リファの呪本
久しぶりですみません!!
「ほう?…これは珍しい。上級呪だね」
上級呪とは、その名の通りかなり強力な呪いである。レベッカさんは呪本を捲りながら楽しそうにニコニコしていた。
「…ああ、シルティは覗いちゃダメだよ?呪われちゃうから」
「…覗くだけで?」
「うん、普通の人はかからないけど…シルフィは特別呪いに弱い体質っぽいしね」
…確かに。ゲームでは呪われた後はずっとベッド生活になるからそうなのかもしれない。
"ラウフ·ラグナ"と本の表紙に書き投ぐられた名前。…そう、これはリファの父親の物だ。
どうして呪われたか、思い出せない。でもかすかに覚えているのは…リファが私を呪ったのは"事故"だったということ。だから"呪った"より、"呪ってしまった"の表現の方が正しいかもしれない。
「この呪いを…封印、してほしいんです」
「うん、無理」
「即答!?そして良い笑顔!!」
「だあって~こんなに強い呪い、あたいには手に負えないもの」
ケタケタと笑いながらレベッカさんは本を閉じた。
…嘘つけ!と私は心の中で叫んでいたが。
レベッカさん、ゲームでは上級呪だって使ってたし、今も上級の呪本が開けてるってことは絶対封印だってできるでしょ!!
めんどくさいのかなんだか知らないが、まあ…彼女にも理由があるだろうから諦めるしかない。
…死亡フラグ回避、できないかあ…。リファにバレないように持ってきたのに…
「シルティ、なぜそんなに呪いについて知っているの?」
「うーん、簡単に言えば私が呪われるから、ですかね?」
「…………まあ、頑張れ!!としか言いようがないわね」
レベッカさん、軽いよ…!!
そんな私の心の叫びを読み取ったのか、レベッカさんは苦笑して私の頭を優しく撫でた。
「でもまあ、解呪ならしてあげる、絶対に。…いつでも頼っておいで」
「…はい、その時はお願いします」
「よしっ!!この呪本はあたいが預かっていていいかい?」
「ええ…私にはどうすることもできませんし」
ぜひ、と言って本をレベッカさんに渡すと、私は家へと帰った。
初めてリファ以外の登場人物と接触したが、レベッカさんは本当に頼りになりそう。
「…たまには町に来るようにしよっかな」
死亡フラグは折れなくとも、心は少し軽くなった気がした。
「…これでいいかい?"リファ君"」
「ああ、ありがとう"レーベルト"」
黒いカーテンを捲って、1人の男の子が出てきた。
「どういたしまして。にしてもさあ、レベッカはないよ…」
「いいじゃないか、レベッカと呼んでやろうか?」
勘弁してくれよ、と苦笑したレベッカ改めレーベルトは親しげにリファオス·ラグナに話しかけた。
「はいよ、君の呪本。ちゃんと取り返してあげたんだから報酬ちょうだいね♪」
さっきシルティアから受け取ったばかりの呪本を、レーベルトは少し雑に返す。
「ありがとう。…やはりシルティは知っていたか、呪いについて」
「うん、どこで知ったかは知らないけど、あの子つくづく恐ろしいねえ…僕が男、ってことには気づかなかったけど♪」
あははっ、と意地悪く笑うレーベルト。今は髪を結んでいるが、やはり女にも見える容姿をしていた。
「念のために言っておくが、シルティに手は出すなよ」
「わかってる、わかってるって!!そのために、わざわざボクに女装させたんだろう?いやあ~本当に可愛かったなあ♪」
「黙れロリコン。女装はお前も乗り気だっただろうが……シルティは僕のだからな」
「あーあ、シルティもかわいそー。こんな嫉妬深い奴に執着されているなんてねえ~♪」
「………ふん」
レーベルトを冷たく睨み、リファオスは身を翻すと、呪本を開くのだった。