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十七話

「ご馳走さまでした」


 ちゃんと全部食べ終わって挨拶をする。ゆっくり食べていたので多少時間は経ったが、まだまだ十分時間には余裕があるので大丈夫だろう。


「それと、先程は申し訳ありませんでしたミトゥレ様」


 頭を下げて先程の件について謝る。ついやらかしてしまったが、王女様にあの態度はダメだろう。いくらミトゥレ様が気安い方で、俺が五歳児だったとしても。


「いや、私の方こそすまなかった。食事の途中であのようなことをするなど……」


 しかも逆に謝られる始末。簡単にそういうことが出来るんだから、すごいと思う。王族っぽくないとも思うけど。貴族の俺ですら簡単に頭を下げるなとか言われてたりするのに。


「……とりあえず、集会場に行きましょうか」


 ともかく、このまま謝り続けるといつまでも続きそうだし、さっさと話題を変えよう。ええと、話題話題……。


「そういえば、学園長ってどんな方なんでしょうね? 詳しい姿はあまり知られてないそうですが」


 大会優勝者らしくて色々噂はあるけど、どうも詳しい姿は色んな説があるらしい。大会で姿を見せてるはずなのに、とも思うがまあ所詮噂だし。


「私は直接会ったことがあるぞ? 中々愉快な女性だったな」

「会ったことがあるんですか?」

「ああ。この後の式で出会えるそうだから、楽しみにしているといい。きっと驚く」


 愉快なって言われるような人に会うのはちょっと気が引けるんだが。ミトゥレ様が言うんだし、楽しみにしていようと思う。



「こんにちは、新入生君達。私が学園長をやってるシンシアだよ、よろしくね」


 壇上に立って話し始めた学園長は、予想以上に若々しい見た目をしていた。というかむしろ幼かった。具体的には俺と同じくらいの容姿……これが噂のロリババアってやつか。ミトゥレ様が言った通り、これは確かに驚く。そして、ファンタジー世界でのロリババアといえば基本的に最強格。ここの学園長も歴代最高の英雄とか言われているらしいし、そういうことなんだろう。


「……シス、起きましたか?」


 服の中でもぞもぞとしだしたので、周りに気付かれないように小声で聞く。ちなみにだが、俺は特例で入学することになるのでミトゥレ様を含めた今年入学の生徒とは離れたところで一人座っている。一人離れたぼっち席だから、少しもぞもぞする程度では気付かれない、はず。


『……ぷは。ご主人様、おはよー』

「おはようございます。起きて早々すみませんが、しばらくは服の中に入っていてください」


 あまり外に出られると流石に見つかるだろうし。話を聞いてなかったからって怒られるのも嫌だし。


『うん、分かった。じゃあ、もうちょっと眠ってるね』


 シスはまだ眠かったらしく、すぐに服の中に潜り込んで眠ってしまった。そういえば、シスが寝始めたのはまだ一時間前くらいだったか。


「あ、そうそう。毎年のことなんだけど、新入生君達のために歓迎会を開いてるんだ。もちろん今年もね」


 あれ、話飛んだ? そういえば、いくつか聞き流したような気もする。しかし、歓迎会か……。正直言って、嫌な予感しかしない。新入生の人達は期待の表情をしてるけど。


「そんなわけで、みんな! 歓迎会を始めるよ!」


 学園長のその言葉と同時に、後ろに座っていた生徒達が全員一斉に立ち上がった。前世の学生より揃ってるよ、あれ。そしてその中から数人が前に歩き出して、壇上の学園長の前に並んだ。うん、こうして見ると学園長の小ささがよく目立つ。その数人の生徒の中にお兄様がいるのが見える。そして、並んだ人達の中から一人が、一歩前に出て話し始めた。


「私はこの学園の生徒会長をやっている、オルムという。これより、新入生達の歓迎会を執り行う」


 生徒会長らしいその男は、随分と厳格そうに見える。ちょっと遠くて顔は見えないが、渋い声と雰囲気からして厳つい顔をしてそうだ。


「ルールは簡単だ。諸君ら新入生は、我々から逃げつつ学園内のどこかに隠されている箱を八つ、学園長の元まで持ってくる。それだけだ」


 嫌な予感正解だな、これ。どうせ攻撃あり、というか積極的に攻撃してくるんだろう。お兄様も関与してそうだし、学園内の案内とか先輩達の実力を示すとか、そういう目的もあるんだろう。あの人はそういうの好きだしな。


「魔法の使用は自由だ。学園長が建物の保護をしておられるから、いくら攻撃してもまず問題ない。……ああ、それと、見つけた箱を学園長に直接手渡した者には、学園長からの報酬がいただける」

「あ、欲しいものを言ってくれれば大抵は用意出来るからね!」


 どうせ強制参加なんだろうな。先輩達の攻撃から逃げ続けるとか俺には無理だろうし、早めにリタイアでもしようか。でもどうせ、許可してくれなさそうな気がする。痛いのは


「では、歓迎会を開始する。『テ・メル・ゼノ』」


 いきなり詠唱を始めた生徒会長の正面に、魔方陣が展開され始めた。魔方陣構築型とはまた珍しい。普通に魔法を使っても魔方陣が出現することはないが、意図的に出現させることも出来る。展開が遅く、制御も相当難しいらしいから、使う人はほとんどいないとか。その分威力や範囲が大きく、詠唱を中断しても途中から再開できる、というメリットもある。


「『レジエ・メディエ』」


 っていうか、そんなことを考えてる暇はないんだって! 何かしらの攻撃魔法が飛んでくる! 近くにミトゥレ様みたいな強い人はいないから盾には出来ないし、自力で何とかするなんてもっと無理だし! ええい仕方ない、シスにお願いしよう。


「すみませんシス、守ってください! 付与『魔』『威』『滅』、付与『魔』『耐』『増』『増』!」

『……ふぇ、ええっ!? ご、ご主人様!?』


 寝ていたシスを急いで起こし、付与魔法で強化して俺を包んでもらう。誰もこっちを見る余裕はない、と思っておこう。あるいは、何かしらの魔導具だとでも思われれば良い。寝ぼけながらも行動してくれたシスには感謝だ。後で何かしてあげよう。


「『ラ・メルテ』!」


 魔方陣からバレーボールくらいの大きさの岩が相当数ものすごい勢いで飛びだしてきた。新入生達の大半は大慌てで逃げ出したり魔法で対処しようとしているのが見える。


『ぅ、ぅうう! ご主人様は絶対に守るんだから!』

「付与『体』『常』『回』!」


 俺の方は、辛うじてシスが頑張ってくれてるお陰で無事だ。俺も追加で体力の自動回復を真似た魔法でシスをサポートする。何度かでかい塊がぶつかってくる度に聞こえる大きな音とシスの耐える声、それと付与魔法で結構魔力を使っていることもあって、俺自身もかなり消耗している。


「『ゾ・イルラ・イグノ』!」


 新入生達の集団の中からミトゥレ様の声が聞こえたかと思うと、そこからものすごい勢いで火柱が立ち上った。更にその火柱はミトゥレ様の手によって巧みに操られ、俺達の方に近づいてくる岩の塊を次々と弾き返して生徒会長の方に飛ばしていた。


「……さ、流石ミトゥレ様。しかし、結構無事な人多いですね」


 あんな魔法をいきなりぶちかまされたにも拘らず、倒れてる人はほとんどいない。残念ながら生徒会長も岩の塊を魔方陣であっさり防いでいたから、平然と立っているが。ちなみに倒れてる人達は、先生方が回収して端の方で休ませていた。俺も倒れておけば良かったかもしれない。


『ふへぇ……ご主人様ぁ、もう無理ぃ』

「ありがとうございました、シス。ゆっくりと休んでいてください」

『うん。……でも、またこんなことがあった時のために、起きてる』

「……ありがとうございます」


 シスには本当に感謝だ。ただ、近い内に卵の子を早めに何とかした方が良いかもしれない。今のままだとシス一人の負担が大きすぎるし。


「ここは狭すぎる! 皆、急いでここから出るぞ!」


 ミトゥレ様の良く通る声に従って、新入生達の多くが出口に走り出した。ミトゥレ様や他の強そうな人達が数人、殿として残っているうえ、誰かが防御魔法を使ったらしく、団体で出口に向かっているのに被害は結構少なそうだ。


「俺も急いで逃げないと。痛いのは嫌だし、リタイアは最終手段ってことで」


 ミトゥレ様がここに残るのはちょっと心配でもあるけど……。


「せめてこれだけはやっておきましょう。付与『全』『増』。うっ……キツ」


 ミトゥレ様に俺が今出来る最高の付与魔法をかけておく。するとミトゥレ様が俺の方に視線を向けてウインクをしてきた。……だから何で分かったし。ミトゥレ様に一礼だけして、俺も集会場から逃げ出した。

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