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第1話 魔物襲来!!

第1話です。


誤字、脱字がありましたら、ご連絡をお願いします。

8/15:誤字などを修正。

9/5:一部改訂を行いました。

オレの名前は、ノアシュラン。通称ノア。年は9歳、もうじき10歳になる。名字は、今はない。


ユリウス辺境伯の農奴ヴォルの次男だ。10歳になれば農奴として戸籍に乗るだろう。


3年前まではそうではなかった。


父はノルテランド国王より騎士爵位を拝命しており、ヴォルフガング=ヴォルツ(通称ヴォル)としてハーレン村を治めていた。オレは、父、母アンジーナ(通称アンナ)と兄サンドニス(通称ドニス兄)と一緒に領主館で暮らしていた。


そんなハーレン村はノルテランド王国の北部、ユリウス辺境伯爵領にある。冬が厳しいため決して豊かな土地ではなかったが、父をはじめ従士たちの活躍で治安も良く、家族みんなで楽しく暮らしていた。


村を巡回する父にドニス兄と同行すると、

「お館様、おはようごぜぇます。この前は開墾の手伝いありがとうごぜぇますだ。」「お館様、うちの坊主のためにお菓子をありがとうごぜぇます。」


村人たちがうれしそうに声をかけてくる。


私たちにも

「坊ちゃんたちも、お館様みたいなすばらしい騎士になってくだせぇ。」

と声をかけてくれた。


村人思いの父は絶大な人気を集め、ハーレン村ではユリウス辺境伯よりも人気があった。


オレも、ドニスにいもそんな父が誇りであり、大好きだった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


-----3年半前-----


《ハーレン村:領主館内》


そんなある日、領主館に魔物が出たとの報告が入った。


「ヴォル様。東の森を通った商人より魔物が出たとのこと。如何なされますか。」従士頭ギリスが父に対応を伺う。


「当然排除する。しかし、東の森は遠いな。野宿の準備も必要か。魔物の数と種類は分かるか。」

怪訝な顔して父が問う。


実は、ハーレン村は以前より魔物討伐に尽力しており、最近は見かけることはほとんどないのだ。そのため、自警団もかなり縮小しており、【剣士】【弓士】のスキルを持たない者もいた。


「なにぶん、商人の申すことではっきりとはしませんが、おそらくゴブリンではないかとのことです。数の詳細は不明ですが、20程ではないかと申しておりました。」

父に安堵の色が浮かぶ。


・ゴブリン…130cmほどの非力な魔物。布服を身に着け棍棒を持つ。10体以上の集団で生活する。


「その程度であれば、従士隊と自警団で十分だな。数が多ければご領主様に援軍を依頼しないといけないところであったが。」


「かしこまりました。」

ギリスが恭しく答礼をして話を続ける。

「して、自警団はいかほど召集をいたしましょうか?」


「そうだな。自警団は30ほどを。そのうち【弓士】持ちを10名は呼べ。2時間以内に集められるな。2時間後に領主館前に集合させろ。野宿の準備も忘れるな。いいな!」

父が決断をしてギリスに伝えた。


「かしこまりました。では後ほど。」

と言ってギリスは下がっていった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《ユリウス辺境伯:居城》


「ゲオル、ハーレン村の件、どうした。」

ユリウスが問う。


「はっ。商人に金を握らせ、領主に通報するように命じてあります。」

従士長ゲオルは応じながら慇懃な笑みを浮かべた。


「ふっ、ふっ、ふっ。彼奴め、配下の領主の分際で偉そうにしておるのが気に入らぬ。再三の増税もしようとせん。邪魔な奴だ。よいか、ゲオルよ、うまく射ち殺せよ。あの場所に魔物の群れを誘導するのに、結構な金が掛かった。抜かるなよ。」

とユリウスはゲオルを睨みつけた。


「お任せくだされ。万が一、打ち損じても次の一手を考えてあります。」


「さすがは、ゲオルだ。信用しておるぞ。ふぁっ、はっ、はっ。」

居城内に薄い笑い声が響いた。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《ハーレン村:領主館前》


2時間後、父は強革鎧に身を包み馬上にその身を翻していた。


その前には従士隊と自警団の面々。


従士とは、常日頃から領主に従い内務・軍務で供をする者のことである。ヴォルツ家には、ヴォルの父の代から従士を務めるベテラン従士頭ギリスを筆頭に、ダン・ギド・ミハイル・ユーリの合わせて五名がいる。


「アンナ、行ってくる。帰りは明後日になると思う。ノアもドニスも母さんに迷惑をかけるなよ。」

笑いながら父は言う。


「「わかった!!」」

兄とオレは返事をした。


「ようし、いい返事だ。」

そう言って父はオレとドニスにいの頭を撫でながら笑った。


「あなた、気をつけてくださいね。」

と心配そうに母が声をかけた。


そんな母を見て、

「大丈夫だよ。父さまは強いんだから。ねっ!」

とドニス兄は言った。


父は笑いながら

「はっ、はっ、はっ。任せておけ。ゴブリンに遅れをとるヴォルフガング=ヴォルツではないぞ。いいか、ドニスも私の後を継ぐのだ、稽古の手を抜くんじゃないぞ。」

ドニス兄は剣術が苦手なんだ。


「父さま、オレも!オレも、剣習いたい!!」


「ノア、お前は6歳になってからな。」

とオレに微笑んだ。


「わかった!!オレ、強くなるよ。強くなって、ドニス兄の従士頭になるんだ!!」

父はうれしそうにオレの髪の毛をかき回した。


そして、父は従士と自警団のほうを向き鼓舞する。

「よいか、皆のもの!東の森にゴブリンの集団が出た!これより討伐に出る!おそらく、帰還は明後日になるだろう!今回が初出征のものを多い。しかし、臆することはない!われらには【英霊の祝福】がある。われらの土地だ!われらの手で守るぞ!よいな!!」


従士隊や自警団の面々が

「「「おう!!」」」

と応じた。


「出発!!」

父の声に応じて隊列が進む。


出発する父や従士隊、自警団の背に「お館様、お気をつけて!!」「ギリス様、お願いします!!」「村のためにがんばって来いよ!!」

と応援の声が飛んだ。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ゴブリン討伐隊出発2日目午前10時頃

《ハーレン村:東の森街道沿い》


ヴォルに率いられた、討伐隊は翌日の10時頃、東の森の街道沿いに到着した。


「ギリス、一旦小休止だ。その間に斥候を出す。種類と数を確認して準備するぞ。」

ヴォルが命じる。


「かしこまりました。では、自警団からルカとジョシュを行かせましょう。【狩人】持ちですが、今日が初陣で経験が浅く少々心配ではありますが…。」

と眉をひそめながらギリスが応えた。


「相変わらず、ギリスは心配性だな。誰でも最初は初心者だ。経験を積めば良くなる。相手はゴブリン。そう心配することもなかろう。おいっ!ルカ!ジョシュ!ちょっと来いっ!」

ヴォルが自警団のルカとジョシュを呼び出す


「「はっ!ただいま。」」

二人がヴォルの前にやって来る。


「お前たちにやってもらいたいことがある。詳しくはギリス頼むぞ。」


「かしこまりました。さて、ルカ、ジョシュ、お前たちは若輩といえども【狩人】だな。」

ギリスは声を細めて問いかけた。


「さようでございます。私もジョシュも、幼少の頃より父に付いて森に入っておりました。【狩人】を得て4年目になります。」

ルカが応えた。ルカもジョシュも【狩人E】だ。


「そんな、お前たちを見込んで、斥候を任せたい。敵の種類と数を確認して報告をしてほしい。よいな!」

ギリスは声を強めて問う。


「勿論でございます。わたくしルカ、ジョシュ、両名にて斥候を行い、敵の種類、数を報告いたします。」

力強く応える。


「頼む。くれぐれも見つからないように。それと、敵に魔法使い、弓使いがいないか注意深く見てくれ。では、行け!!」

ルカとジョシュが走り去った。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ゴブリン討伐隊出発2日目午前11時頃

《ハーレン村:東の森:敵野営地付近》


街道沿いの林の中を、見つからないようにルカとジョシュは進む。


ルカもジョシュも初陣だ。斥候という張り詰めた気持ちを保つことができなかった。そのため、二人は声を潜めることなく、話しながら進んだ。そんな話し声を魔物たちは聞きつけ監視を始めたのだが、ルカもジョシュもまったく気づく気配がなかった。


「おい、ジョシュ。お前もギリス様の前で話せよ。ホント、お前はびびりだな。」

ルカがからかう。


ジョシュは決して無口なのではない。いわゆるびびりだ。お館様、従士頭、好きな子の前では緊張してしまって何も話せないのだ。


「ボクは、びびりじゃない!」

思わず、ジョシュが声を荒げる。


「ばかっ!声でけえよ。」

ルカが周りを見まわす。大丈夫なようだ。


顔を真っ赤にして、ジョシュはルカの前を進んだ。そんなジョシュの歩みが、はたと止まった。


どうやら、野営地を発見したようだ。


「おい、ルカ。なんだよ。こんなの相手は無理だよ。どうすんだよ。オレ、オレ、死にたくないよう。」

あまりのショックに、目に涙を浮かべたジョシュが振り返った。


ルカは気配を殺して、ジョシュに並ぶ。すると、その前には敵の野営地があった。


目の前には、50体近いゴブリンが野営していた。ゴブリンだけでなく、それらを指揮する、ホブゴブリンもいたのだ。ゴブリンは単独種では、規律も作戦もなくただの集団だ。自警団など連携できる部隊であれば、憂いもなく排除できる。しかし、ホブゴブリンに率いられると、集団戦を仕掛けてくるようになる。さらに今回は魔法を使うゴブリンメイジや弓を使うゴブリンアーチャーもいるのだ。


・ホブゴブリン…ゴブリンの上位種。ゴブリンより大柄で皮鎧を身に着けている。ゴブリンを指揮すると非常に厄介な存在。


・ゴブリンメイジ…基本的にゴブリンと同じ。布ローブを纏う。火弾や水弾などの弱攻撃魔法を使う。ゴブリンの集団にまれに混じっている。


・ゴブリンアーチャー…基本的にゴブリンと同じ。弓を使い遠距離から攻撃する。ゴブリンの集団にまれに混じっている。


「当初の報告とぜんぜん違うぞ。こんな敵と遭遇したら相当まずいぞ。下手したら死者が出る。至急、ギリス様に報告だ。」

ルカとジョシュは報告のために走り出した。


あまりの敵に恐怖し混乱してしまったルカとジョシュは、二人を監視し追っていく目の存在にいまだ気づいていなかった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ゴブリン討伐隊出発2日目午後12時頃

《ハーレン村:東の森街道沿い》


ルカとジョシュが真っ青な顔をして戻ってきた。


二人の狼狽振りに、ヴォルの周りに、従士隊、自警団の団長が集まる。


「ルカ、ジョシュ、ご苦労だった。報告しなさい。」

恐怖に震える二人にヴォルがやさしく声をかけた。


「は、は、はい。敵の数はおよそ50。ホブゴブリンのほかに、ゴブリンメイジやゴブリンアーチャーの姿がありました。」

ルカが何とか声を絞り出す。


隣でジョシュが同意するように頷いている。


「本当か。お主ら、ホブゴブリンやゴブリンメイジの見分けが付くのか。」

ギリスが心配顔で問う。


「わかります。似たような顔で明らかに上等な鎧をつけたひときわ大きな奴等と、ゴブリンなのにローブを身に纏ったのが居りました。」

ジョシュが思わず反論する。


「私にもわかります。ゴブリンで弓を持っているのはゴブリンアーチャーしか考えられません。」

ルカも続く。


「ジョシュが反論するぐらいだ。おそらく本当のことだろう。」

自警団の団長が認めた。


「そんな集団太刀打ちできるのか。」「作戦を立てないとまずいんじゃないか。」「ここは一旦引いて、領主に騎士団を依頼したほうがよいのではないか。」

皆が口々に言い合い始めた。


「みんな、聞いてくれ!」

ヴォルがおもむろに口を開いた。


「このままでは、多くの負傷者がでないとも限ら『敵襲だ!!敵が攻め込んできたぞ!!』

ヴォルが話そうとしたその時、周囲を警戒していた歩哨が駆け込んできた。


ヴォルの声を掻き消すように、ホブゴブリンの雄叫びが響く。

登場人物


・ノアシュラン…本編主人公でノアと呼ばれる。元騎士爵家ヴォルツ家の次男。農奴の息子で金髪碧眼。奴隷に落とされた家族を救い出し、ユリウス辺境伯を打倒してヴォルツ家を再興するのが夢。【英霊の祝福】を持つ。


・ヴォルフガング…ノアの父で農奴。ヴォルと呼ばれている。ユリウス辺境伯により、反逆者として奴隷落ちさせられた。家名はヴォルツといった。領主として優秀で、騎士としては慎重。


・アンジーナ…ノアの母で農奴。アンナと呼ばれている。温厚な人柄で誰にでも分け隔てなく接する優しい女性。


・サンドニス…ノアの兄で農奴。ドニスと呼ばれている。温厚な人柄で争いごとを嫌う。どちらかと言えば頭脳派。


・ギリス=ベヒシュタイン…ヴォルツ家の従士頭。元神虎隊で勇猛果敢。老いてなお現役を宣言する。


ルカ/ジョシュ…自警団の新人。【狩人】


・ユリウス=フォン=スタン…ノルデラント王国の北方を治める辺境伯。嫉妬深い性格で、領主としては愚鈍。優秀で人気者のヴォルに嫉妬して罠にはめる。


・ゲオル=ヒメネス…ユリウスに仕える従士長。ユリウスの悪の知恵袋的存在。

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