第十一話
更新遅れて申し訳ありません。戦闘シーンは難しい……。
今後も不定期更新となります。
アルガン先輩の案内で、集会場へやって来た。校舎から結構近かったので、少し安心だ。ここもまた無駄にデカい。いや、全校生徒が集まる時に使われる場所らしいから、広いのはおかしくないか。
ここが主に使用されるのは、入学式等の行事だそうだ。その辺りは前世の学生時代の体育館とほぼ同じだろう。体育のような授業ではそれ専用の建物があるらしいので、そっちで行われるらしいが。
「では、参りましょうか」
アルガン先輩に連れられて中に入る。前世との違いはほとんどなく、懐かしい感じがする。
「貴方達が一番初めに来るのがここ、集会場ですわ。次の入学式でもここが使われるでしょう」
ぶっちゃけただの広い建物なので、何の面白みもない。ミトゥレ様も少し退屈そうだ。
それはアルガン先輩も分かっているようで、苦笑しながら集会場から外に出た。
「ここには何もありませんものね。では次は……そうですわね、修練場に参りましょう」
「修練場、ですか」
名前からして、訓練目的の場所だよな。そこに行ったら戦闘狂な奴が戦ってて、こっちに興味を持ったそいつが攻撃してくる、ってのはテンプレだな。俺は弱いから、まずないだろうけど。
「ミトゥレ様は……とても行きたそうですね」
一応ミトゥレ様にも意見を聞いておこうかと思ったら、すっごいワクワクした顔をしていらっしゃった。戦闘狂はこっちだったか。
「そ、そうか? 確かにこの学園の訓練施設が見られるのは楽しみだが」
「ええ、それはもう。ですよね、アルガン先輩」
「ふふ、そうですわね。待ちきれなさそうですので、早速行きましょうか」
修練場に着いた。何でもこの学園には修練場が五つもあるらしく、それぞれ一学年に一つに分けられて使われているそうだ。今いるのは第五修練場。一年生用の修練場である。
この修練場は校舎を囲むように五角形の頂点の位置にそれぞれ建てられていて、先程までいた集会場のすぐ隣に第一修練場がある。まあ位置関係についてはそのうち地図でも見て覚えておこう。そんなに遠くなくて助かった。
それで、さっきからずっとワクワクしていたミトゥレ様はというと、だな。
「さあ、準備はいいな?」
「当然だろ。テメェこそ無様に負けて泣き出すんじゃねぇぞ」
ええ、テンプレよろしくこれからバトルだそうです。しかも、学園内でもかなり強いと評判の三年生の先輩と。ぶっちゃけただの不良にしか見えない。
「王女様は大丈夫なのでしょうか。相手はあのイレイン・ヴァルスト。いくら何でも……」
「……しかし、今のあの二人を止められるとは思いません。僕達はできるだけ怪我のないように見守るしか……」
修練場に用意されていた木刀を片手に構えて向かい合う二人を見て、ため息をつきながらアルガン先輩とことの経緯を見守るしかないのが現状だ。
力づくで止めるのはまず無理、教師はむしろもっとやれと言わんばかりに模擬戦の準備をして煽る始末。いるのかどうか分からない執事さんは一切介入してこない。どうしろっていうんだ。
一応木刀だから死ぬことはないだろうけど、そもそも王女様相手にあの口調で、しかもやる気満々とかあの先輩には明日があるんだろうか。
「ガキども、用意はいいな! 武器は木刀のみ、決着はギブアップするか気絶するまで! 良いなら返事しろ!」
「ハッ、問題ねぇよ。クソ生意気なこのアマ、ぶちのめしてやる!」
「こちらも問題ない。大口を叩くだけの弱虫が私のような若輩にすら負けるのは、さぞ屈辱だろうさ」
ちなみにこの騒動の原因は、あのヴァルスト先輩とやらが俺に向かって「軟弱者は失せろ」とか言ったのに対して、ミトゥレ様が怒って喧嘩を売ったからである。ミトゥレ様マジ男前。そして俺超ヒロイン。
……どうしてもヤバそうな時は、俺の魔法で止めよう。全力でデバフかければ止まるだろう。
「んじゃ模擬戦開始だ!」
「いくぜオラァ!」
おっさん教師の宣言でバトルが始まった。ヴァルスト先輩は木刀を振り上げ、それをミトゥレ様は後ろに飛んで避けた。ヘルガさんみたいな目で追うことができないレベルではないが、それでも十分早い。ただ木刀を振り上げただけだが、少なくとも俺なら今のでやられてるんじゃないかな。
「ハッ、臆病者風情が」
「何だ、避けるということも知らない愚か者なのか。ならば、次はこちらから行くぞ!」
その言葉と同時に、ミトゥレ様の木刀から炎が吹き出した。そして、その場で剣を振り下ろすと、その勢いで剣から炎の刃が飛び出しヴァルスト先輩に襲いかかった。
目の前に迫る炎を見据えたまま、しかしヴァルスト先輩は微動だにせず、炎は障壁に阻まれた。
って、魔法アリなのかよ! これはいよいよ全力でデバフをかけまくる必要があるかもしれない。
「随分とぬるい炎じゃねぇかよ、オイ。やる気あんのかテメェ」
「ふむ。どうやら加減しすぎたらしいな」
「言ってろ。攻撃ってのはこうやるんだよクソアマ」
魔力の高まりを感じ取ったのか、ミトゥレ様は炎を纏ったままの木刀を構えて警戒する。だが、そんなことは関係ないとばかりにヴァルスト先輩は木刀を下ろして片手を前に突き出した。
「爆ぜろ。『ネラ・イル・ヴェロウ』」
ヴァルスト先輩の呪文で、突き出していた片手から眩しい光が爆発的に膨れ上がっていく。呪文からして、高威力の爆発系……っ!?
「なっ……!? なんて魔法を使っているのですか!?」
「あれはマズイって! 付与『魔』『威』『減』、付与『魔』『耐』『囲』『増』!」
ヴァルスト先輩が使った魔法の威力の高さが容易に想像出来てしまったので、慌てて魔法威力低下をかけた後、この場の全員に魔法耐性上昇効果を付与した。直接壁を作ったり出来ないから、俺にはこれが限界だけど……。
「ぬぅっ!? 『テ・メル・フラエロ』!」
おっさん教師もあの魔法の危険に気づいているようで、俺とアルガン先輩の前に立って魔法で作り出した鉄の大盾を構えた。流石教師というべきか、咄嗟の行動であの爆発系魔法より一段上の防御系魔法を発動している。
「これは……仕方がないな。『ゾ・イルラ・イグノ』」
こっちは大慌てだというのに、肝心のミトゥレ様は一切動じた様子もなく淡々と呪文を詠唱していた。しかもあの呪文は、先の爆発系魔法より二段上の刀剣系……。あのレベルだと、最悪この修練場ごと燃えカスになるぞ!?
「ミトゥレ様!?」
「問題ないさ。この程度ならな」
慌てて声をかけたが、あっさり返される。
そのミトゥレ様が手に持っているのは既に木刀ではなく、炎そのもの。剣の形をしているだけの超高温の炎の塊だ。しかもあのレベルだと維持するだけでも至難の技だというのに、問題ないって言われてもフラグにしか聞こえないって!
「チッ……面倒くせえことを。『ラ・メル』」
今度はヴァルスト先輩が放とうとしていた魔法を更に強化してるし! やり過ぎなんだよ二人とも限度ってものがあるだろうが!
あと眩しい! 爆発魔法の光と炎で目が!
「元気のいいガキどもだなあまったく! 『テ・メルラ・ゾルグド』」
名前も知らないおっさん教師がさらに上のレベルの魔法を使用する。今度のは防御系魔法というより、攻撃系の魔法に近い。確か、地面から土を盛り上がらせる類の。
二人の魔法と比べて発動が異様に早いその魔法で、俺達の前と二人の周りを囲むように鋼鉄製の壁が盛り上がった。
「ああ!? クソッ、邪魔すんじゃねえよこのクソ教師!」
「これは……くっ」
鋼鉄製の壁に囲まれた二人は威勢が削がれたようで、眩しかった光も炎も壁の中へゆっくりと収束していった。それを見たおっさん教師も魔法を解いたようで、壁が地面に戻っていった。
ミトゥレ様は剣を手放しているし、ヴァルスト先輩は両手をズボンのポケットに突っ込んでいる。何事もなく収まったようで何よりだよホントに。
「はっはっは! まだまだ甘いなガキども!」
甘いな、じゃねえよ。教師が凄いのは分かったけど、挑発するように威張ってんじゃねえよ。またケンカし始めたらどうすんだよ。




