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ノアの冒険譚 成り上がり人生記(仮)  作者: 世迷言言
第二章 新人冒険者時代
19/156

第15話 お引越し

第15話です。

9/15:一部改訂を行いました。

ノルテランド暦1991年10月中旬

《王都ノルテ内マクマネマン商会》


オレはクー兄と一緒にマクマネマン商会を訪れていた。


今回の目的は、家を借りることだ。


家を借りるにあたり、事前にジョアンナさんに不動産屋さんをリサーチし、注意すべき点を聞いておいた。


そこで、話しに上がったのがマクマネマン商会だ。他にも、ホーネッカー商会も話題に上がったが、高級志向で急上昇中と聞いて候補から外したのだ。


また、未成年者だけで訪ねることになるので事前に連絡をお願いしておいた。


「いらっしゃいませ。マクマネマン商会にようこそ。ジョアンナ様よりお話し受け賜っております。わたくし、マクマネマン商会代表マクマネマンと申します。今日はどのような物件をお探しでしょうか。」


にこやかな営業スマイルを浮かべた、30代後半の男が出てきた。


「家を借りたくて探しています。王都内で、一軒家。【冒険者】可の物件はありますか。」

とクー兄が尋ねる。


【冒険者】は、依頼で護衛や討伐、採取に出ると長いと1ヶ月近く留守にすることがある。また、武器の確認や魔術の練習などで結構な音が出るため、【冒険者】には貸したくないと言う家主もいるのだ。


「私どもは、【冒険者】様御用達を自負しておりますので、全ての物件で入居可能でございます。それでは、こちらの物件などいかがでしょうか。」


そう言って、1枚の案内を見せる。


「こちら、ギルドから徒歩8分。各種商店、商会へのアクセスが大変便利な物件となっております。1階建てでお部屋の間取りは2LDKでトイレも屋内完備。お風呂はございませんが、湯浴みに便利なシャワー室完備となっております。お家賃は大変お値打ちの月額13万C、保証金として別途1ヶ月分となっております。」


(おぉ、完璧な営業トークだ。でも、ジョアンナさんがだまされるなって言ってたな。最初は少し安めに予算を言うんだったな。条件もこちらに都合のいいのばかりを付けて…。)


「そうですね。予算的には8万Cぐらいで。部屋の希望はリビングのほかに3部屋以上欲しいな。で、地下室か庭に物置がある物件。それと、トイレのほかに風呂も欲しいな。あぁ、そうだ、別にギルドまで20~30分ほど離れていてもいいかな。」と希望だけ伝える。


「そ、そうですか。ただ、その条件では予算的に少し厳しいと言わざるを得ません。それでは、この辺りではいかがでしょうか。」


そう言って、また1枚の案内を見せる。


「ギルドから少し遠い物件となっておりますが、こちらは、南に面した斜面に建つ、お庭の広い物件となっております。2階建てでお風呂、トイレ完備。ただ、元々ドワーフのご一家のお住まいだったため、お部屋が少々お狭くなっており、2階の二部屋はそれぞれ10平米、1階の居間は18平米、客間は12平米となっております。地下室もございますが、前にお住まいだった方の荷物が残されており、片付けないと使えません。また、クリーニングも済んでいませんが、現状お渡しでよろしければ、私どもも泣きましょう。保証金なしの10万Cかっきりでいかがでしょうか。」


「「おぉ~。」」


完璧な口上に思わず歓声が洩れた。


「物件の内容はわかりました。1度見学をして決めたいのですがいかがでしょうか。もしよろしければ、この後早速拝見したいのですが。」

とクー兄が話を詰める。


「では、カギを取ってまいりますので少々お待ちください。」


オレとクー兄は、マクマネマンさんに連れられて物件を見に行く。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《王都ノルテ内住宅街》


「ジョアンナ様から伺ったのですが、ノアシュラン様はそのお年ですでに【冒険者】としてご活躍なんでいらっしゃるんですね。私も昔は…。」

マクマネマンのお追従が続く。


(…。…。…。遠い。遠いよぅ。)


オレたちは、マクマネマンさんの発し続ける言葉を聞きながら40分以上歩き続けた。


そして、急勾配の坂を上ると、そこに瀟洒な一軒家が建っていた。


「ご覧ください。こちらが、マクマネマン商会が自信を持ってお勧めする、王都を一望できるロケーションの一軒家でございます。」


「はぁ、はぁ、はぁ。ここまで40分ちょっとか。クー兄、結構ギルドから遠いけどどうする。」


「ん。そうだね。確かにちょっと遠いよね。でも、この眺望は捨てがたいね。中の様子も見て考えようか。」


そう話しながら、マクマネマンさんと家の玄関をくぐる。


「「うわっ。」」

オレとクー兄は思わず声を上げる。


(うっ。何のにおいだ。水がめの水が腐ってるよ。なんで捨てていかないんだよ。)


オレとクー兄は急いで窓を開け換気を行う。


「こちら、急に転居をされたようなんですが、どのような事情で貸家となっているんですか。」

とクー兄が尋ねる。


「私も守秘義務がございますので詳しい事情は申し上げにくいのでございますが、ここは先刻も申し上げましたようにドワーフのご一家がお建てになって住まわれておりました。その方は、貴族様にお仕えする【冒険者】だったのですが、貴族様が急にご領地へ赴かれることになりまして、急遽このお住まいを貸し出したいと当商会へお申し出がありました。そのような次第でございます。」


マクマネマンさんは守秘義務と言いながらすべてを教えてくれた。


(この人なんでも話してくれるけど大丈夫か。)


「マクマネマンさん。地下室もお願いします。」

クー兄がそう言って地下への階段を下りる。


マクマネマンさんが地下室の鍵を開けると、


「「なにっ!!」」


そこは、足の踏み場もないほどに放り込まれた、武器防具と素材の山だった。


「こちら、【冒険者】だったので採取した素材や獲得した武器防具はここへ放り込んでいたそうです。」


クー兄がいろいろと手にとって見比べていく。


「私も、専門家でないので鑑定は出来ないけど、今の私たちの装備よりいいものもあるね。ただ、サイズがドワーフ仕様のものも多いので、高く売れないのかもしれないね。」


「その通りでございます。私どもの商会の者もここの撤去費用と売却益の差額でだいぶ頭を痛めておりまして…。【冒険者】であれば素材の活用など専門だと思いますので、われわれが処分するよりいいだろうと思っております。そのため、現状渡しを基本に借主を探しております。」

そう言って、頭を下げる。


居間に戻ったオレたちは物件について相談を重ねる。


「私はここでいいと思うな。下の素材もジョアンナさんに言って鑑定してもらえば値がつくものもあるだろうし、今の鎧に手を加えたい素材もいくつかあるしね。それに部屋なんかも今なら【生活魔法】で掃除することが出来るからあれくらいなら負担にならないよ。お風呂も結構大きいけど、井戸から近いから水汲みも楽そうだしね。ノアはどうかな。」


「クー兄がよければいいよ。素材の部屋も宝探しみたいで面白いしね。」


クー兄は苦笑してうなずいた。


「マクマネマンさん。ここで決めます。ただお家賃なんですけど…。保証金ありの8万Cでどうですか。」

クー兄が値引き交渉を始めた。


「それでは、私どもの収益が…。」

マクマネマンが渋る。


「じゃあ、8万5千Cで。」

クー兄が畳み掛ける。


「わかりました。クーサリオン様には負けました。ここは、思い切って勉強させてもらいましょう。保証金1ヶ月で家賃9万Cでいかがでしょうか。」


クー兄が戦いに勝った。約40万Cの節約に成功した。


それから1週間オレはクー兄と新居に通い【生活魔法】を駆使して掃除を行った。そのお蔭で地下室以外の掃除を終えることが出来た。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《王都ノルテ内自宅》


今日は、ジョアンナさんが素材の鑑定に来る日だ。


(遅いなあ。10時過ぎだって言ってたのに、もうじき11時だよ。)


すると、玄関からドアノッカーの音が聞こえる。


オレが迎えに出ると汗にまみれたジョアンナさんがいた。


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。ふぅ~。あなたたちなんて所に家を借りたのよ。あの坂を見た瞬間、私の目から涙が零れたわよ。私は【冒険者】じゃないのよ。」

肩で息をしながら、ジョアンナさんが室内に入って来る。その後ろからは元気な足取りのカーン教官だ。


「お前さん方、引越しおめでとう。景色もよくていいところだな。ちょっと、ギルドまで遠いけどな。」

と楽しそうに入ってくる。


「ちょっと~。どこが、ちょっとよ、どこが…。この汗でせっかくのメイクが台無しよ。」

とジョアンナさんの泣き言が響く。


「まあ、まあ。今日は素材の鑑定だろ。一息入れたら、早速はじめようか。」

カーン教官が執り成す。


「そうね。せっかくここまで来たんだもの。きっちり見させていただくわよ。」ジョアンナさんの目が光った。


(ジョアンナさん、目が怖い。)


冷茶でもてなしたオレたちは、早速地下室へ降りることにした。


「どうぞ。」

そう言って、地下室のドアを開ける。


「「これはっ。」」

二人の目が期待に輝く。


「ちょっと、こっち見なさいよ。これは、火蜥蜴ファイアリザードの表皮ね。こっちは魔樹イービルエントの樹脂よ。こっちは、黒妖犬ブラックドッグの牙じゃない。ここは宝の山じゃないの。」

とジョアンナさんがはしゃぐ。


「う~ん。こっちは、ちょっと厳しいな。討伐で回収した武器はそんなにいい物じゃないようだ。お前さんの持っている、エスポワールやエルブンボウとは比ぶべくもない。ただ、こっちの鎧はいいな。ドワーフサイズでお前さん方には合わないもんだけど、鎧同士を結合すればお前さん方のサイズにもなるはずだ。このガントレットは盾のもてない【弓士】には最適の一品だぞ。こっちのラウンドシールドは皮製だけどオーガの表皮を使っているから剣撃に効果を発揮するぞ。こっちの腕小楯バックラーはノアにいいんじゃないか。」

そう言って、いくつかを薦めてくれた。


結局、素材として、今の装備に組み込むことの出来るものや、将来的に役立ちそうなものを除き庭に運び出した。


火蜥蜴ファイアリザードの表皮は強皮鎧に火耐性を付ける素材として用い、黒妖犬ブラックドッグの牙は鏃に使うことにした。


結局、岩石猪ロックボアの毛皮、八本足熊スパイダーベアの肝、魔樹イービルエントの樹脂など多くの素材が売却できることがわかった。


武器防具は、ドワーフ用のものが多く値付けが難しかったようだが、カーン教官の指示に従って庭に運び出し、お茶を入れて一服をする。


10月にしては暑い日だったが、火魔術の吸熱を使って、程よく冷やしたお茶が心地いい。


「ホントにこんなに売りに出していいのか。よく、マクマネマン商会のやつらが処分を許可したな。」

人心地つくとカーン教官がオレに尋ねてきた。


「はい。ドワーフ用で処分に困っていたようで現状渡しで処分を任せる、と仰っていました。」


「そうか、わかった。じゃあ、明日、ギルド専属の商会のやつらを遣すからこの、備品と素材を渡してくれ。」


「ノア、クース。今日はありがとう。明日は、結構な値で売れるわよ。それで、現金でもいいんだけど、そろそろお金を現金で持つのも大変になったと思うからギルドで口座を作らないかしら。残額はSOPですぐに確認できるし、出し入れもBOPで出来るから便利この上ないわよ。」


「そうだな、そろそろいいかも知れん。宿と違って、討伐などで家を空けると貴重品は心配だからな。他に値の張るものは地下室に入れて、入り口にカギの魔法具を用意しろよ。」

カーン教官もアドバイスをくれた。


ジョアンナさんから薦められたオレたちは、すぐに口座を作る。


後日、口座の書類の作成をジョアンナさんと約束し、二人を送り出した。


こうして、オレたちの家の準備が整った。明日からは、依頼を十分にこなしてスキルアップに励むのみとなった。



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