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ノアの冒険譚 成り上がり人生記(仮)  作者: 世迷言言
第七章 練魔闘技祭
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第71話 練魔闘技祭⑮青天の霹靂

第71話です。


誤字・脱字・感想をお待ちしています。

ノルテランド暦1993年4月2日

《王都ノルテ城内練魔闘技祭祝賀会場》


着飾った紳士淑女。荘厳なるシャンデリア。耳には管弦楽団の演奏による心地よい音楽が響く。そして、目の前には色とりどりの料理が並ぶ。


水蜥蜴ウォータリザードの生ハムメロン

小エビと貝柱のゼリー寄せにグリーンソースを添えて

ロール薬草のトマトソース

キャビアのカナッペ

フォアグラのテリーヌ

牛肉の煮込み季節の野菜添え

牛肉のポワレ

リッター魔法連合国産魚介類のアクアパッツァ

ノルテランド王国産地物野菜と鶏肉のスープ

サラダバー

などなど。


ここは、レセプションパーティも開催されたノルテ城内の舞踏場。


現在は、祝賀会場となっている。とは言っても、祝賀会なのはオレたちシェリング王立魔法学校だけで、リッター王立魔法学院、私立デシ魔法学園、インチャード帝国帝都魔法大学校の面々にとっては残念会となっていた。


こうして祝賀会場を眺めていると様々なことがわかってくる。各校の特徴が透けて見えるのだ。


ビジネスアタイア、スマートカジュアルの比較的自由な服装で寛いでいるのは、シェリング王立魔法学校。自国開催の気楽さと国王の雰囲気、さらには優勝国という特別な意識に基づくものか。


略礼装インフォーマルで折り目正しいのは、リッター王立魔法学院。伝統校としての矜持が垣間見える。


学園の制服で、個々の服装を認めていないのは私立デシ魔法学園。私立の下級貴族、平民向けの学園のためこういう場に出席できる服を持っていない生徒を考慮している。


軍服姿で、直立不動を崩さないのがインチャード帝国帝都魔法大学校。そもそも、魔法大学校自体が軍に属しているためだ。


ちなみに、祝賀会に出席している、オレ、クーにい、カンナはどんな場でも無難なビジネスアタイア。


ちなみにオレのスーツはジョアンナさんに紹介してもらった洋品店のフルオーダー品だ。


初回の面通しでは発注にすら入らない。どんな用途で、どんな場面で着たいのかを丹念に話し合うことから始まった。その後、生地の選択が始まり、何度も採寸を重ね、一針一針ベテランの針子さんが精魂をこめて手縫いしてくれた。正直びっくりするような値段がした。しかし、着心地もよく気に入っている。クー兄もカンナも同様に作ってもらった服を着ている。


そのカンナだが、当初祝賀会の出席に難色を示された。理由は奴隷だからだ。そのためオレは出席を拒んだ。オレにとってカンナも家族だ。家族に祝福されない祝賀会など出席する意味がない。しかし、事態を重くみた(優勝者のいない祝賀会など有り得ない。)国王陛下の鶴の一声で事態は好転し、オレもカンナ、クー兄と出席することになった。


「カンナ、楽しんでるか。」

オレはカンナに話しかける。


「はいなのです。キャビア4枚目なのです。これから、フォアグラもとってくるのです。」

うれしそうに応える。


オレもゆっくりと食事をしたいのだが、王国貴族が引っ切り無しにやって来て、ゆっくり食事をする暇もない。


曰く、「専属の魔術師にならないか。」


曰く、「当家の所属にならないか。」


オレが、当面は【冒険者】をやめる気はないというと、


曰く、「専属の【冒険者】にならないか。」


曰く、「当家に所属して、迷宮探索をしないか。」


などである。


これまでに、侯爵家1つ、辺境伯家1つ、伯爵家3つ、子爵家5つ、男爵家3つの挨拶があった。


中には、「黙って我に仕えよ。」などという横柄な奴もいたが、リュングさんが追い払ってくれた。


それに、多くの知り合いも来てくれた。


王都警備隊隊長リリアン=フォン=ノルテランド第一王女、王都警備隊第一大隊長リュングベリ=フォン=シュナイダー子爵、エルドレッド=イェーガーなどの王都警備隊関係者。


冒険者ギルド長官モネ=フォン=ファイアージンガー男爵、ジョアンナさん、カーン教官、ラトゥ教官などの冒険者ギルド関係者。


特別参与ダレル=フォン=シュミット子爵、宰相グリーデン=フォン=パララスケス男爵、内務卿ユーサリウス=フォン=バレッド侯爵などの王都で知り合った貴族の人々。


また、多くの同級生、イギーことイングヒルトやヨアヒム、トマスなども声を掛けに来てくれた。


オレはみなの祝福に笑顔を浮かべ声をかわしていく。気が付くと、目の前にオーギュストが立っていた。


「おめでとう。決勝では、ノアシュラン君と戦えてよかったよ。」

そう言って、オーギュストは右手を差し出す。


「オレのほうが年下なんでノアと呼んでください。オレもあなたと戦えてよかったです。できれば万全のあなたと戦いたかった。」

オレも右手を握り返す。


「そうだな。でも、あれが俺の実力だ。準決勝のサンドラも強かったってことだよ…。それよりも、ノアに紹介したい人がいるんだ。先生っ!!」

オーギュストが先生を呼ぶ。


オレは、呼ばれた人物を見て絶句した。青天の霹靂と言ってもいい。


オレの目の前に現れた人物は『父』だった。見間違えではなかったのだ。


「父…さん。父さん!?なんで、ここに!!先生!?母さんは?ドニス兄は?」

オレは、矢継ぎ早に質問を続けた。


そんなオレの様子に父?は苦笑する。


「落ち着け。私はハインツ。ヴオルフガングの双子の弟だ。」


そんな思いがけない言葉に思わず茫然自失のオレ。そう言えば、実家からの手紙に書いてあったっけ。


「ノア、挨拶。それに鎧のことお礼言わないと。」

クー兄がオレに囁く。


「あっ、あ。オレは、いや違う。僕はノアシュランです。ヴォルフガングの息子です。神鋼軽鎧オリハルコンライトアーマーありがとうございました。」

気も漫ろにオレは挨拶をする。


「気にするな。ヴォルの話を聞いてすぐにハーレン村に行きたかったのだが、ちょうどリッター魔法連合国にわたったばかりでな。なかなか、行けずにすまなかったな。」

そう言って申し訳なさそうな顔をする。


「ようやく兄たちのいる場所を確認して、まだ、戸籍に記載されていないノアシュランをリッター魔法連合国へ迎えに、ユリウス辺境伯領まで行ったのだが、既に王都へ旅立った後だったのだ。それが、練魔闘技祭優勝の祝賀会で会えるとは。私もヴォルも出場できなかったのに。たいしたものだ。」

そう言って、ハインツは目を細める。


ところで、ハインツさんは、父ヴォルフガングの双子の弟で、元『神虎隊』の一員。優秀な兄弟であったため、家督をめぐって家臣などが分裂することを嫌い、若いうちに家を出て【冒険者】となった。


その後、ヴィッテルなどの迷宮を中心に【冒険者】として名を上げ、最近リッター魔法連合国へ渡航し連合国内の迷宮に潜っていたらしい。そして、たまたま知り合った男と意気投合しその人物の仕事を手伝うことになった。それが、私立デシ魔法学校の講師だった。知り合った人物というのが理事長だったそうだ。


もちろん、波乱万丈、紆余曲折の人生であったらしく、苦労の連続であったと面白おかしく語ってくれた。


なかなか会えなかったことを申し訳なさそうにオレの頭を掻き毟るハインツさんは父ヴォルにそっくりだった。


「そうだ!ハインツさん。紹介します。オレのパーティ『自由への翼』のクーサリオンとカンナです。」

オレはクー兄とかんなを紹介する。


「はじめまして。ノアとパーティを組んでいます。エルフのクーサリオンです。」

「カンナなのです。」

クー兄とカンナもハインツに頭を下げる。


「『自由への翼』の話は聞いている。この辺の若手では期待度№1だと聞いた。やはり、ノアにはヴォルツ家の血が流れているとうれしく思ったものだ。」

「もし、ノルテランド王国内で不遇を囲っているようであれば、リッターへ連れて行こうとも思ったが、その心配も内容だな。」

クー兄とカンナを見て一人納得する。


そうやってハインツと話をしていたが、オレとオーギュストの談笑に興味を引かれた大勢の人々が周囲に集まってきた。


「これ以上はゆっくりできそうもないな。ノア、私が帰国する前に一度ゆっくり飯でも食おう。ギルドに連絡をする。じゃあな。」

ハインツはオーギュストを連れて立ち去った。


「はい。楽しみに待っています。」

オレは頭を下げて見送った。


ハインツを見送り後ろを振り返ると、またも意外な人物がいた。


ユーサリウス=フォン=バレッド侯爵とサンドラに連れられたアルデバラードだった。


「ノアシュラン君、ちょっといいかな。」

ユーサリウスはオレに声を掛けてきた。


「はい、閣下。」


「うちの、サンドラとアルデバラードがぜひ、祝福をしたいというのでな。」

そう言って、ユーサリウスとサンドラはアルデバラードを押し出す。


おそらく、あれ以来部屋に籠もりがちなアルデバラードを連れ出したかったのだろう。


「ありがとうございます、閣下。サンドラさんも、アルデバラードさんもありがとうございます。また、来週から学校も始まります。同級生のアルデバラードさんとは切磋琢磨の日々ですね。」

オレは、そう言って3人に頭を下げる。


「こちらこそよろしく頼むよ。アルデにも、休ませずに通わせるので、よろしく頼む。」

ユーサリウスも返礼をする。


「もちろんです。同級生ですから。」

オレはそう言って、莞爾と笑った。


アルデバラードとは、首席をめぐり、そして練魔闘技祭の代表をめぐり、いろいろなことがあった。その結果、彼女は学校にも友だちにも問題視され、受入れてもらえなくなっているのだ。


しかし、あえてそれを水に流そうと笑顔で提案したのだ。


まだ、学校生活は1年以上ある。魔物討伐、騎士団仮入隊、魔術競技会さまざまなイベントがある。それなのに、ぎすぎすとした人間関係で過ごすなど、オレはいやだ。


そんな思いをこめてオレはアルデバラードに右手を差し出す。アルデバラードは目に一杯の涙を浮かべてオレの右手を握り返した。


そんなオレとアルデバラードをユーサリウスはうれしそうに見守っていた。





練魔闘技祭編完結。

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