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ノアの冒険譚 成り上がり人生記(仮)  作者: 世迷言言
第三章 迷宮探訪とカンナ登場
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第22話 ドワーフの鍛冶屋さんとミスリルの武器

第22話です。

ノルテランド暦1991年12月中旬

《迷宮都市ヴィッテル》


今日、オレは初めてドワーフに会う。そう思うと胸が高鳴り、朝早く起きてしまった。クー兄とは昼に冒険者ギルドで待ち合わせだが、暇なオレは迷宮都市の散策に出かけた。


ここ、迷宮都市は王都ノルテ程の大きさはない。人口8万人程の地方都市だ。しかし、この西部を治める辺境伯領の中では最も大きい都市だ。そして、このヴィッテルはリッター魔法連合国への物流の拠点となっており、珍しい魔法具や魔獣の素材が仕入れられる。もっとも、そんなものはどれも1千万C以上で、今のオレたちには高嶺の花だ。


オレは、魔法具店、武器防具屋を覗く。


(おぉ!天空歩靴スカイウォーク、あっちは古代十字弓エンシェントクロスボウ。どれも、魔法補正のついた装備だ。うわっ、あっちのバスタードソードなんて1億3千万Cだよ。)


冒険者ギルドまでの道をひやかしながら進む。


途中、屋台街を歩いていると、

「おう!兄ちゃん、串焼きどうだ。」「果汁100%の果実水美味いよ。」

と威勢のいい掛け声が聞こえる。


「おう!おう!お前らとくと聞け。こいつはな、生まれはヴィッテル近郊の、帰らずの森の片田舎。王国の勇者に見初められ、あっという間に討ち取られ、素材になって船出する。一山、二山乗り越えて、艱難辛苦の暁にたどり着いたが迷宮都市。おいらの手に収まれば、一串、二串焼かれけり。さあ、この土蜥蜴アースリザードの串焼き。一串3百Cだが、今日だけ特別、2百Cでどうだ。さあ、買った、買った。」


「買った!」「こっちも一串。」「おっちゃん、三串だ。」

と、飛ぶように売れていく。


オレも一串買って、早速ぱくつく。


(美味い。何だこの串焼き。噛めば噛むほど、肉汁が口中に広がる。それでいて、重くない。こんな串焼き初めてだ。)


「おっちゃん、もう一串追加だ。」


「おっと、兄ちゃん。すまないな。売り切れだ。また、仕入れとくからな。ぜひ来てくれ。」


(わずか、20分で売り切れか。土蜥蜴アースリザード討伐の依頼があったら自分で入ってみよう。)


そう思いながら、オレはギルドへ向かって歩いていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《迷宮都市ヴィッテル内冒険者ギルド》


「ノア、こっちだ。」


クー兄が手を振る、その向かいの席にはカーン教官が座っていた。


「ご無沙汰してます。カーン教官。今日はどうしたんですか。」


「おう、久しぶりだな。こっちの、ギルドの奴らから、凄い新人ルーキーがいるって聞いたんで見に来たんだ。そうしたら、お前らのことじゃねえか。驚いたぜ。」

そう言って、オレの肩をバンバン叩く。


「それで、昨日まで小鬼族ゴブリン迷宮に潜ってたらしいけど、今日はどうしたんだ。いくらなんでも、連戦はしないだろ。」


オレたちは、昨日までの経過と防具の製造を依頼することを説明した。


「そうか、それでどんな装備にしたいんだ。」


「オレの皮鎧レザーアーマーがもうボロボロで効果がないから、ハイクラスホブの強革鎧ハードレザーアーマーを芯に、ファイアオーガの皮革と火蜥蜴ファイアリザードの表皮を使って、火に耐性のある火強革鎧ファイアハードレザーアーマーにしようと思ってます。それと、オレの剣と盾小楯バックラー、クー兄のレイピアの強化も出来ればしたいんです。」


「予算はどれくらいだ。」


「3百万Cです。」


「3百万か…。微妙なとこだな。ちょっと足りんと思うぞ。そうだ。お前ら、鍛冶屋のウィレム爺さんとこにしろ。そこで、わしの紹介だと言えばちっとはまけてくれる筈だ。」


「わかりました。行ってみます。」

そう言って、オレたちは頭を下げた。


「それとな、ノア。お前さんが、ジョアンナにお願いしていた、ハインツとダンの行方だけどな。ハインツはまだわからんが、ダンはわかったぞ。」


「えっ。本当ですか。ダンは今どこにいるんですか。」


オレは思わず身を乗り出す。


「ジョアンナが言うには、南部のアインリッヒ男爵の依頼で地域の魔獣討伐を率いているようだ。一段落したら、王都に連絡を遣してもらうように依頼したそうだ。国からも補助の出ている大掛かりな魔獣討伐らしいから、すぐには片付かないと思う。」


「そうですか。また、連絡があったら教えてください。よろしくお願いします。2月の末には王都に戻りますので。」


「わかった。その頃には、お前の出した手紙の返事も届くだろうしな。」

そう言って、カーン教官はギルド内に戻っていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《迷宮都市ヴィッテル内ウィレム鍛冶屋》


そこには、偏屈そうな爺さんがいた。


「で、なんの用だ。わしゃ、忙しいんじゃ。冷やかしならとっとと帰りな。」

そう言って、酒を呷る。


「私は、クースと申します。こちらはノアです。カーン=シェンカーの紹介で依頼に来ました。」


「なん、じゃと。」

ギロリとオレたちを睨む。


(教官、なんかやったのか。目が怖いよ。)


…。…。…。沈黙が流れる。


「そうかっ。カーンの紹介か。まあ、入れ、入れ。ほれ、座れ。いや~。よく来たな。歓迎するぞ。」

破顔一笑。急に歓待を始めた。


「あの~。カーン教官とはどのようなご関係で…。」

クー兄が聞く。


「関係などない。鍛冶屋と冒険者だ。じゃが、ドワーフのわしと呑み競べて潰れんかったのは奴だけじゃ。心の友。まさに、心友じゃ。で、今日は何用じゃ。武器か防具か。んっ、どうした。さっさと話せ。」

そう言って、急かす。


クー兄が依頼したい装備などの説明をする。


「そうか、防具なしじゃ迷宮はおろか、何の討伐も出来んな。急いで、取り組むとしよう。ご希望の火強革鎧ファイアハードレザーアーマーじゃが、販売するとなると420万Cじゃ。じゃが、自分で素材を用意しとるんだよな。見せてみろ。」

そう言って、オレの取り出した、ファイアオーガの皮革と火蜥蜴ファイアリザードの表皮、強革鎧ハードレザーアーマーを鑑定する。


「ん。いい素材じゃ。この火蜥蜴ファイアリザードの表皮なんて、わしらドワーフの職人並みの技術じゃな。これなら、加工賃と実費のみでいいな。本来なら、120万Cじゃが1百万Cでいいじゃろ。その両手剣ツーハンドソードだが、極々微量だがミスリルが織り込んである。おそらく、迷宮の【冒険者】の遺品をハイクラスホブが使っておったんじゃろ。しかし、そのままじゃお前には重過ぎるな。鋳造し直して、グラディウスに打ち直そうかの。残ったミスリル合金で、クース用に半月刀シミターを作ろう。腕小楯バックラーは、残ったファイアオーガの皮革で強化すれば安く済む。最後に鏃じゃが、これは他に素材を持っておらんようなら、通常の鉄の鏃じゃな。予算はいかほどを考えとるんじゃ。」

そう言って、素材を整理しながらオレたちに確認をする。


「できれば、3百万C以内に抑えたいと思っています。」


「3百万か…。ま、いいじゃろ。それでやってやる。カーンの紹介じゃからな。奴に恥は掻かせられん。」


「ありがとうございます。」


「期間はおよそ10日間頂くがいいな。」


「「はい。よろしくお願いします。」」

オレたちは揃って頭を下げた。


(さて、10日間か。結構暇になるな。それまで、何してようかな。)


そんなことを考えていると、ウィレムがオレたちに話しかける。


「おい。お前ら、10日間暇だと思ってるんじゃないか。甘ったれるなよ。」

ウィレムが厳しい顔をしてオレたちを睨む。


「どういうことですか。」

クー兄が尋ねる。


「おいおい、わからんのか。その間、暇はないぞ。いいか、さっきも言ったが、お前らの新しい武器じゃが、ミスリル合金を使っている。おい、小僧。ミスリルの特徴は知っとるか。」

と、ウィレムがオレに尋ねる。


「単体だと鉄よりも脆いので、鉄と混ぜて合金とする、ですか。」


「それじゃあ、50点じゃの。ミスリルは確かに脆い。それで、合金にするんだが、ミスリルは魔素マナを通すことで、硬度、斬れ味が増すんじゃ。そして、ミスリルに対して耐性を持っている魔物はほとんど存在しない。それで、ミスリルは人気がある。じゃが、ミスリルに魔素マナを通すことは難しい。修行せねば、一筋縄にはいかんじゃろ。そういえば、昔、それが得意な騎士がいたな。なんと言いよったか。…神虎隊という騎士隊の隊長だった男じゃ。その男が国王から下賜された剣はミスリル製で、危機に陥ると全身の魔素マナが剣に宿り、どんな魔獣でも撃退しておった。あの、戦争さえなければ【冒険者】として歴史に名を残していたかもしれん男だ。」

そう言って、昔を懐かしむ。


「その剣って、これですか。」

そう言って、オレはエスポワールをBOPから取り出し、剣を引き抜いてみせる。


「おぉ。これじゃ、これじゃ。何でこの剣を持っとる。」

そう言って、剣を取り上げようとする。


しかし、持ち上がらない。


「そうじゃった。エスポワールは【英霊の祝福】持ちに、仕えるんじゃったな。貴重な剣じゃ。大事にしろよ。」


「わかりました。」

そう言って、納剣しBOPに収納した。


こうして、オレとクー兄は新規の武器防具の準備が揃うまで、迷宮探索を中断し魔素マナを武器に通す練習を続けることにした。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《迷宮都市ヴィッテル内某所》


その男は、口を歪めながら少女に折檻を続ける。


「貴様、わかってるのか。貴様が役立たずだったせいで、魔物部屋モンスタールームのお宝をガキどもに横取りされたんだぞ。」

そう怒鳴りながら、少女の顔に平手打ちを加える。


「申し訳ありませんなのです。申し訳ありませんなのです。」

少女は涙に耐え、土下座をして頭を地面に擦り付ける。泣いたら折檻が酷くなるだけだということを少女は知っている。そして、この男から奴隷を馘にされると、死ぬのと同義だということをこの少女は知っている。


男はさらに折檻を加え、気が済んだのか部屋…物置小屋…から出て行った。


(いつからだろう。なんで、こんな人生になったんだろう。だれか…、だれか助けて。)


人知れず、少女は涙を流し続けた。

今後のノアとクースの装備と現在のステータスです。


ノア(Lv8)…人族

武器…エスポワール(片手剣)・グラディウス(ミスリル3%合金)

防具…火強革鎧ファイアハードレザーアーマー腕小楯バックラー

その他…聖女息吹ホーリーブレス

【剣士】【弓士】【隠密中】【魔術師火Lv1】【魔術師雷Lv1】【魔術師聖Lv1】【生活魔法】【英霊の祝福】


クース(Lv9)…エルフ族

武器…風精霊シルフィードクロスボウ・半月刀シミター(ミスリル3%合金)

防具…強革鎧ハードレザーアーマー聖短剣マンゴーシュ

【弓術士】【剣士】【魔術師水Lv1】【魔術師風Lv1】【生活魔法】【索敵小】

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