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ノアの冒険譚 成り上がり人生記(仮)  作者: 世迷言言
第四章 新人パーティ『自由への翼』
38/156

第29話 パーティ結成、『自由への翼』

第29話です。

ノルテランド暦1992年3月上旬

《王都ノルテ内冒険者ギルド》


「ジョアンナさん!ジョアンナさんいる?」


オレは足取り軽く、冒険者ギルドのカウンターへ駆け寄る。


とうとう、故郷から農奴の子ども達を引き連れた【冒険者】が帰還したのだ。それは、実家からの手紙が帰ってきたということでもある。


夏、8月に手紙を託してから半年以上が経った。ようやく、故郷からの返事が届いたのだ。


自然顔もほころぶ。笑顔もこぼれる。


「あら、ノア。機嫌よさそうね。今日はどうしたの。」


オレに呼ばれたジョアンナさんが出てくる。


「昨日、職員から手紙届いたって伝言があった。クーにいが受けてくれた。」


「そうそう。届いてたわよ。これね。」


オレはジョアンナさんから手紙と荷物を受け取る。


「これは?」


「私も詳しくは知らないけど、案内の人には手紙に書いてあるから、あなたに渡して欲しいって言っていたそうよ。個室を用意してあげるからそこでゆっくり読みなさい。食堂で読んで泣いたりしたら恥ずかしいでしょ。」


そう言って面談用の個室に案内してくれた。


オレは早速手紙を読む。そこには、父の母の兄の近況が記されていた。


手紙が手許に届いたのは10月上旬頃で返事は2月下旬に書いたようだ。オレは、クースという兄のような仲間ができたことやリュングベリさんに出会ったこと、新人クエストのことなどを書いて、回復薬や干し肉と一緒に引率に回る【冒険者】に託してあった。この回復薬などは大変助かったようで、母が体調を崩したときに使ったと書いてあった。


父は、近所の人の要望で農作業の合間に林に入り動物を狩るようになり、代わりに、農作業は近所の人たちが手伝ってくれているそうだ。母は体調もだいぶ良くなったようで、オレが冬に狩った動物の毛皮で防寒具を作っているとあった。兄は、そんな父母を助けて農作業に従事し、忙しい日々を過ごしているらしい。


昨年の冬、オレがユリウス辺境伯領を出奔したせいで、家族にも追及の手が伸びたらしいが『知らぬ、存ぜぬ。』で押し通したことも書いてあった。


さらに、叔父のハインツが父の元を訪ねたそうだ。ちょうど、オレが旅立って1週間後、父が廃爵され奴隷に落ちたことを聞いた叔父がオレを引き取りに訪れたそうだ。今は、リッター魔法連合国で地下迷宮の探索を中心に【冒険者】をしているらしい。同梱されていた荷物はそんな叔父がオレに渡そうと思っていた、神鋼軽鎧オリハルコンライトアーマーで、全属性耐性、重量軽減、回復力向上の効果がエンチャントされていた。


「兄貴の息子が、ノアが、本気で親兄弟の奴隷解放を目指しているのなら、近い将来必ずその名を聞くようになる。今日は会えなかったが、そんなに心配はしていない。名が聞こえなければ、それまでのことだ。会えたら、俺も手助けをしてやる。」

そう言って、去って行ったらしい。


さらに、父からは仲間ができたことについて、決して仲間を裏切るようなことをしないように書いてあった。また、余裕があったら年に1回でいいから回復薬を送って欲しいと要望があった。母は、とにかく怪我だけは気をつけて、ご飯をしっかり食べるようにと願っていた。兄からは、農業関係と政治・経済の本が欲しいと要望をしてきた。


兄は、農奴となっていかに自分たちが搾取されているかを痛感したそうだ。他の地域の農奴はわからないが、何とかユリウス辺境伯領の人たちの役に立つために、少しでも知識を身に付けたいと切々と書き連ねいてあった。


オレは読み終える胸が熱くなった。故郷で苦労する家族を思い涙が零れ落ちた。


手紙を読み終えたオレはジョアンナさんにお礼を言って、神鋼軽鎧オリハルコンライトアーマーを見せた。


ジョアンナさんは息を飲んで話し始めた。


「なっ。初めて見るわ。神鋼オリハルコンはね、失われた金属とも言われているのよ。現存する神鋼オリハルコンの鍛造はできるけど、あらたに神鋼オリハルコンを生産することができないのよ。だから、この神鋼軽鎧オリハルコンライトアーマーは5千万Cはするわね。いや、きっともっとするものでしょうね。もし、もしよ、あなたが手放すときがあったら、私に言ってね。わたしの【鑑定・用具】で一稼ぎするわよ。」


そう言ってオレの肩を揺さぶった。その目は、「他の人に言ったら許さないわよ。」という光を浮かべていた。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ノルテランド暦1992年3月12日

《王都ノルテ内冒険者ギルド》


今日、オレとクー兄は【冒険者】登録から1年を迎えた。そこで、オレとクー兄、それとカンナはギルドを訪れていた。


「ノア君にクース君。1周年おめでとう。あなたたちは、Lv11を超えているから、晴れて今日からは【冒険者E】になるわね。」


ジョアンナさんがオレたちを見て目を細める。


「ありがとうございます。これも、ジョアンナさんやカーン教官のお蔭です。」


クー兄がそう言って頭を下げる。オレもそれに続く。


「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。それじゃあ、ランクが上がったからいくつか説明することがあるんだけど、もちろん聞くわよね。」


そう言って、ジョアンナさんが説明を始めた。


★【冒険者】のランクについて。


【冒険者F】…新人クラス。卒業条件:【冒険者】登録1年が経過し、且つLv11以上になる。

【冒険者E】…一般クラス。卒業条件:Eランクの依頼を200以上、Dランクを100以上クリアする。もしくは、地下迷宮を2つ以上踏破する。

【冒険者D】…熟練者クラス。卒業条件:Dランクの依頼を100以上、Cランクを50以上クリアする。もしくは、地下迷宮を5つ以上踏破する。

【冒険者C】…一流クラス。ギルド教官はこのランク以上。卒業条件:Cランクの依頼を50以上、Bランクを25以上クリアする。もしくは、地下迷宮を10以上踏破する。

【冒険者B】…超一流クラス。ギルド長官や支部長はこのランク以上。卒業条件:ギルドへの多大な貢献。

【冒険者A】…伝説クラス。卒業条件:ギルドへの多大な貢献。

【冒険者S】…神話クラス。

※例外により、【スキル】や長官、支部長が昇格を決定する場合がある。(例:盟主を3体以上討伐し【盟主の覇者小】はD相当など。)


となっているそうだ。ちなみに、【冒険者E】以上になると緊急依頼がある場合、依頼参加中以外の【冒険者】は強制参加になり、不参加はペナルティがあるとのことだった。


叔父のハインツとヴォルツ家の従士だったダンは【冒険者B】だ。


★パーティ登録と師団の創設。


【冒険者E】以上になると3人以上でパーティを登録することが出来る。パーティ登録時のメリットは、魔物を討伐したときの経験値がパーティメンバーに平等に割り振られる。また、ギルドへ納める、手数料が割安になることだ。パーティにもランクがありランクC以上になると師団が創設できるようになる。師団員になると師団ごとに人頭税が掛かるため、個人の人頭税は免除となる。また、依頼についても師団の創設目的ごとに優先的に割り振られるようになる。例えば、巨人族オーガ討伐を目的に師団を創設すると、巨人族オーガ討伐の依頼は優先的に受けることができたりする。


説明を受けたオレたちはパーティを登録することにした。パーティ名は、オレの家族の自由を取り戻すことやカンナの開放を願う気持ちをこめて『自由への翼F』にした。Fとはランクをあらわしている。


「うん。いい名前ね。」

オレたちの申請用紙を見たジョアンナさんは一言そう呟いた。


「それじゃあ、最後に依頼をお願いしようかしら。」

そう言って、依頼カードを取り出す。


〔個人D:パーティE:討伐:カルブンクルス湖周辺村落の平和回復:ノルテランド暦1992年1月~4月末まで:カルブンクルス湖周辺:カルブンクルス湖周辺で蜥蜴リザード種などの討伐:達成報酬2百万C、魔結石および素材は別途買い取ります。〕


「これって、Eランクの依頼だけど…。カルブンクルス湖!あそこってパラム高原の向こうじゃないか。徒歩で1週間。馬車で3日は掛かる。しかも、道が良くないから馬車が壊れると補償もしないといけないし、これは受ける人いないよね。仮に、馬車で行ったとして、移動で往復6日、実働3日、予備日1日の合計10日。1日あたり20万C。3人割で6万ちょっと。魔結石や素材の買取を入れても、1日10万C程度の稼ぎにしかならない。これから、馬車代や携行食などの経費を差っ引くと、割のいい仕事とは言えないよね。」


カウンターの用紙に計算しながらクー兄が説明していく。


「そうなのよね。この案件だけ、ギルドでブラック化してしまって困ってるのよ。かと言って、【冒険者D】の仕事は生半可な【冒険者E】には回せないじゃない。それで、あなたたちにお願いできないかな~ってね。もし、受けてくれたら指名依頼扱いにして報酬5割り増しにするし、パーティランクFでも受諾可能にするから。ねっ、お願い。」


申し訳なさそうにオレたちを見る。


「クー兄、カンナどうする。」


「カンナはノア様の決定に従うのです。」


オレはカンナに頷き返してクー兄を見る。


「どうしようか。う~ん。馬車代が10日で50万Cは掛かるよね。5割り増しか。う~ん。」


クー兄は悩みに悩む。やおら、顔を上げジョアンナさんの方を向く。


「馬車代負担ってダメですか。」

そうクー兄がジョアンナさんにねだる。


(おお、さすがクー兄。いい提案だよね。オレも、もう一押ししないと。)


「討伐が完了していないのです。困っているのです。みんな、泣いているのです。かわいそうなのです。」

カンナが言う。


(カンナもナイスな援護射撃。オレもなんか言わないと。)


バシッ!!


「わかったわ。馬車代出しましょう。」

ジョアンナさんが机を叩いて宣言した。


(オレなんも言えなかったよ。みんなひどいよ。)


こうして、オレたちは『カルブンクルス湖周辺村落の平和回復』の討伐依頼を受けることになった。しかし、この依頼がとても大変な思いをすることになるとは、誰も思ってはいなかった。

『自由への翼』パーティメンバー


☆ノアシュラン☆

人族 男 11歳

【冒険者E】Lv12 HP:132 MP:120

武器…エスポワール(片手剣)・グラディウス(ミスリル3%合金)

防具…神鋼軽鎧オリハルコンライトアーマー腕小楯バックラー

その他…聖女息吹ホーリーブレス

一般スキル【剣士】【弓士】【隠密中】【魔術師火Lv2】【魔術師雷Lv2】【魔術師聖Lv2】【生活魔法Lv2】

特殊スキル【英霊の祝福】



☆クーサリオン=イェーガー☆

エルフ族 男 16歳

【冒険者F】Lv13 HP:116 MP:159

一般スキル【弓術士】【剣士】【魔術師水Lv2】【魔術師風Lv2】【生活魔法Lv2】【索敵中】

武器…風精霊十字弓シルフィードクロスボウ半月刀シミター(ミスリル3%合金)

防具…火強革鎧ファイアハードレザーアーマー聖短剣マンゴーシュ



☆カンナ☆

獣人族犬人種 女 13歳

【戦奴】Lv7

武器…火炎槍フレイムスピア

防具…強革胸当ハードレザーチェストプレート円盾ラウンドシールド

種族スキル【猛獣咆哮】

一般スキル【槍士】【盾士】【隠密中】【斥候中】【奇襲小】

※Lv11未満のためHPおよびMPは確認できない。


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