私の呪い
温かく、見守って下さると嬉しいです。そして生温かい目で見てください。
私は朝から街に来ていた。…とある人物に会うために。
「…へえ。それで私を訪れた、と?」
「ええ。…ちょっとおききしたいことがあって。レベッカ・マダリーさん」
タバコをふうっと吹き出しながら、レベッカ·マダリーさんはこちらに目を向けた。
すらっとした体型、長く美しい絹のような髪。
…これが、呪い師。私はいまだ信じられないような気持ちで彼女を見つめた。
「まあ、せっかく来たんだし入りなよ」
「…ありがとうございます」
清楚なイメージがある白い扉を開け、私は"ルルブカン"という呪いの館を訪れた。
彼女はゲームでも人気があるキャラだった。
そして、リファのハッピーエンドに繋がる人物でもある。
「さぁて、お嬢さん。お名前は?…そしてフードを外して頂けるとありがたい」
笑っているが…なんか、目が笑ってない。ちょっと、いや、けっこう怖く思える。
白いワンピースに、黒いパーカーを着ているので女と判断できたようだ。
「私の名前はシルティア。…なんとでも呼んで下さい。そして私は見目があまりよろしくないため、お願いはきけません」
よく見目麗しいっていうけど…私の見た目逆。あまりよろしくない。
灰色の髪の毛に、怪しげな紫の眼で…不吉と言われる色が2色もあるのだ。眼はレイチェル先生とお揃いの色だから気に入っているのに…
「そうですか…では」
そんな私の考えなんか気にせず、マダリーさんは杖を構えると、私のフードを後ろへと押した。
「…っ!?強引なお方ですね」
失礼しました、と笑ったあとに彼女はやっと杖を下げた。
まあ、外されたなら仕方あるまい。笑い方が楽しそうだったのも気になるけど。それより…
「私のお話は呪いというより…呪いの方です」
「ほう…未成年なのに恐ろしいねえ」
恐ろしい、と言う割には楽しそうにレベッカさんは笑った。
そして私を奥の部屋へと案内した。
「ほら、遠慮なく入りなよ」
「マダリーさん…その」
「ああ、レベッカでいいよ。こっちもシルティって呼ぶから」
「はあ…」
ずいぶんとフレンドリーな人だなあ…私はマヌケな返事を返してから、奥の部屋に入った。
黒いカーテンでおおわれた、不気味な図書館、といったところだろう。
「じゃ、シルティ。あたいはお茶を用意するからその辺にいなさい」
「ありがとうございます、レベッカさん」
私は床に腰を下ろし、一息ついた。
ここで、すこし呪いと呪いについてお話ししよう。
呪いとは、魔法が上手い人だけが使えるものだ。
呪本というものが必要で、呪本を開けるのも魔法が上達した人だけ。
見た目は普通の本だが、上達した人が呪本に手をあてると…魔力が本に注ぎ込み、呪いが発動する仕組みだ。
そしてそれが許されてるのは、18歳の大人からだけ。
呪いは、主に魔法が使えない人が行う。村人が豊作を願ってだったり、妻の安産を願ってだったり…理由は人それぞれだけど。
ここ、ルルブカンはレベッカが呪いを代わりに行ってくれる場所だ。これがまた、効力があるもんだからこの町で一番人気のある場所となっている。
表は幸せや、平和、安全を願う呪い師。裏では憎しみや殺意を相手へ届ける呪い師としての顔を持つ。正反対の両方をやってのける…それが、レベッカ·マダリーという女性なのだ。
「んで?…未成年のシルティはなぜここに?」
「…お願いがあって、来ました」
私は"ある本"を抱えた。