私の未来
「ごめん…シルティア」
「どうして!どうしてッ…リファオス!」
噛みつかんばかりの勢いで私は叫ぶ。
「私よりもリリアン…その女をとるの!?」
「落ち着いてくれ、シルティア。君を捨てた訳じゃないんだ!」
「嘘ばっかり!私を呪っといて…見捨てるのでしょう!」
「違う!」
心からの叫びがぶつかりあって、部屋は震動する。
「僕は…6年前、間違えて君を呪ってしまった。…その償いとして、ずっと傍にいた。でも、でも…!」
「落ち着いて、リファ」
リファオスの傍で、1人の女性が彼をなだめる。…リリアン。
何であなたが…リファオスを"そう"呼ぶの?
「リリアン…彼女と出会って、僕は自由になりたいと思った。君の言いなりは、もう嫌なんだ!」
…そう言われ、私の"何か"が壊れた。
「っ!…リファオス!この裏切り者!」
「っやめて、シルティアさん!」
「うるさい…!許さない!私を呪って"_________"たクセに!!」
そう言って私は、無意識に魔力を放出させていた。
「けほっ…けほ…シルティア、さん…」
「大丈夫!?リリアン…?落ち着いて」
「リファ…」
もう、リファオスは私を"シルティ"とは呼んでくれない。あの優しさはもうない。その声で私を…
求めてはくれない。
私を、"______"したのに。私を呪って"_____"したクセに。そう妬む気持ちが渦巻く。
「シルティ…?シルティ!」
「っえ、あ…リファオス?」
そうか、夢か。と私は体を起こした。
…最近よく、あの夢を見る。
リファオスが私による束縛から逃れるシーン。…エンディングで、私が住む森から手を握りあい、微笑んで出ていくスチルが頭から離れない。
運命を変えようと、シルティアを止めようとしても止めることができない。
どうすればいいの…
不安そうに私の頬をなぞるリファオス。
「…リファオス、…リファ」
「どうしたんだい?シルティ」
「私の名前を…名前を呼んで」
私は彼の腕にすがりつき、乞う。
私を、…求めて。
「今日はよく甘えるね?シルティ。…僕のシルティ」
「リファ…」
抱きしめられ、私はその温度に安堵した。
温かい。眠く、なってきた…
「リ、ファ…」
「僕はいるよ、シルティ」
…だから、ゆっくりおやすみ?
優しい声に、私は身を任せた。
思い出せない。私はどういう呪いにかけられるのだっけ…。なぜ、私はあんなにも彼に執着するんだっけ…?
私が見たのは、夢でも正夢。つまり…私の未来だ。
リリアン・ナルミリアという少女によって、リファオスが変わってしまうことが怖い。
でも、本当に怖いのは…………
「おやすみ、シルティ…」
僕は優しく声をかけ、腕の中の少女をそっとベッドにおろした。
同い年に思えないくらい、小さな体、幼い顔立ち。でも…大人びた思考。
「…気づかれたのかと思ったよ」
少女が起きるまでいじっていた手に収まるビンを、僕は取り出した。
ラベルの文字は掠れて読めない。中には透明な液体が入っている。
「あと3年…早く、目覚めて?…僕のお姫様」
リファは優しく、シルティの頬に唇を落とした。