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ノアの冒険譚 成り上がり人生記(仮)  作者: 世迷言言
第二章 新人冒険者時代
9/156

第7話 初心者クエスト

第7話です。

9/10:改訂を行いました。

ノルテランド暦1991年3月15日

《王都ノルテ冒険者ギルド教練所》


オレたち冒険者研修のメニューは、午前はランニング、午後は筋力トレーニング、夜間は座学だ。


そんな研修の生活も3日目の朝を迎えた。


オレたちは相変わらず走っていた。


(研修はたった1週間だろ。走って、筋トレしたって体力はそんな変わんないだろ。何を考えてるんだ。)


オレはそう考えながらランニングをして周囲の様子を窺っていた。


(しかし、オレたち農奴の子ども組は必死だな。まあ、【冒険者】になれるかがかかっているからな。それに、あのクースはかなり体力あるぞ。線は細いのに凄いな。あれがエルフか。)


「走れ!走れ!走れ!!」

今日も今日とて教官の元気な声が響く。

「返事が無いぞ!!


『『『はいっ!!』』』

あの金髪は2日目の朝には来なかった。3日目また平民が減った。


オレたち、農奴の次男組はこれをクリアしないと生きていけない。自分の命が掛かっているんだ。オレたちは、どれだけ、教官に罵倒されても走り続けた。


そして、残った平民はクースだけだった。


3日目の昼休み後教官はオレたち研修生を教練所に集めた。


一列に並んだオレたちの前にカーン教官が立って話し始める。

「お前たち、よくがんばった。着いて来れそうも無い奴はみんな脱落したな。正直、1週間程度のランニングと筋トレでは体力はそんなに変わらん。」

そう教官が言うと、研修生からざわめきが起こる。


(そりゃ、そうだろ。オレもそう思ってたよ。研修生の選別をしてたのか。)


「まあ、登録をすれば【冒険者】にはなれる。こんな苦しい思いをする必要も無い。だがな、この合宿では何が何でも食らいつくと言う気持ちと協調性を身に着けてほしい。【冒険者】は独りではたいしたことは出来ない。基本的に狩りはグループで行う。前衛と後衛この協調性が必要なんだ。この研修を経た【冒険者】の生存率とそうでない【冒険者】の生存率はぜんぜん違う。とくに、お前ら小僧どもは生き抜かなければならんのだろう。ならば、残り3日と最終日の初心者討伐を死ぬ気で取り組め。いいな!!」


『『『はいっ!!』』』

カーン教官は満足そうに頷いた。


「よし!!まずは自己紹介だ。まずは、小僧お前からだ。」


オレのことを指差す。


「ノアシュラン。10歳です。【剣士】【隠密小】を持っています。農奴の次男で北部のユリウス辺境伯領から逃れてきました。よろしくお願いします。」


オレはみんなの前に出て自己紹介を行い、次々と自己紹介をしていく。


オレは研修3日目にして初めてみんなの名前を知った。その中で、【剣士】【弓士】などの技能スキルを持っているのは、オレとクースだけだった。ほかの研修生の名前は、イル、エイギル、ジャス、ルカクと言って、やはり農奴の次男や三男だった。


(スキル持ちって少ないな。本当に一からのスタートなんだ。)


「イル、エイギル、ジャス、ルカクお前たちはこれから毎日午前は走れ。そして午後からイル、エイギル、ジャスは剣を振れ。まずは剣を自由に扱えるようになるんだ。ルカク、お前は弓のほうが適正がありそうだ。弓矢を用意するから的当ての練習だ。まずは近い距離から徐々に距離を伸ばせ。最終的には30mが目標だ。」

カーン教官はスキルのない4人に向かってそう指示を出した。


オレとクースは指示を待った。


「ノア、お前は明日から【剣士】を何人か用意する。模擬戦だ。クースは遠当てだ。いいな!」


『『『はいっ!!』』』


それからの3日間オレたちは必死で訓練に取り組んだ。


イルたちは、手に肉刺ができ、それが潰れ、その上に肉刺ができた。カクスは、矢の羽で顔や指を切りながら、ひたすら矢を射った。オレも領地にいたときに【剣士】を取るために剣を振ったが、それとは比較にならないほど、みんな真剣に取り組んだ。


その結果、イル、エイギル、ジャスは【剣士】をルカクは【弓士】を取得した。


オレは、【剣士】を相手に実戦を重ねた。【冒険者】の【剣士】は、みな我流で洗練さもなく相手にしていても怖さはなかったし、だんだん渡り合えるようになっていった。しかし、【騎士団】の【剣士】はさすがに一筋縄ではいかなかった。命を奪う仕事なだけあって、剣先が躊躇なく急所へ向かう。木剣ではあったが、防御を疎かにすると痛い目に合う。必死になって打ち合った。


「いいか、小僧。新人のお前らが最初に相手する魔物はゴブリンやコボルトなど人型に近いんだ。今、しっかりと急所を学んでおけば絶対に役に立つ。せっかく【騎士団】から来て貰ったんだ無駄にはするなよ。」


そして、クースの弓は別格だった。カーン教官の話では、もうじき【弓術士】を取れるらしい。エルフという種族は生まれながら風を友にして生活を送っている。そのため、弓矢や【魔術師風】など基本的に能力が高いそうだ。とにかく、エルフの弓はとにかく凄かった。


(悔しいが、クースの弓は別格だ。今のオレでは組んでも足を引っ張るだけだ。少しでも訓練して足を引っ張らないようになるぞ。)

そう心に決めた。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ノルテランド暦1991年3月19日

《王都ノルテ冒険者ギルド前》


『整列!!』

カーン教官の声が響いた。


『『『はいっ!!』』』

オレたちが並ぶ。


「今日は新人研修の討伐日か。」「がんばって来いよ。」

そんなオレたちを見て王都の人たちが声をかける。


「いいか、お前ら。町の人たちの声が聞こえるか。」

カーン教官が問う。


『『『はいっ!!』』』

オレたちが応える。


「魔物を討伐するわしら【冒険者】は王都の人々にとって信頼の対象なんだ。商隊の護衛をしたり、近郊の農地で魔物を掃討したりして、先輩たちが、着々と積み上げてきたものだ。だから、それを壊すようなことをしてはいかん。いいな!」

カーン教官は話を続ける。


「よし、これからゴブリンの討伐へ向かう。これが、新人研修の卒業討伐だ。前衛はノア、イル、エイギル、ジャス、後衛はクースとルカクだ。前衛のリーダーはノア、後衛のリーダーはクースだ。行くぞ!!」


『『『はいっ!!』』』

オレたちは2列縦隊になって王都から東の丘陵地帯へ進んだ。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《王都ノルテ郊外丘陵地帯》


目的地の丘陵地帯に到着したオレたちはカーン教官を中心に集まり、指示を聞く。


「よし、お前ら前方の林は見えるな。これから、そこへ入るぞ。前衛は各自左右に10mの間隔をあけて入れ。絶対に左右の仲間が目に入らない位置には行くな。左右が見えないときは後退をしろ。一人には絶対になるな。いいな。」

カーン教官が前衛陣に話す。


オレ、イル、エイギル、ジャニスは一斉に頷く。


「後衛は、前衛のバランスが崩れたら声をかけて修正しろ。前衛で林に入ると周りに気をつけるあまり遅れてしまったり、逆に恐怖心から速くなってしまったりする場合がある。それを修正してやるのが後衛の役目だ。いいな。」

クースとカクスが頷く。


「そして、ゴブリンを見つけたら、渡した笛を鳴らせ。それは、野鳥の声のする笛だ。3回鋭く鳴らせ。それを聞いたら、全員ここに戻って来い。いいな。3回鋭く鳴らすんだぞ。間違えるなよ。では、行けっ!!」

カーン教官の声を合図にオレたちは林へ分け入った。


オレたちはお互いのバランスが崩れないよう左右を確認しながら林を進んだ。


たった、10m進むだけでどれくらいの時間がかかったんだろうか。


ちょっとした物音に一斉に反応したりもした。


やがて、50m進んだころ、オレはゴブリンの野営地を発見した。


(いた。ゴブリンだ。結構いるな。10.11.12体か。そうだ、早く笛を吹いて戻ろう。)


「ピュイ、ピュイ、ピュイ。」

鳶の鳴き声のような音がした。


「ピュイ、ピュイ、ピュイ。」

周囲からも似たような音が聞こえる。大きな野営地だったので他にも気付いた奴がいたようだ。


そしてオレは教官の元へ報告に戻った。そしてみんなも集まる。


「教官、発見しました。おそらく12体です。でも変なんです。黒いローブを着たやつが1体いました。」

オレはそう報告をする。


「僕も見ました。大きな野営地でした。ちょっと数まではわかりません。」

エイギルも俯きながら報告をする。


「そうか。エイギル。初めてのことだから緊張もするし、恐怖感もある。それはとても大事なことだ。怖ければ慎重に行動するようになるからな。次からは、もっと慎重に注意深くやれ。いいな。」

カーン教官がエイギルに諭す。


「さて、野営地の魔物だが、おそらくゴブリンとゴブリンメイジだな。ゴブリンメイジは弱攻撃の魔法を使う。1体ならば、クースとルカクで対処できるな。数はちょっと多いが、敵はゴブリンだ。急襲すればいけるな。おい、ノア。やつらの中に皮鎧を着けた大きなのはいなかったか。」

教官が尋ねる。


「いなかったと思います。」

オレは応える。


「わかった。」

教官が頷く。


意を決したカーン教官がオレたちを見る。


「これよりゴブリンに急襲をかける。ゴブリンメイジが1体いるが、それはクースとルカクが狙え。前衛ノアとイル。後衛クース。前衛エイギルとジャス。後衛ルカクで3人組を組め。前衛二人で1体に急襲をかけ離脱そして次の敵を狙え。その間に後衛がゴブリンメイジを狙う。ゴブリンメイジを倒したらほかのゴブリンを狙う。3人1スリーマンセルは絶対に崩すな。前衛に負傷者が出たら、後衛と入れ替わって手当てをしろ。いいな。行くぞ。」


オレたちは、さっき発見したゴブリン野営地に忍び寄った。


「行け!!」

教官の合図で急襲をかける。


オレたちは野営地の左の端から右へ直進することを決め、近くにいた1体に飛び掛る。オレはそのゴブリンを袈裟切りに切り捨てると、その横の1体へ向かって進む。イルの突きがゴブリンに決まる。その間にクースがゴブリンメイジを射殺すことに成功した。


その時、予期せぬ出来事が起こる。イルの剣がゴブリンから抜けないのである。そのイルにゴブリンが棍棒を持って殴りかかった。


「イルっ、避けろ。」

オレの声を聞いたイルが必死に回避する。


「がふっ。」

イルの肩に棍棒が当たる。オレはすかさずゴブリンに切りかかった。


「「大丈夫かっ!」」

ゴブリンを切り捨てたオレとクースはイルに駆け寄り声をかける。


肩を強く殴られたイルは剣を握ることが出来ないようだ。オレたちはイルをかばいながら襲い掛かるゴブリンを切り捨てる。クースも混戦の中、イルを守るために細身の剣に持ち替えている。


しばらくすると、襲い掛かってくるゴブリンがいなくなった。どうやら戦闘が終わったようだ。


「全員無事か。」

教官の声が聞こえた。


『『『はいっ!!』』』

そう言って教官の下に集まる。


「ではこれから、魔結石の回収を行う。これは、魔物を討伐する【冒険者】にとって大切なことだ。なんせ、収入に直結するからな。しっかりと覚えておけよ。まずは、自分が討伐した魔物めがけて、手をかざす。そして、魔結石が出るように強く念じる。」


オレたちは言われたとおりに行った。しかし、肩を痛めたイルだけは回収が出来ない。


「イル、それはお前が討伐したゴブリンか。自分が突き刺したゴブリンでやってみろ。」

カーン教官がアドバイスを送る。


すると、イルも回収に成功する。


「いいか、魔結石はその魔物に一番大きなダメージを与えた者が回収できる。もし、何らかの事情でその者が離脱して回収できない場合は、二番目に大きなダメージを与えた者だ。」


今日の回収状況を見ると、オレが4体、クースはゴブリンメイジもあわせて3体、エイギルが2体、イル・ジャス・ルカクが1体ずつだった。


「この魔結石を冒険者ギルドに持ち込むと、買い取ってもらえる。今日は、初心者討伐の成功報酬とこの魔結石の報酬。あと、ゴブリンには無いが、魔物の中には武器防具の素材になるやつもいる。ドラゴンの鱗とかな。そういったのも、剥ぎ取れば冒険者ギルドで買い取ってくれる。これが、冒険者の報酬だ。」


「教官!!質問があります。」

オレが挙手をする。


「持ちきれない場合はどうすればいいんでしょうか。」

そう尋ねる。


「まあ、待て。それを今から説明するんだ。お前ら、【冒険者】登録をしたときにSOPは習ったろ。今度は、掌に意識を集中して「ボックスオープン(以下BOP)」と言ってみな。」


「「「BOP。」」」

すると目の前に箱が現れた。


「その箱は、魔法の箱だ。中に入ったものは時間の干渉を受けない。要するに、食料を入れておけば、いつまでも新鮮なままだ。中に入る量は、HPとMPの総量によって決まる。最低ランクの冒険者でも、結構な量が入る。【冒険者B】位になると、運べないものは無いな。お前らでも、ここにあるゴブリンくらいは運べるな。でも、ゴブリンはやめておけよ。いくら運んでも使い道がないからな。はっ~、はっ、はっ。」

教官は面白そうに笑った。


「では、回収は済んだか。帰るぞ。」


『『『はい。』』』

オレたちは再び2列縦隊を組んで帰還した。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《王都ノルテ冒険者ギルド報酬カウンター》


「達成報酬は一律3万Cです。魔結石の買取は、ゴブリン1体が5千C、ゴブリンメイジが7千5百Cです。宿の斡旋もしています。宿泊先が決まっていない方は後ほどカウンターへ来てください。」

ジョアンナさんの声が響く。


オレは今日1日の討伐で、5万Cを手に入れることが出来た。


オレたち研修生が、カーン教官の前に並ぶ。


『教官、ありがとうございました。』

オレたちは、【冒険者】としてデビューできたことを教官に感謝した。


『今日が、スタートだ。いいか、お前ら、絶対に無茶はするな。死ぬんじゃないぞ。』

教官の声が響いた。


その後、オレはクースと明日の午前7時に冒険者ギルドで落ち合う約束をして、ジョアンナさんの斡旋してくれた宿へ向かった。

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