゆっくり考えたいから、この場は大人しく帰ることにする。やっぱりこういう時はお兄様に相談しに行こう。




「そんなわけでお兄様。ちょっと相談にのってくれませんか?」


 あのまま真っ直ぐお兄様の所に行って、そう声をかけた。まだ授業中だったらしく、前回同様見学という名目でこの場にいる。道中でちょっと良い案も思いついたし、それについても話しておきたい。


「僕は構わないよ。副会長も聞いていくかい?」

「わたしが聞いてもいいのかしら?」

「あ、はい。むしろ聞いていただけた方がありがたいです」


 いつの間にか近くにいた副会長がそう聞いてきた。どうせ後で話すつもりだったし、一緒に聞いてもらったほうが都合が良い。


「何とかして現状を変えたいとは思っているんです。今のままだと、どちらにとっても良くないと思うので」

「そうだね。今ならまだ子供のいざこざの範疇だけど、これが悪化すると厄介だ」

「どっちも貴族なのが尚更よねぇ。それに下手に位が高いのも面倒事の原因だし」


 細かい説明をしなくても既に理解している辺り、流石だ。


「言葉で説得したところで、どうにもならないような気がするんです。とはいえ、僕一人で戦っても勝てる気はしません」

「貴方はそんなに弱くないと思うんだけどね。……わたしから一本とったわけだし」

「そう言ってくれるのはありがたいんですけど、僕は一人ではかなり弱い方ですから」


 いや本当に。使える魔法やステータスからして支援型だし、試合みたいに向かい合って始めるとか不利にもほどがある。副会長から箱を取った時だって、あの女の子が協力してくれたからこそだし。……そういえばあの子、この学園に通ってからまだ見てないけど、元気かな?


「なので、いっそのこと全員を巻き込んでしまおうかと」

「……まさか」

「相変わらず、ベイセルは突拍子もないことを思いつくね」


 副会長は恐ろしいものを見たかのような表情になり、お兄様はいつもの苦笑を浮かべていた。……どっちも酷くないかな?


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― 新着の感想 ―
[一言] 調子こいてでけえ口叩いたガキが無様に負けた挙句逃げるんだから負け犬よ(笑)しかも家批判されても何もできない腑抜け(笑)
2020/07/27 00:55 退会済み
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