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第二話



 というわけで、お母様の部屋である。入ったらお母様に捕まえられて膝の上に乗せられてるんだけど、いつものことである。頭に大きくて柔らかいものが当たっている感触も、いつものことである。いつものことなので、気にしてはいけないのだ。

 お母様は三人も子供を生んでいるとは思えないほど若く綺麗だ。薄水色のふわっとした髪と儚げな雰囲気が合わさった、見たことないレベルの美人さんである。母親が美人、これもテンプレである。

 俺、この世界に生まれてから結構な頻度でテンプレって言ってるな。まあ必ずしも俺の知ってる展開になる訳じゃないのは分かってるけど、そうなる可能性が高いから用心する、くらいに考えている。見知らぬ世界で知ってることを見つけてテンションが上がっている、とも言う。


「ベイセル、どうしたの? 先程からぼんやりしているようだけれど」

「あ、ごめんなさいお母様。ちょっと考え事をしていまして」

「考え事は後にしなさい。今回貴方を呼んだのはコレを選んでもらうためよ」


 お母様がコレと言って取り出したのは、幾つかの箱だった。……中身、何だろ? 見た感じかなり大きいし、時々動いてるっぽいんだよな。ペットか何かだと思いたい。鑑定すれば分かるか?



名前:木製の箱

木で出来た箱。中に何かの生き物が入っている。



 これだけしか分からなかった。おい鑑定! お前ランクSだろうがしっかりしろ。……もっとじっくり注視すれば何か分かるだろうけど、中々難しいんだよな。


「えっと……それは何ですか?」

「スライムよ。貴族なら一人一匹は育てているものなの」


 おお、スライム!

 前世で有名な雫型か、それともべちゃっとした液体型かは分からないけど、俺はどっちも好きだ。人型になってくれればなお良い。スライムってひんやりしてて柔らかいイメージだから、是非とも触ってみたい。

 あ、貴族一人に一匹だって言ってたのは、おそらくアレだ。スライムには、トイレとか、風呂とか、香水とか、そういう役割があるから、そのためだろう。俺もトイレやら風呂やらでお世話になっていました。いつもありがとうございます。その時は直接スライムは見れなかったから、どんな姿形なのかは分からないけど。


 ところで、気になってたんだけど。


「スライム……って、魔物じゃないんですか?」

「スライムは魔物ではないわ。昔は見向きもされていなかった弱い種族だったけど、最近では貴族達のペットになっているわね」


 え、魔物じゃないの? だったら、魔物使い用のスキルとかは意味ないのか? それはちょっと困るな。スライム好きだし、スキルで育てて最強目指す、とかしたかったのに。


「参考になるかは分からないけれど、この子が私が昔から育てているスライムよ」


 そう言ったお母様の服の中からピンクのスライムが出てきた。……服の中から?

 へ、変t……いや、スライムだしな。香水感覚となればおかしくはない、かもしれない。

 お母様の育てているスライムは淡いピンク色の、丸っこいスライムだ。残念ながら顔とかはないから表情を読めないが、可愛いからOKだ! 可愛いは正義!


『初めまして、ご子息様。ミルンでございます。よろしくお願いしますね』


 えっ、ちょっ!? す、スライムが、喋ってる!? ……もしかして、異世界言語スキルって、人以外にも有効だったり?

 する、んだろうな。言葉が理解出来るし。お母様は理解してなさそうだし。確かに異世界の言語ではあるわけだし。

 そうなると、色々と困ったことになるかもしれない。戦闘する時とか、魔物の悲鳴が言葉として分かるわけだし。……今は考えない方がいいかな。どうせ解決しそうにないし、気が滅入るだけだ。

 それはともかく。せっかくなので、じっくり見るついでに鑑定をしてみた。むしろ鑑定がメイン。



 名前:ミルン

 種族:ピンクポイズンスライム

 性別:女 

 年齢:36

 職業:ペット(魔物)

 状態:魅了


 能力

 HP:C

 MP:E

 STR:E

 VIT:E

 INT:E

 AGI:E

 DEX:C

 LUC:C


 魔力属性:魅


 スキル

 異常耐性:A

 病気耐性:A

 悪食:S

 回復付与:B



 ……ええっと。色々と言いたいことはあるけど。とりあえず、スライムは魔物らしい。やったね、俺のスキルは有効だよ!

 いや、おかしいだろ。ステータスが軒並み低いのは戦闘とかをしてないからだと思うけど、スキルが。何だよ悪食Sって。いや、汗とか汚れとかその他諸々を餌にしてるわけだから分からないでもないけど、いくらなんでもそれは。病気や異常にまで相当な耐性がついてるし。

 ……まあ、うん。考えない方向でいこう。


「ええと、その箱の中にスライムが入っているのですか?」

「そうよ。箱の中身は見せられないから、気に入った箱を手に取りなさい」

「中身は見せていただけないのですか?」

「この箱の中のスライムは初めて見た人に懐くように躾けられているの。だから、開ける箱は一つだけよ」


 それって刷り込みなんじゃ……っていうか、お母様のスライムの状態異常に魅了ついてたし、惚れ薬的な効果で懐いているんじゃないの?

 ……ま、まあいい。鑑定が使える俺ならそういうことも分かるわけだし、状態異常を治すようなアイテムもあるはず。気になるなら何とかする手段を見つければいいわけだし、その辺のことはひとまず置いておこう。まずは箱だ。

 箱の数は三つ、真っ白の箱と、真っ黒の箱と、茶色の木箱だ。とりあえずじっと箱を見つめながら鑑定をしてみる。まずは白からだ。



 名前:不明

 種族:ホワイトスライム

 性別:女

 年齢:2

 職業:魔物

 状態:魅了


 能力

 HP:E

 MP:F

 STR:F

 VIT:F

 INT:E

 AGI:F

 DEX:D

 LUC:D


 魔力属性:光


 スキル

 異常耐性:C

 病気耐性:C

 悪食:C

 回復付与:C



 流石スライムというべきか、ステータスが低い。ついてるスキルは見なかったことにする。見た感じ、白は魔法型かな。次は黒。



 名前:不明

 種族:ブラックスライム

 性別:男

 年齢:2

 職業:魔物

 状態:魅了


 能力

 HP:E

 MP:F

 STR:E

 VIT:F

 INT:F

 AGI:F

 DEX:D

 LUC:D


 魔力属性:闇


 スキル

 異常耐性:B

 病気耐性:B

 怪我耐性:D

 悪食:B

 回復付与:E



 黒は物理型、かな。ちょっとだけスキルも違う。最後に木箱。



 名前:不明

 種族:ピンクスライム

 性別:男

 年齢:2

 職業:魔物

 状態:魅了


 能力

 HP:E

 MP:F

 STR:F

 VIT:F

 INT:F

 AGI:E

 DEX:D

 LUC:D


 魔力属性:魅


 スキル

 異常耐性:C

 病気耐性:C

 悪食:C

 回復付与:D



 どれもそんなに違いはないかな。スライムの色と、魔法型、攻撃型、スピード型くらいか。こういうのは一匹だけ超レアな奴がいるかと思ったんだけど……流石に夢見すぎか。

 今後魔物使いになる上での最初の魔物になるわけだからな。じっくり考えて……。


「では、僕はこの白い箱を選びます」


 いや、うん。魔法型だったからさ。俺攻撃魔法使えないし。たぶん俺が今後戦闘する時には、護衛の人が付くだろうしな。これでも一応貴族だから。なので、遠距離からの支援が出来る魔法型の方が良いはずだ。……べ、別に性別は関係ないぞ?


「白で良いのね? 分かったわ、では残りは下げなさい」

「かしこまりました。失礼します」


 おおう、メイドさん。この部屋に来てすぐにどこかへ行ったはずなのに、いつの間に……。いきなり現れて、箱を持って出て行ったぞ。あれはメイド長さんだな。よく「メイドの嗜みです」って言う人。クール美人である。胸はやや控えめ。名前は教えてくれなかったから知らない。呼ぶときはメイド長だ。


「では、ベイセル。箱を開けなさい」

「はい」


 一つだけ残った真っ白な箱に手をかけ、力を入れる。俺の初めてのパートナーとの出会いだ。大切にしないとな。


「では、開けます」



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