表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノアの冒険譚 成り上がり人生記(仮)  作者: 世迷言言
第二章 新人冒険者時代
13/156

第10話 刃蟷螂襲撃

第10話です。

9/12:大幅な改訂を行いました。

ノルテランド暦1991年5月

《王都ノルテ》


早いものでもう5月になった。


オレは、相変わらずクースと依頼をこなしている。


何度も討伐依頼を受けたオレたちは生活のリズムも整いだした。討伐や採取の依頼を受けるのは、月・水・金曜日、火・木・土曜日は道具の確認と準備だ。そして日曜日は完全休養日にした。


すっかり打ち解けたオレは、クースのことをクーにいと呼び、慕うようになっていた。最近では同じ宿、百舌亭に宿泊している。もちろん部屋は別だ。


そんな、クー兄に兄弟がいることが判明したのは、王都警備隊の詰所にリュングベリ(最近はリュングと呼んでいる。)を尋ねたときだ。


5月になってからオレは依頼を受けない日はリュングに剣を習うようになり、度々詰所を訪れているのだ。


そんな、詰所前の広場で剣を習っているとエルフの男が近寄ってきた。


「大隊長は今日も小さな冒険者殿のお相手か。」


(リュングって大隊長なんだ。しかし、エルフで警備隊士って珍しいな。)


「エルか。そうだ、ノア紹介しよう。この男はエルフのエルドレッド=イェーガーだ。エルフなだけあって、王都警備隊で唯一のエルフだ。そして凄腕の【弓術士】だ。エルブンボウを使わずに弓術の大会で唯一満点を出した男だ。」


(満点!!クースも弓はすごいけど。あれは、命中率補正のあるエルブンボウだったよな。しかも、エルドレッドさんの弟も【冒険者】か。弟も弓はすごいのかな。)


「そういえば、お前の弟も王都で【冒険者】をしているんだったな。」


そう言って、エルドレッドさんをオレに紹介する。


「ノア君、はじめまして。エルと呼んだくださいね。」

そう言って、にっこり笑う。


そして、まじめな顔をしてリュングを振り返り文句を言う。

「小隊長、私は凄腕ではなく、王国一の腕前です。」


また、オレのほうを向きなおして話しを続ける。

「私の弟は今年【冒険者】になったんですよ。名前はクーサリオンと言います。ひょっとしたらご存知ではないですか。」


(えっ、クー兄のお兄さん!)

驚きに目を見開く。


「え、えぇ。クースさんとは、一緒に狩りに行っている、いや、います。お兄さんですか。そう言われると、よく似ている気が、気が…。」


(エルフってみんな同じ顔に見えるな。似ているって言っていいのかな。)


「はっ、はっ、はっ。人間にはエルフはみんな同じような顔に見えるんじゃないですか。」

エルさんがオレに尋ねる。


「すいません。」

思わず頭を下げる。


「いや、いや。気にしていませんよ。あなたがクースの狩り仲間ですか。最近、「弟みたいな仲間ができた。その子と同じ宿を取った。」と言って私の家を出て行ったので心配していたのですが、あなたと一緒だったのですね。弟の弟は私にとっても弟のようなもの。いつでも遊びに来てください。」

そう言ってオレと握手を交わした。


その日以来、オレは剣をリュングに、弓はエルに習うようになった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ノルテランド暦1991年6月下旬

《王都ノルテ》


そして時は過ぎ、季節は本格的な夏を迎えようとしていた。


その日もオレはリュングに剣を習っていた。


リュングに剣を習うようになって、オレは言葉遣いもよくなった。やはり、リュングベリ=フォン=シュナイダーという貴族相手に話をしているからだろう。


ジョアンナさんも、カーン教官も前は生意気だったと言って苦笑いをしていた。


「伝令っ!!」


そこへ、警備隊の伝令が駆け込んでくる。


男はリュングの前に片膝をつき報告をする。

「伝令っ!!冒険者ギルドよりの要請です。近郊の草原に、大型の魔獣が出現し、重傷者が多数出たとのこと。ギルドより【冒険者D】以上の討伐隊を派遣するので、王都警備隊は重傷者を保護し警備の上搬送を要請したいとのことです。」


「魔獣の種類はわかるか。」

リュングさんが尋ねる。


「はっ、刃蟷螂ブレードマンティスのようです。数は不明。雪兎スノーラビットの討伐中に出現したようです。」


刃蟷螂ブレードマンティス…体長3mを超える大型の魔獣で、両手の鎌が刃物のように鋭い。【冒険者D】以上が小隊を組まないと討伐が出来ないほどの強さ。


雪兎スノーラビット!!オレたち新人の討伐依頼の対象だ。)


「すいません。【冒険者F】のノアといいます。負傷者って名前はわかりますか。」

オレは思わず訊く。


「申し訳ない。名前までは…。しかし、大半は新人と聞いた。」

伝令の人が申し訳なさそうに話す。


「そうですか。お忙しいところ申し訳ありませんでした。」

オレが頭を下げる。


(新人!カーン教官以外の研修組か。イル、カクス、エイギル、ジャニスなんかじゃないよな。)

オレは不安でいっぱいになった。


警備隊詰所にリュングの声が響く。

「了解した。我ら第一大隊の第一および第二小隊はこれから負傷者の保護、警備および搬送へ向かう。みんな準備しろ!1時間で出るぞ!1時間後、王都城門前集合だ!!急げっ!!」


リュングは小隊の面々に指示を出しながら、オレの方にやって来る。


「ノア、悪いな。これから出なければならない。また、来てくれ。今度は、ヴォル殿や、お主の祖父、神虎隊隊長のヨアヒム殿のことも話そう。」

そう言って、準備のために詰所へ戻って行った。


オレは去って行くリュングさんの背中を見送り、駆け出した。


不安に駆られたオレは百舌亭へ急ぐ。そして、寛ぐクー兄を伴い冒険者ギルドへ向かうのであった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


《王都ノルテ冒険者ギルド内》


オレたちは冒険者ギルドに駆け込む。するとギルド内はざわついていた。ジョアンナさんに話しを聞きたかったが、彼女は忙しそうにカウンター内を走り回っている。


何もすることのないオレたちは、テーブル席に座り周囲の様子を伺う。


刃蟷螂ブレードマンティスだってよ。オレたちじゃ勝てないよな。」「新人だってよ。死んだやつもいるらしいぜ。」「雪兎スノーラビットを捕食に来たらしいな。」


さまざまな声が耳につく。


オレは周囲をきょろきょろと見回す。


(だれか死んだのか。そう言えば、ジョアンナさんがスノーラビットを食べに来るやつがいるって言ってたな。)

オレは、落ち着かずにイスを揺らしていた。


「ノア、落ち着け。私たちがあせっても仕方ないんだぞ。」

そう言ってクー兄はオレの肩に手をやる。


いったいどれだけの時間が過ぎたのだろう。ふいに、ギルド入り口が騒がしくなった。


「前、空けろ。負傷者が通るぞ!!」

エルさんの声が聞こえる。


人ごみを縫うように負傷者を載せた担架が通された。そばには付き添うカクスがいた。


「「カクス!!」」

オレたちは同時に叫び、担架に駆け寄る。


そこに寝かされていたのはイルだった。


「「イルっ!!」」


イルの左手は鋭い刃物に切られたように手首から先が千切れかけている。


カクスに話しを聞く。


「最近、僕はイルとパーティを組んで討伐をしていたんだよ。今日もいつものように草原で雪兎スノーラビットを狩っていたんだ。でも、気が付くと周囲から雪兎スノーラビットの気配が消え、刃蟷螂ブレードマンティスが襲い掛かってきた。僕は必死になって逃げた。周りのことなんか何も考えられなくて…。僕はなんとか逃げ切ったけど、でも、イルが、イルが…。イルは襲われて手首を斬られて、倒れてたんだ。僕は、イルを助けて何とか逃げ回っていた時に王都警備隊に助けられたんだ。僕たちを襲う前にも何人か襲われていて、通報があったんだって。でも、イルの出血がやばくて。」

そうカクスは説明してくれた。


よく見るとカクスもだいぶ切り傷を負っている。傷自体は警備隊の【治癒士】が治癒してくれたそうだ。


ただ、イルは回復リカバリーで出血は止まったが、手を直すには専門の【治癒士】に大回復グランドリカバリーをかけてもらう必要がある。


(ふぅ、命に別状はないようだ。ここは王都だから【治癒士】もいるだろう。)


「【治癒士】は呼んだのか。」

オレはカクスに尋ねた。


カクスは首を振る。


「なぜっ!!」

オレは声を荒げる。


「そんな金はないんだよ。」

悔しそうにカクスはそうつぶやいた。


確かに、【治癒士】に大回復グランドリカバリーをかけてもらうと法外な金がかかる。ギルドの職員に聞くと、3百万Cほどかかるらしい。ギルドに借金はできるようだが、新人では1百万Cが限度で保証人が2人必要だと教えてくれた。


「ノア…。オレの…ことは…心配するな。自分で…なんとか…するから…。」

気が付いたイルは途切れ途切れの声でそういった。


痛みで何度も顔を顰めている。


(なんとかすると言っても、オレもイルも農奴の子だ。ここ王都に伝手はないはず。【冒険者】を続けられないと、貧民街スラムの奴らのようになってしまうはずだ。)


「イル、お前今どれくらいの金がある。」


オレはおもむろにイルに尋ねる。


「30万C…くらい…だと…思う。」

痛みに途切れ途切れになりながら、イルが応える。


「オレには今80万Cくらいある。オレがギルドから借りる金と、お前がギルドから借りる金、それにお前の貯金を合わせれば3百万Cくらいにはなるだろう。」


その話しを聞いてクー兄がオレの近くにやって来る。


「ノアっ!その金はお前が家族を取り戻す大切な金だろう。」

クー兄がオレを引き止める。


「そんなことはわかっている。わかっているんだ。でも、オレもイルも農奴の子だ。しかも、郷土から逃げてきたんだ。左手なしの片手じゃ【冒険者】なんてできない。できなくなっても帰る所なんてないんだ。残っているのは、貧民街スラムに落ちるか、奴隷になるかだ。それでも、治しさえすれば【冒険者】が続けられる。続けられれば金なんかいくらでも返せる!何とかなるんだ。」

そうクー兄に反論した。


「いいか、イル。金はやるんじゃないぞ。貸すだけだからな。ちゃんと治して、とっとと返せよ。」


そうイルに言うと、イルは涙を流しながら何度も感謝の言葉を口にした。


「わかった。私も貸そう。」

クー兄が声をかける。


「僕も貸すよ。」

カクスも続く。


「俺たちのことも忘れんなよ。同期のピンチは見逃せないぜ。一歩間違えればそこで寝てるのは、オレたちの誰かかもしれなかったんだしな。」

エイギルやジャニスも姿を現す。


オレたちは、ジョアンナさんやカーン教官に事情を話し、【治癒士】の依頼を頼んだ。


「イル君、いい同期を持ったわね。早速、【治癒士】を呼ぶわ。もうちょっと待っててね。」

ジョアンナさんがイルにそう告げる。


その日の夜、【治癒士】は治癒に訪れ大回復グランドリカバリーをかけて帰っていった。


カーン教官に保証人の相談をするとオレとイル二人分の保障人をそろえるのは大変だろうと、金を貸してくれることになった。また、オレが借金をすると言うと、クー兄やカクス、同期のエイギル、ジャスも協力を申し出てくれたお陰で、一人30万Cずつのカンパとイルの貯金、イルがカーン教官も借金をすることで支払いを行うことができた。


刃蟷螂ブレードマンティスは、【冒険者D】達の活躍で無事討伐が出来た。


しかし、死者1名、重傷者8名を出した魔物の襲撃で、改めて【冒険者】は危険なんだと心に刻み込まれるきっかけとなり、剣や弓の訓練に一層力を入れるきっかけとなった。


また、危険を認識したことで、父や母に連絡をしたいと、王都に来てから初めてちょっぴりホームシックになった。



誤字・脱字の連絡をお願いします。

ご意見・ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ