9話
1. 卒業式の朝、まだ答えは出ていない
「袴、似合ってるよ」
ひなたは、あかりに言った。
あかりは笑った。
でも、その笑顔の奥に、少しだけ揺れがあった。
「藤堂さん、来てくれるって言ってたけど、まだ連絡なくて」
「卒業式って、恋の答え合わせの日なのかな」
「でも、答えって、出るのかな。出したいのかな」
「……わかんない。でも、出なくても、卒業はする」
2人は、式場へ向かう。
春の風が、少しだけ冷たかった。
2. 恋の未収束
すずは、式の前に新からLINEを受け取った。
「卒業、おめでとう。
来週、バイトの送別会、行ける?」
“行ける”と打つまでに、10秒かかった。
その間、脳内では収支報告が行われていた。
——恋の利益:安定
——リスク:低
——でも、確定申告はまだ
「行きます。楽しみにしてます」
送信。
既読。
返信:
「俺も。すずさんの笑顔、また見たい」
——恋って、収束しないまま、続くこともある。
——それも、悪くない。
3. 恋の記憶は、静かに残る
ゆいは、式のあと、図書館に寄った。
卒論を提出した席に、少しだけ座ってみた。
彼のことは、もう連絡していない。
でも、記憶は、静かに残っていた。
——別れたことに、後悔はない。
——でも、あの瞬間の自分は、確かに恋をしていた。
「終わった恋って、卒論みたい。
提出したら、もう戻れない。
でも、提出したから、次に進める」
ゆいは、そう思った。
そして、席を立った。
4. 恋の答え合わせは、誰のためでもない
式のあと、4人はカフェに集まった。
袴姿のまま、笑いながら、泣きながら。
「結局、恋って、答え出るのかな」
ひなたが言った。
「出ないかも。でも、出なくても、生きていける」
あかりが言った。
「答えって、誰かに見せるものじゃなくて、自分で持ってるものかも」
すずが言った。
「私は、まだ答え書いてる途中かも」
ゆいが言った。
4人は、笑った。
その笑い声が、春の風に混ざった。
——恋の答え合わせは、卒業式のあとで。
——でも、答えが出なくても、
——私たちは、ちゃんと、前に進める。




