表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第3話



【僕は今から死にます】


 少年の書き込みがまた、ネット上に流れた。




【お! また新しい自殺志願者がきたぞ~】

【これで何人目?】

【確か17】

【いや、18人目だろ?】

【いや、前回の書き込みは嘘っぱちだったから、これで17じゃね?】

【まぁ、どうでもええや】

【お願い! 死ぬなんて馬鹿なことはやめて!】

【でたでた、自意識過剰の良い子ちゃんがきましたよw~】

【偽善者おつ】

【はぁ? うっせぇ! てめぇが死ねよカス! 死ぬ勇気もないくせに】

【俺は命の大切さを知っている。だから死なないだけ。勇気がないわけではない。命を粗末にするヤツと一緒にスンナ】

【カッコツケンナYO!】




 こんなくだらない大人達のやりとりを遮るように、少年の最後の書き込みがネット上に打ち込まれた。


【僕の死を目撃した皆さん、どうか、僕の死に意味を与えてください】


 少年は震えていた。震えながら、包丁を手に取り、その白く光る刃を自分に向けた。そんな少年の行動は、カメラを通してインターネットに配信されていた。


 カメラを通して、少年の死は誰かに届く。もしかしたら、カメラを通じて少年の”体の震え”も、誰かに伝わるかもしれない。でも、少年の”心の震え”は、やっぱり大人に届かない。


「さよなら」


 少年の声は小さく震えていた。次の瞬間、ネットの世界に咲いたのは真っ赤な血の花だった。モニター越しに少年の自殺を目撃した人々は、その印象的で、ある意味エンターテイメント性に優れた血しぶきばかりに注目していて、誰も少年の震えに気付かなかった。そう、誰も。モニター越しに少年の死を目撃した人では、気付くことはできない。もし、少年の震えに気付くことができる大人がいるとしたら、それは、モニター越しではなく、自らの目で現実の少年を見ようとする者だけだ。本気で助けたいと、まるで子供の様に、純粋に強く願う者だけだ。






「やめろ! 死ぬんじゃない!!」


 俺には、少年が「死にたくない」と言っている様に思えた。だから俺は、血だらけの少年を抱きかかえて、直ぐに病院へと走った。この子を絶対に、助けてみせる。


 警察官の”守屋道孝もりやみちたか”は、血だらけの少年を抱えて走った。無我夢中で、走った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ