人嫌いな女の子と同好会
わたしは人が嫌いだ。
「綿貫小夜香さぁん」
わたしは人が嫌いである。
「綿貫小夜香ぁさん」
わたしは人が嫌いなんだが。
「たぬ」
「なんでしょうか?」
その渾名だけは言わせてなるものか。とっさに相手の言葉を遮る。たぬき可愛いけど。
「お願いがあるの、名前だけでいいから歴史同好会に入ってくれなぁい?」
「なんで」
可愛く小首を傾げられて頼まれたが、唐突過ぎる話で理解できない。
「廃部の危機でね。あ、この場合は廃会かぁ」
「なんで」
わたしが、と続けようとしたら、
「さーやちゃんおねが」
「ストップ」
不意に懐かしい呼び名だったから反応が遅れてしまった。
「小声で話そうか、めぐみちゃん」
「ごめんなさぁい。恵って呼んで、綿貫様」
「いやよ、立川様」
「はい、綿貫さん」
「帰りに公園でどう?」
「Aye aye ma'am.缶ジュース奢るねぇ」
ゴミ置き場に向かう途中、昔馴染みに会った。恵はスキップしながら階段を上って行く。わたしは鉄網の柵を開けて、手に持っていたゴミ袋をほおり投げた。放物線を描き、ゴミ袋たちの一番上に着地したことに満足しながら、頭の中では放課後の予定を立てる。今日は通学中にあるパン屋さんで割引券が貰える曜日だ。いつも購入するアンパンを二つにしよう。柵を閉めて校舎へ向かった。
一階の暗がりで『歴史同好会』と汚れたプレートが目に入る。廊下からは中が見えず、勧誘するようなポスターも見当たらない。幽霊部員にさせられるだけだけど、なんとなく事前情報が知っておきたかった。
「まあいいか」
鉄道研究部みたいな模型や写真を廊下に展示して、隣に部長の名前入り勧誘ポスターなどあればイメージが湧くんだけど。
「関係ないね」
わたしは人嫌いな女の子。