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第十二話

毎回言ってますが、遅れて申し訳ありません。

 あの後。少なくともミトゥレ様の方は落ち着いたようで、俺達に「勝手な行動を取ってすまない」と謝ってくれた。状況を見る限り俺の為に怒ってくれたんだろうと思うので、あっさり笑って許したが。その時のキョトンとした顔のミトゥレ様はとても可愛かった。

 ちなみに、ヴァルスト先輩の方は怒り心頭の様子だったが、おっさん教師に片手で担ぎ上げられて連れて行かれた。

 それはともかく、現在。アルガン先輩とは別れて、ミトゥレ様と二人で寮に戻る道を歩いている。まだ案内する場所はあったらしいんだけど、お兄様からは修練場だけは案内するように、と言われたらしいので、目的は一応果たしたということで、今日はとりあえず帰らせてもらうことにした。……というか、その言い方からしてさっきのバトル展開はお兄様のせいなんじゃないだろうか。あり得そうだけど、疑っても仕方ない話だから気にしないようにしておこう。


「しかし、流石ミトゥレ様でしたね。あっさりと第五階級まで使えるとは、凄いです」


 今日見た魔法はどれもレベルが高く、短いものばかりだったから本当に驚いた。以前読んだ魔法関連の本では、もっと長ったらしい詠唱文だった気がするんだけど。

 例えば今日ミトゥレ様が使った火属性刀剣系魔法で言うと、『ゾ・ル・クノ・ゾンテ・ミノ・ラ・イグノ』。七節の魔法で、各節は火属性、第一階級、魔力消費小、範囲小、発生位置近、調整、刀剣系、といった意味になる。しかしミトゥレ様が使ったのは、『ゾ・イルラ・イグノ』。たったの三節だ。しかも第五階級。それはつまり、難易度の高い各種調整を自力で完璧に行えるということになる。高い魔力で強引に使ったか、精度の高い魔力操作で上手に使ったかは分からないが、どちらにせよかなりの実力なのは確かである。

 ちなみに無属性の人が独自の魔法しか使えない理由は、一節が存在しないからである。通常使われている魔法には、属性を決める詠唱は必須なので、そもそも発動しないという訳だ。


「いや、私はまだまだだ。あの教師に簡単に止められてしまったからな」

「それは……流石にこの学園の教師、といったところなのでしょう。それに、全力ではなかったですよね?」

「む……まあ、そうだが」


 苦い顔をしながらも肯定ではあるらしい。あれで全力じゃないとか、ヤンチャなお姫様の度を過ぎてると思うんだけどな。

 まあ、あの時のミトゥレ様の態度はまだまだ全然余裕があったからな。それに、多分だけどあの教師の魔法も無理矢理壊せたと思う。

 しかし、将来的にはシスにもあれくらいは軽く出来るようになってほしいな。無双は出来なくても強キャラ程度にはなりたいし。俺もミトゥレ様も立場的にこの前の侵入者騒ぎのようなことがいつ起きてもおかしくないからな。

 ただ、メイドさん達が一緒に来れなかったから、訓練してくれる相手がいないのが問題だが。いっそミトゥレ様にでも頼んでみるか? シスとも仲がいいし、あれだけの強さなんだし。


「ベイセル殿もそのくらいは出来ると思うのだが」

「いや、無理ですよ。僕を何だと思っているんですか」


 何故かミトゥレ様からの俺の評価が妙に高い気がするんだけど。あんな人達と戦ったら一瞬でダウンするわ。俺の貧弱さをなめんな。


「だが、あの場で咄嗟に魔法を使っただろう? 私には分からない魔法だったが、あのようなことが出来るのだから、十分な実力があるはずだ」

「あー……」


 何で気づいちゃってるんだよ。いや、隠そうとしたわけじゃないからおかしくはないんだけどさ。でも普通気づかないだろ、見た目では分からない類だし。

 確かに俺の力である付与魔法は色んなことに応用が出来て便利ではあるが、使う俺がダメだし。そもそも魔法を使う心構えはしてたし、横から介入しただけだしな。


「いえ、そうだったとしても効果はなかったようですし」

「効果がなかったというわけではないだろう。事実、あの男の魔法の威力が激減したわけだからな」


 それはまあ、そういう魔法なんだから威力が激減してもらわないと困るんだけど。無属性魔法だから皆耐性がないみたいで、こういった能力変化系魔法は特に効果が高い。逆に俺に使っても効果はほぼない。火魔法を使っても使用者は熱くない、みたいな感じだ。そのせいで自分に付与魔法を使っても大して意味はないので、自力で戦えない理由が増えたわけである。


「それはそうですけど……僕はあの先生と違って直接止められませんでしたからね」

「ふむ……つまり、私たち二人とも、目標が出来たわけだな」

「目標……確かに、そうですね」


 あの教師に勝つことを目標に、ってとこか。今後魔物使いとしてある程度は強くなっておきたいところではあるし、シスや今後仲間になるであろう魔物達と一緒にそれが出来るくらいになれればいいかな。あの教師の実力がどれくらいなのかは分からないけど、相当な実力はあるだろうし。

 目標と言えば、お母様にもかかったあの魔の呪いについての情報も欲しい。あの時は天使さんからもらったアイテムのおかげでなんとかなったが、毎回それに頼るわけにもいかないだろう。何とか自力で解呪する必要がある。まあそれは今すぐでなくてもいいだろう。それに、お母様が呪われたわけだから、お兄様やお父様が調べてないはずもない。今は俺自身(従魔含む)が強くなることを優先しようと思っている。


「でしたら、これからしばらく一緒に訓練してくれませんか?」


 ちょうどいいし、この機会に訓練相手を頼もう。シスを戦わせることについては、訓練を始めてからってことで。今言って断られても困るからな。


「こちらこそ頼みたかったところだ。これからよろしく頼むぞ」

「はい、よろしくお願いします。ミトゥレ様」


 あっさり許可をもらえて、何というか拍子抜けである。いや、全然良いんだけどさ。


「そろそろ寮も見えてきたな。では、部屋に戻ったら早速訓練をしようか。何と言ってもまずは体力をつけなくてはな」

「えっと……あ、すみませんミトゥレ様。これからお兄様にちょっと聞きたいことがあるので、先に部屋に戻ってもらってもよろしいですか?」

「む、それなら仕方ないな。では私は先に戻っておくことにしよう」


 訓練を頼む相手、間違えたかな……いや、体力をつけなきゃいけないのは分かってるんだけど、何というかスパルタな雰囲気がちょっと。あと、妙にスッキリした笑顔が怖いです。

 咄嗟に出た言い訳だが、お兄様に聞きたいことがあるのは本当だ。逃げるための口実だということも間違ってないんだけど。


「ではミトゥレ様。また後で」

「うむ、またな」



 寮近くでミトゥレ様を見送って、一息つく。いくらミトゥレ様が接しやすい方だといっても、王族であることは間違いない。所詮貴族の子供でしかない俺はどうしても気を遣わないといけないので、気疲れもするわけである。別に嫌だってわけじゃないんだけどさ。


「シス、起きていますか?」

『ふにゅ……ごしゅじんさま?』


 シスに呼びかけると、袖口からにゅるっと出てきて俺の腕の中に収まった。今日一日ずっと俺の服の中にいてもらってたんだけど、いつの間にか寝てしまっていたらしい。相変わらず可愛い子である。


「ミトゥレ様の戦ってるところは見ていましたか?」

『見てたよー、お姉さますごかった!』

「なら話は早いですね。シスにはあれくらいが出来るようになってもらいたいんです」


 まあ当然いきなりあのレベルっていうのは無理だろうし、段階的にいくつもりだ。幸い俺もシスも若い……というか幼いので、成長の余地はいくらでもあるだろうし。


『うん、頑張るよ!』


 うにょーんと身体を伸ばしてそう答えてくれた。やる気十分なのは良いことだ。種族の限界のような類は俺のスキルで何とか出来るだろうし、これからはミトゥレ様と訓練出来るわけだから環境も整ってると言えるだろう。

 ……そういえば、俺の持ってる各種スキルはまだ使ったことがなかったな。


「シス。少しじっとしててくださいね」

『うん!』


 ちょうど周りに人もいないし、シスに対して俺のスキルを試してみよう。常に鑑定をしていれば異常があった時に分かるだろうし、まずは鑑定から。


 名前:シス

 種族:ホワイトスライム

 性別:女

 年齢:2

 職業:従魔(主:ベイセル・イェールオース)

 状態:通常

 忠誠:84/100


 能力

 HP:E

 MP:D

 STR:F

 VIT:F

 INT:D

 AGI:E

 DEX:D

 LUC:B


 魔力属性:光


 スキル

 病気耐性:B

 異常耐性:B

 悪食:C

 回復付与:C

 光属性魔法:E

 幸運:C


 SP:42


 前に鑑定した時の数値を全然覚えてないから何とも言えないけど、何となく上がってる気がする。とりあえず状態が通常であることが分かったので、スキルを使ってみよう。女神様からもらった魔物使い関連のスキルは五つ。その中で一番それっぽい育成(従魔)を使ってみよう。

 使い方は簡単、従魔を注視するだけ。スキルの使い方が分かるのは便利で良いな。本来なら順番が逆なんだろうけど、転生特典だからな。ありがたく使わせてもらおう。

 で、だ。スキルを使ってみた結果、いくつか分かったことがある。まず一つ目、このスキルは従魔のステータス振り分けが出来るスキルらしい。SPを使って能力アップが出来るというもので、まあ予想していた範囲内の効果である。スキル習得がないのはちょっと意外だが。

 次に、このスキルは複数のスキルを併用しなければならないことだ。俺はどうやら最低限必要なものは持っているらしく、その中でも一番必要なのは鑑定。その理由は、鑑定で分かるステータス画面がどうしても必要だからだ。育成スキルが鑑定と同じ使い方なのもそのせいなんだろう。


「シス。これから強くなるために訓練をしていくのですが……貴女はどのように強くなりたいですか?」


 試しに能力を一つ上げてみようと思い、シスに聞いてみる。せっかく意思疎通が出来るんだから、望むように成長させた方がいいだろう。遠回しな聞き方をしたのは、今後の育成方針も決めておきたいからだ。能力値云々は分からないだろうし、強い魔法が使いたいとか、速く動きたいとか、そんな軽い感じでいい。


『うーん……ご主人様を護れるようになりたい!』

「頼もしいことを言ってくれますね。ではシス。護るための手段として、どのような方法を取りたいですか?」


 シスの言葉に思わず笑みをこぼしつつ、聞きたいことを少し掘り下げて聞く。今後のステ振りのためにも、まず聞きたいのは戦い方だからな。俺としては後方からの魔法でドカン、的なことをしてほしいところなんだけど。


『身体を張ってでもご主人様を護るの!』

「……そうですか。ですがそれは、貴女の適正ではありませんから、苦労しますよ?」

『それでもいいの! ご主人様はぼくが護るんだから!』


 どことなくキリッとした雰囲気でそう言うシスを見て、この子が最初の従魔で良かったと思う。

 しかし、身体を張ってでも、か。そうなると耐久魔法型、になるのか? 防御系魔法を中心に、ダメージを受けると回復魔法、って感じか。……あれ、意外といけそう。スライムなんだし、将来的には物理ダメージ軽減とかそういうスキルも付くだろうし。必要なのは豊富な体力と魔力、防御系魔法と回復系魔法。

 よし、ならSPを使って上げるステータスはHPとVITだな。MPやINTを上げるにはSPが足りないけど、HPとVITならFからEで10、EからDで30使うからギリギリ足りる。早速ポチポチッとな。


『んぅ……っ!』


 ステータスを上昇させた瞬間、シスがぷるぷる震えだした。もしかして、やらかしたか!?


「シス、大丈夫ですか!?」

『だい、じょうぶだよ。ちょっと身体が熱いだけだから……』


 予想してなかった反応に慌ててしまう。単純にステータスを上げるだけだと思っていたが、よく考えたらいきなり強くなるのに副作用がないわけもない。慌てて鑑定でステータスを見てみるも、状態は通常のまま。

 原因がわからず、そのままシスがぷるぷる震えたままなのを俺は何も出来ずに見守って一分ほどが経ち、ようやく震えが収まった。


「シス、大丈夫ですか……?」

『……うん。むしろ調子が良いくらいだよ、ご主人様』

「し、シス……? その口調は……」


 今までは幼く舌ったらずだった口調が妙にはっきりと丁寧なものになっていた。言う通り、調子は良さそうだけど。


『ご主人様のおかげで、色々と成長したんだよ。身体も大きくなったしね』

「成長、ですか。随分と、その……急な成長ですね」


 シスも成長したということらしい。一瞬のことで何が何だかサッパリなんだが、まあ俺がステータスをいじったせいだろうな。腕の中で抱えるのが難しいくらいには大きくなった。


『そういえば、今まではあんまり分かってなかったけど、ご主人様ってやっぱりぼくと会話出来てるんだね』

「……あ」


 別に隠していたわけではないけど、説明もしてなかったな。


「そういうスキルをもっているんですよ」

『ふーん。まあそのおかげでご主人様と話せるんだからいっか』


 自分から聞いてきたくせに随分と興味なさげである。まあシスに知られるのは何の問題もないんだけど。


『それよりご主人様、お兄さんのところへ行くんでしょ? お姉様を待たせたくないし、早く行こうよ』

「……いえ、お兄様のところへ行くのは後にします。部屋に戻りましょう」


 色々ありすぎて疲れたし、用事はまた今度でいいや。とりあえず今日は寝たい。

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