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ノアの冒険譚 成り上がり人生記(仮)  作者: 世迷言言
第八章 魔物討伐イベント
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第79話 魔物討伐イベント⑦BBQ

第79話です。


誤字・脱字・感想をお待ちしています。

魔物討伐イベント5日目午後

《王都西部ベシュタクス山地ベシュト村》


魔物討伐イベントも5日目に入った。


本来であれば、昨日のうちにベシュト村を出発し、今日にも王都ノルテへ帰還の予定であったが、まだベシュト村に留まっている。


オレたちはベシュト村に留まり付近の森の中で灰色熊や狼、果てはゴブリンなどの討伐駆除を行った。


この地に狂獣灰熊バーサーカーグリズリーが住み着いてから数ヶ月あまりの間、樵夫たちがほとんど山に入らなかったため灰色熊グリズリーなどの獣やゴブリンなど魔物の数が激増していた。オレたちはそいつらを駆除討伐していたという訳だ。


ことの経緯はこうだ。


一昨日のこと、霧々亭から山小屋の様子を見に行った当番の若い衆が、狼や熊の痕跡の多さに逃げ帰ってきた。駆除をしないとこの先までいけないと。


さらに昨日の早朝、事態をあまり重く見ていない跳ねっ返りの樵夫たちが狂獣灰熊バーサーカーグリズリーほどじゃないから大丈夫だと、武器を手に先へ進もうと入山したが、其処彼処にゴブリンらしき痕跡を見つけ帰ってきた。


そこでノルドは改めてオレたちに駆除討伐を依頼してきたのだ。


王都までの帰還に必要な日数を1日として、オレたちは昨日、今日と山中の伐採対象地区の安全を確保するために駆除討伐を行ったという訳だ。


流石に数ヶ月以上放置されていた山中は動物や魔物にとって天国だったらしく、狂獣灰熊バーサーカーグリズリーが巣食っていた中腹付近はあまりほかの動物などはいなかったが、それ以外の場所では数多く見かけられた。中でも、ゴブリンはコロニーになる寸前だったらしく、ゴブリンリーダーまで住み着いていた。結局、オレたちに駆除されてしまったのだが。


と言う訳で、狂獣灰熊バーサーカーグリズリー以外の駆除討伐は以下のとおりになったのだが、野生動物の処分に困ったのでベシュト村の皆さんに譲ることにしたら、村長さんがお礼を言いに来てその日の晩はお祭りをすることになった。


『ノア&アルデ感謝の夕べ』

開催日時 今日 夕方から

開催場所 村広場

参加条件 自由

おねがい 肉はあるので晩ご飯のおかずや酒を各家庭一品持ち寄ること


その結果、来るわ来るわの大合唱。村の総人口の8割ほどの人が来たらしい。


村長さんもお酒を供出してくれた。


オレは、ノルドさんと一緒に広場に設置された野外コンロでひたすら肉を焼いた。BBQである。正直、血抜きも満足にしていない肉なので、獣臭さがすると思ったが、そこは鮮度抜群だったため思ったほど気にならなかった。


ノルドさんやティナさん、村長さんや樵夫などと楽しく食事をした結果、翌朝は寝坊をして4時間遅れでベシュト村を出発することになった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ベシュト村付近の駆除討伐結果


(魔物)

ゴブリンリーダー・・・2体(10万C)

ゴブリンメイジ・・・4体(3万C)

ゴブリンアーチャー・・・6体(4.5万C)

ゴブリン・・・22体(11万C)


(魔獣)

双角狼ツインホーンウルフ・・・8頭(4万C)

岩石猪ロックボア・・・2頭(1.6万C)


(野生動物)

灰色熊グリズリー・・・5頭

森狼・・・11頭

野生猪ワイルドボア・・・4頭






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


同じ日

《ベシュタクス川上流とある農村》


その男はベシュタクス山地から2日を歩き通してその村にたどり着いた。


「おい、兄さん。ずいぶん疲れた格好だなや。どうした。」


憔悴しきった男に、村の者が声をかけた。


彼は、ベシュタクス山地から川沿いを伝ってこの村落までやってきた。途中、多くの魔物や獣を見つけたため街道を選んだのだが、街道にも厄介な者たちがいた。野盗である。


単独行で諜報員である彼は、本来であれば人目を避けるルートを通る。しかし、単独行であったため魔物などの撃退が困難であるとの判断により、野盗のいる街道を選んだのである。


つい先ほども三人組に絡まれ、二人を殺害し、一人の手を斬りおとして撃退した。その際、持っていた財布を頂戴した。中には1週間ほどの宿の滞在費は入っていた。これ当面はお金に困らなくなったのだが、疲労度はいや増しているのであった。


その男の名はヌニェスという。


ノアを討ちもらし、班長ナバーロを狂獣灰熊バーサーカーグリズリーに殺され、マイツェも行方知れずでは帰るに帰れなかったのである。このままでは、いくら説明を重ねても役立たずの謗りは免れないが、狂獣灰熊バーサーカーグリズリーの脅威を一緒に語ってくれる人物がいれば、とも考えていたのだ。


「すまない。この辺に食堂はないだろうか。山から歩き通しなもので…。」

ヌニェスは男に尋ねた。自分の空腹感もあったのだが、食堂のように人の集まっているところであれば川に流されたマイツェの情報も集まっていると考えたのだ。


「そうだなや。この村には宿屋も食堂もねえやな。商店ならあっから、干し肉なんかはあるど。」

食堂はないという返事に若干気落ちはしたものの、干し肉はあるとの事で安心した。


ヌニェスは農夫に感謝の言葉を伝えると、商店の場所を聞いて急いだ。


商店へ向かう途中、通り過ぎる人々が怪訝そうにヌニェスを見送る中ようやく商店にたどり着いた。そこには、何人か買い物をする主婦の姿があった。


店に飛び込むヌニェスの姿に一斉に喧騒が広がる。


ヌニェスの格好は、この国では一般的ではない諜報員の服装だった上、狂獣灰熊バーサーカーグリズリーの爪痕がくっきりと残され、血痕も見受けられたからである。


周囲の人々の喧騒に、ヌニェスはようやく自分の格好が尋常ではないことに気づいた。


「脅かしてすまない。何か着るものと食べる物はないだろうか。」


「おうさ。どした、熊にでも襲われたんか。」

店の主人であろう、心配そうに声をかける。


「あぁ。山中でな。」

そうヌニェスが応えると、主人は干し肉に野菜の酢漬け、水を運んできた。


「そうだっただか。大変だったなや。これでも食ってゆっくりしてくれや。服なんだが、こんなんでもええか。」

そう言って、着古した服をいくつか持ってきた。


しかし、飲まず食わずで歩き通したヌニェスは一心不乱に干し肉などに噛り付いていた。


しばらくして、ようやく人心地ついたヌニェスは渡された服から適当な物を選び、保存食と水筒などを購入すると、気にしていたことを質問した。


「ご主人。最近、川を流された人物がいたなどの話を聞いたことは無いかな。」


「川で流された人物ね…。いや、知らんな。もし、そんな話が出ていればうちの女房なんかの話題になると思うんだなや。知り合いか。」


「あぁ。一緒に山で熊に襲われてな。何とか川に飛び込んだのだが、その後行方がわからなくてな。探しているんだ。」


「そうだか。見つかるといいな。役に立てんですまんなや。」


そう言って申し訳なさそうにする店の主人に感謝を述べると、ヌニェスは更に下流の村を探すべく足早に立ち去ったのであった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


魔物討伐イベント6日目

《王都ノルテ内ユリウス辺境伯邸》


今、ユリウス辺境伯の懐刀ゲオルは王都にいる。そして、ゲオルの前には一人の従士。この男、ユリウス辺境伯に遣わされ、インチャード帝国公爵ベルナール=ド=ニコラの元へ密書を届けた男である。


10月にインチャード帝国へ旅立ったか彼は1月末にユリウス辺境伯領に帰還し、密偵として八面六臂の活躍を見せていた。今日も、ノアシュラン=ヴォルツ暗殺の報告が未だに入らないため、インチャード帝国の諜報部の情報を探りに大使館へと赴き、マルケス大使を伴って帰着したところであった。


マルケス大使を応接室に通して従士を呼び出し質問する。


「して、首尾はどうであった。」


「はっ、大使館にも情報はなく、館内では失敗し返り討ち似合ったのではないかとの意見が大勢を占めています。」


「して、反応は。」


「はっ。彼の国の内部では、そもそもが国内の要望ではなく、辺境伯閣下よりの急な要請であったため、事前の策も講じていないので、討ちもらしても止むを得ないのではないか、との意見が趨勢を占めております。」


「それは大使閣下も同様か。」


「はい。どちらかと言うと大使閣下の意向が強いように思われました。」


ゲオルも愚かではない。今回のノアシュラン暗殺が、インチャード帝国にとってどれほど意味のないものかを理解している。そして、ユリウス辺境伯の理不尽な命令に諫言を行った家臣たちが何人も処刑されたことも知っている。そのユリウスからの命令となれば応じざるを得ないのである。


しかし、マルケスらインチャード帝国の人たちにとっては事情が違う。どちらかと言えば、国内での自分の地位を上げ、あわよくば王位を簒奪したいユリウス辺境伯に力を貸しているという感覚なのである。もちろん、彼らとしても南との戦争が終結しそうな今、次の標的の一つとしてノルテランド王国があがっていることもあるのだが。


従士の報告を受けるとノアシュラン暗殺の失敗を覚悟した。そして、善後策を講じるためマルケスの待つ応接室へ向かった。





次回は11/16ころの投稿予定です。

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