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プロローグ
それは、インターネットを通じて世界中に発信された、少年の小さな呟きだった。
【僕は世界を変えたい】
【でも、僕にはお金も、権力も、多くの人を動かせる魅力もありません】
【僕にできることといえば、インターネットを通じて、僕の気持ちをみんなに伝えること、それと】
【死ぬことだけです】
このとき、少年の体は震えていた。それは恐怖によるものか、それとも武者震いなのか、少年自身わかっていなかった。
そんな少年の震えは、無機質な文字によって止まってしまう。少年の文字を打つ手がどんなに震えていても、インターネットに流れる文字は、その美しいフォントを崩すことなく鎮座している。
少年の震えは伝わらない。
――案外、その震えこそが、一番大切なのかもしれないのに