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ノアの冒険譚 成り上がり人生記(仮)  作者: 世迷言言
第二章 新人冒険者時代
15/156

第11話 盟主討伐

1500以上のアクセスありがとうございます。

第11話です。

9/15:一部改訂を行いました。

ノルテランド暦1991年7月中旬

《王都ノルテ内冒険者ギルドカウンター》


刃蟷螂ブレードマンティス騒動から少し経ったある日、オレは冒険者ギルドのカウンターへ来ていた。今回の目的は、故郷へ手紙を送ること。


本来であれば、官営の馬便制度を利用するのだが、農奴への手紙はすべて検閲の対象となる。オレは、ユリウス辺境伯領を出奔した身だ。検閲にかかると、父や母が手引きをしたものとして処罰されてしまう可能性があるのだ。


そのため、ギルドに相談に来たという訳だ。


「う~ん。馬便以外で手紙を送るのは難しいわね。」

渋い顔をしてジョアンナさんが応える。


「方法が無い訳ではないわ。一つ目は、北方へ依頼へ向かう【冒険者】に、依頼料を渡して寄り道をしてもらう方法。二つ目は、あなたのような農奴の次男をスカウトに行く【冒険者】に手紙を託す方法ね。」


「どちらの方が早く着きますか。」


「そうね。北方へ行く依頼があれば一つ目の方法が早いんだろうけど、北方の依頼はユリウス領のギルド支部で受け付けていると思うの。そうなると、依頼が発生するまでどれくらいの時間が掛かるかわからないわね。」


(なるほど。わざわざ、この王都まで依頼に来るよりは、ユリウス領で依頼をしたほうが手間が掛からないもんな。)


「それよりも、農奴の子のスカウトに託すほうが現実的よ。8月~10月の間に地方領を視察して、めぼしい農園にあたりをつけて、1月~3月に連れ出しに行くのよ。今なら、視察に間に合うから頼んでおくことも出来るわよ。視察のときに手紙を託して、連れ出しに行くときに返事の回収がいいわね。」


「そうですか。」


「えぇ。スカウトの視察は秘匿事項だから詳細な日程は教えてあげることが出来ないけど、7月中に私に預けてもらえれば担当者に渡すわ。」


「ありがとうございます。」


オレは頭を下げる。


「イルやジャスなんかにも教えてあげていいですか。」


「いいわよ。あの子たちも、家族に会えなくて寂しいだろうから、朝、ギルドで見かけたら声をかけてあげなさい。」


オレはジョアンナさんに礼を言って、ギルドを後にした。


(父さん、母さん、ドニス兄、みんな元気かな。逢いたいなぁ。手紙、何を書こうかな。たった数ヶ月だけど伝えたいことがたくさんある。ジョアンナ、カーン教官、クー兄、イルやジャス、リュング、食いしん坊のルイーゼ、たくさんの人に出会った。ゴブリンもスノーラビットも狩った。伝えたいことがたくさんあるな。でも、最後の言葉だけは決まってる。いつか、いつかまたみんなで一緒に暮らそう。)


オレはありったけの思いを手紙に託し、ジョアンナさんに預けた。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ノルテランド暦1991年8月

《王都ノルテ郊外丘陵地帯》


クー兄との討伐に自信をつけ始めたオレは連れ立ってゴブリン討伐に来ていた。


「ノア、ゴブリン討伐は新人討伐以来だな。あの時は、お前に1体負けたが今日は、負けないよ。」

と弓弦を鳴らしクー兄がオレに話しかける。


「あの時は、クー兄がゴブリンメイジを仕留めてくれたからオレが勝てたんだよ。今日は、もっと差をつけて見せるよ。」


(今日は、クー兄にいいとこ見せ付けてやるぞ。そのために、昨日わざわざ半日掛かりで研いだんだ。でも、エスポワールは凄い剣なんだけど、研ぎに出せないんだよな。なんせ、剣を持てないからね。)


そんなことを考えながら丘陵地帯を進む。


ガキンッ!バシュッ!という音とともに叫び声が聞こえる。


「「剣戟だ!!」」


オレたちは音のする方に走った。


音の近くに忍び寄り、木の陰から状況をうかがう。そこには、一際大きなゴブリンが刀を振り上げ男に襲い掛かっていた。


ゴブリンは通常130cmほどでぼろきれを纏い棍棒で武装しているが、そのゴブリンは身の丈2m以上あり、マントを身に纏い、両手剣ツーハンドソード強革鎧ハードレザーアーマーで武装している。


(あれはなんだ。あれがホブゴブリンなのか。ゴブリンとあんなに違うものなのか。)


少し離れたところに女性が倒れている。よく見ると、おそらくパーティメンバーたちだろう、女性を守りながら大きなゴブリンたちと戦っていた。


(あっちがホブゴブリンか。じゃあ、あれはなんだ。それよりもあの倒れている人だ。)


「助けなきゃっ!!」

オレはそう言って飛び出そうとするが、クー兄が手で制す。


「なぜっ!何で止めんのっ!」

オレはクー兄に食って掛かった。


「まぁ、待て。あれは、あちらのパーティの討伐だ。頼まれていないのに手を出すと勝手に分け前を横取りしたとギルドに訴えられるぞ。カーン教官の座学で習っただろう。」

クー兄は落ち着いて答える。


オレたちは、木陰から見守り続けた。しかし、負傷者は増すばかりだ。耐え切れなくなったオレは、負傷し倒れている女性に話しかけた。


「大丈夫か。」


「くっ。これぐらい平気だ。それよりも盟主が生まれた。ゴブリンロードだ。」

すると女性は顔を歪めながら説明する。


・ゴブリンロード…ゴブリン系モンスターの盟主。2m近い体躯を誇り、鎧と剣で武装している。その剣、鎧、マントも武器防具の素材となる。マントは、魔法耐性があり防刃効果もある。


はっきりとした理由はわかっていないが魔物や魔獣にはある条件下で、大型で賢く獰猛な個体が生まれることがある。それが、盟主だ。ロード・キング・カイザー、統一された呼び方はないが、ゴブリンの場合、ゴブリンロードと呼ばれる。


「子どものお前に頼むことではないのはわかっている。アービンたちをうちのパーティのやつらに手を貸してやってくれ。だれか呼びに行ってくれるだけでいい。」苦しそうに頭を下げる。


たしかに、パーティのメンバーを見ると、徐々に戦力が削られていっているようだ。オレたちは相談した結果、呼びに行っても間に合わないと判断しこの討伐に参戦することにした。


オレたちの討伐は、前衛がオレでクー兄が後衛だ。クー兄は、ロードに牽制を射掛けながら周囲のホブゴブリンを射抜いていく。


オレはゴブリンロードに向かって駆け出した。


自分の回りのホブゴブリンを狩ったクー兄は、倒れている冒険者達に回復薬を与えていた。


「すまない。君たちはずいぶん若いが…もしかして新人か。」

少しだが回復した女はクー兄に話しかける。


「あぁ、そうだ。あの男はまだ10歳だ。」


「無理だ。相手はロードだぞ。あの新人死ぬぞっ!」

と女はクースに告げる。


「あいつは、ノアは大丈夫だ。黙って見ていろ。」

そう言うと、クースは再び弓弦を鳴らした。


『ビィンっ!』『ビィンっ!』


クースの弓が鳴るたびにホブゴブリンたちが倒れていく。


その頃、オレはゴブリンロードと対峙していた。こいつはでかい。あまりのでかさで、たじろぐオレにロードの強力な一撃が襲う!


オレは、エスポワールで一撃を受け止めるも、圧倒的な重量に押され吹っ飛んだ。態勢を立て直したオレにロードの攻撃が続く。


『ガツっ!』『ガギンっ!』


オレは何とか受け止める。だが、このままじゃ拙い。徐々に焦りが募る。


なおも攻防が続く。いや、防戦一方か。手に、足に、腹に切創が増えていく。流れる血が増えるにつれ、視界が霞む。


(くそっ。血を流しすぎた。誰か援護はいないのか。)

焦ったオレは、周りを見回すためにロードからの視線を切ってしまった。


その刹那、すさまじい衝撃がオレを襲った。


『バゴっ!!』


ロードが振り切った刀を返し、裏拳でオレのこめかみを払ったのだ。一瞬で視界がブラックアウトした。


「ノアっ!!」

クー兄の声が聞こえる。


オレに追撃をかけようとするロードに向かって、クー兄が援護の射撃をかける。


意識を手放したオレに父の声が聞こえる。


『決して逃げない、諦めない、裏切らない。そう約束したよな。もう逃げるのか、もう諦めるのか、友の期待を裏切るのか。お前はヴォルツの家の子だ。何よりヴォルフガングの自慢の息子だ。さあ、起きろ!立ち上がれ!』


オレは目を醒ました。剣を手に立ち上がる。


(怖い。怖い。逃げたい。でも、逃げない!!)


オレは意を決して、ロードに向き合う。


【英霊の祝福】が発動する。強い決意が瞳に宿った。身体が淡く光りだす。


オレは胸の前で剣を組んだ。『行くぞっ!エスポワール。』光が剣に集束される。


ダンっ!


オレは、地面を蹴ってロードの懐に飛び込み、エスポワールを一閃する。オレの一撃を受けたロードは、蹈鞴を踏んで下がる。


『行けるっ!行けるぞっ!!』


オレはロードに迫り二撃目、三撃目を叩き込んだ。さらに後退するロード。


『チェストッ!!』


オレは乾坤一擲、持ち得る全ての力をこめて必殺の突きを叩き込んだ。


ズドォーンっ!!と言う音を立ててロードは仰向けに倒れた。


『やったっ!!』


その瞬間、オレの意識は飛んでしまった。


数分後、クー兄がオレに回復薬を飲ませてくれ、意識を取り戻した。何とか立ち上がり、周りを見ると知らせを受けた懸け付けたカーン教官など討伐隊の面々がいた。


「ノア、お前これ独りで倒したのか。」と教官。


「いえ、クー兄が援護をしてくれたし、戦っていた人たちもいたから。」


「やったな、新人!」「助けてくれてサンキューな。」


あたりがざわめく。


そしてオレは魔結石を回収する。今までに見たことのない大きさだ。


クー兄も8体のホブゴブリンを狩ったらしい。


この地域でホブゴブリンが異常発生しているとの報告があり、いくつかのパーティが討伐を請け負っていた。その原因が、盟主の誕生だったようだ。盟主誕生を知ったパーティの一つがギルドに連絡をしたため、思った以上に早くカーン教官らが到着をしたようだ。


パーティのリーダーのアービンは、今回の討伐報酬の半分を譲ってくれると言ってくれた。ロードから剥ぎ取った剣や鎧、皮も素材として売れるものだった。それどころか、レア素材として高級品らしい。


「ノア、ロードのマントを忘れるなよ。」カーン教官が声を掛ける。


ロードのマントは魔法耐性があり防刃効果もあるようだ。そのため、高級な鎧の裏地にはロードのマントを張るのが主流らしい。


回収を終えたオレたちはギルドへ凱旋した。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《王都ノルテ内冒険者ギルド》

ギルド内は蜂の巣を突いたような大騒ぎだった。


ゴブリンロードが出たことよりも、新人が討伐したことのほうが大事件だったらしい。


「新人がロードを倒した。」「あいつはやる奴だと思ってたよ。」「新人、オレとも組めよ。」


たくさんの【冒険者】にオレたちは囲まれた。


「ノア、クース、あなたたち新人なのに何やってるの!」

ジョアンナさんが泣きそうな顔をして駆け寄ってきた。新人が盟主と対峙していると聞いて心配していたらしい。


そんな、ジョアンナさんに回収した魔結石と回収した武器などの買い取りをお願いする。


今回の魔結石は、ゴブリンロードが50万C、ホブゴブリンが2万C×8体になった。回収した武器防具や、ゴブリンロードの皮革も防具の材料として、合わせて10万Cで買い取ってもらえた。


ゴブリンロードのマントは50万Cの高価素材であったが、手許に置いておくことにした。クー兄が将来防具の素材にするようにオレに勧めたのだ。


こうして、オレたちの初めての盟主討伐は幕を閉じた。


宿に帰ったオレは、SOPで自分のレベルがレベル1からレベル3に上がっていることに気付いた。

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