幕間 王立魔法学校
幕間です。
ノルテランド暦1992年2月
《王都ノルテ内自宅》
「ノア、昨日ギルドでジョアンナさんから王立魔法学校のパンフレット貰って来たから。ちゃんと、お礼も言っておけよ。」
そういって、クー兄はオレに1冊の小冊子を手渡した。
(紙だって安いもんじゃないのにこんな小冊子を作ってもったいない。)
「わかった。時間のあるときに読んでおくよ。お礼も言っておく。」
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<正式名称>
シェリング王立魔法学校
王立魔法学校は、人類として始めて竜種の討伐に成功したシュティフィ=フォン=シェリングが、ノルテランド暦898年に創立した2年制の魔法学校。その卒業生は優秀で多くが王宮魔術師となった。その功績により死後、女性として始めて名誉伯爵の爵位を追贈された。その理念と精神は王立魔法学校となった今でも連綿と受け継がれている。
<シェリング王立魔法学校学訓>
1.広く門戸を開放すべし。
2.種族・身分に分け隔てなく教育を施すべし。
3.強さこそを正義とし、弱き者を助けるべし。
<住所>
王都ノルテ北部地区1番地
この場所は、ノルテ城の北に位置しスラム街のど真ん中にある。そのため、学校へ通うことができる者は、護衛付きの送迎馬車を用意できるものか、能力の高いものとなる。
<入学資格>
入学年の10月に満13歳以上15歳未満の男女。人族、亜人族、獣人族を問わない。また、貴族、平民、奴隷をも問わない。入学年に関しては、男爵以上の貴族の推薦があり、なおかつ各地の冒険者ギルド長官が認めた場合は1年間前倒しで入学することが出来る。
<入学試験>
魔観石による属性判別と一番得意な属性の魔法の確認。上位40名が合格となる。(昨年度の倍率26倍)
<諸費用>
受験料…250万C
入学金…1千万C
授業料…年間3千5百万C
ただし、入学試験最上位者および入学試験受験時【冒険者】Lv20以上の者は入学金と授業料は免除となる。
<授業内容>
完全な選択授業制で何も選択していなくても、卒業条件を満たせば卒業することが出来る。
選択できる授業は、各属性魔法:Lv1・2・3、付与魔法Lv1・2・3、魔法史、魔術総論、魔術社会学など多岐に亘る魔法科目。剣術、弓術、槍術、騎馬などの戦闘科目。一般教養がある。
<卒業条件>
取得できる属性の魔法が全てLv3以上になるか顕著な研究結果の発表。もしくは【冒険者D】以上が卒業条件となる。
<年間行事>
『1年次』
10月…入学式
12~1月…年末年始休暇
4月…魔術競技会(学校一の術者を決める大会)
6月…魔物討伐イベント
7月…進級試験・終業式
8~9月…夏期休暇
『2年次』
10月…始業式
12~1月…年末年始休暇
4月…魔術競技会(学校一の術者を決める大会)
5月…騎士団仮入隊
6月…魔物討伐イベント
7月…卒業検定・卒業式
魔術競技会…王立魔法学校№1を決める格闘技大会。魔法だけでなく武器の使用も認められるので、魔術Lvが低くても勝ち上がることが出来る。優勝者は王都第一騎士団もしくは王都警備隊へ優先的に採用され、叙爵される。かつての優勝者に、現王都警備隊第一大隊隊長リュングベリ=フォン=シュナイダーやハインツ=ヴォルツがいる。
騎士団仮入隊…王都にある騎士団に仮入隊する。所属先はここまでの成績と本人の希望を考慮して各団長が指名する。一番人気は王都第一騎士団。仮入隊中は登校しない。本人の責任の下、正式な騎士団員とほぼ同じ任務に就く。仮入隊の結果採用が決まることも多い。
魔物討伐イベント…冒険者ギルドと連携して実施。最も多くの魔結石を回収したグループと最も高価な魔結石を回収したグループが優勝となる。優勝者は【冒険者】のランクが無条件で1段階上がる。
<学生生活>
授業は選択科目によって異なるが、月~金曜日が登校日となる。授業時間は①9:00~12:00 ②13:00~15:00 ③15:30~17:30である。
『ある1年生の時間割』騎士団員を目指す生徒
月曜日①火魔術Lv1 ②一般教養 ③魔法社会学
火曜日①聖魔術Lv1 ②剣術 ③一般教養
水曜日①火魔術Lv1 ②騎馬 ③弓術
木曜日①聖魔術Lv1 ②魔法総論 ③生活魔法
金曜日①聖魔術Lv1 ②魔法史 ③付与魔術Lv1
※入学時の選択状況であり、習熟度合により選択科目は変わります。
『ある2年生の時間割』研究職を目指す生徒
月曜日①水魔術Lv3 ②水魔術Lv3 ③研究室
火曜日①付与魔術Lv2 ②付与魔術Lv2 ③研究室
水曜日①剣術 ②騎馬 ③研究室
木曜日①風魔術Lv3 ②風魔術Lv3 ③研究室
金曜日①空き時間 ②聖魔術Lv2 ③研究室
<学外活動>
学外活動として冒険者ギルドに登録している生徒が多い。学校内には、冒険者ギルドの出張所があり依頼の受付や魔結石、素材などの買い取りを行っている。また、土曜日、日曜日に依頼をこなし月曜日に換金している風景はもはや、週頭の風物詩といえる。
<付属施設>
エミール記念図書館…ノルテランド暦13世紀に起こった、オークの大反乱で王都に戦禍が及び王立魔法学校の図書館も火災に巻き込まれた。火が燃え広がる図書館で、エミールという年若い司書が全身に火傷を負いながら貴重な書物を守った。その、エミール司書の功績を讃えるために建造された図書館。蔵書の量は、近隣諸国の追随を許さない。学生は無料で利用できる。貴重な書籍も数多く収蔵されているため、外部利用には保証金として大金貨1枚が必要である。
王立魔法学校付属治療院…王立魔法学校から奨学金が給付(貸与ではない)された場合、卒業後2年間は毎週1日治癒術士の任に就く。このように、卒業生が無給で治癒術士の任に就くため回復は無料、中回復は3万Cで治癒してもらえる。また、毎週土曜日にはスラム街で炊き出しを行っている。
学生寮…王立魔法学校の敷地内にある学生寮。数多くの学生が生活を送っている寮。討伐依頼などを行う学生も多いため門限等は無く、基本的に放任主義となっている。学生責任で火事などが起こっても、学校サイドは何も行わない。過去3度火災によって消失しているが、その都度学生の手により再建されている。
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「ジョアンナさん、王立魔法学校の案内ありがとうございました。昨日、全部読みました。」
「そう。どうだった。面白かったでしょう。あなたは、今年の9月になったら入学試験を受けるのよ。ちゃんと準備しておきなさい。」