6話
1. 恋の時給、計算不能
「時給950円。勤務時間4時間。今日の収入、3,800円」
高橋すず(経済学部3年)は、バイト終わりにレジ横で電卓を叩いた。
でも、今日の“収入”は、それだけじゃなかった。
——彼と、シフトがかぶった。
——レジで2回、目が合った。
——休憩中、同じドリンクを選んだ。
——それ、時給に換算できる?
「恋って、時給で測れないよね」
そう言ったのは、同じバイトの男子・新だった。
「えっ、何の話ですか?」
「いや、すずさんって、数字で考えるタイプっぽいから」
「……恋は、変動相場制です」
「じゃあ、俺の今日のレート、どうでした?」
「……950円以上、かも」
2. シフト調整と恋の駆け引き
「来週のシフト、どうする?」
店長に聞かれた。
すずは、シフト表を見つめた。
新の名前が、火曜と金曜に入っていた。
——火曜はゼミがある。金曜は空いてる。
——でも、火曜に入れば、彼と2回かぶる。
——恋の期待値、上がる。
——でも、ゼミの出席率、下がる。
「火曜、入ります」
「ゼミは?」
「……恋の方が、今は優先度高めです」
「え、何?」
「いえ、なんでもないです」
3. 恋の休憩時間
金曜の休憩時間。
すずは、ドリンクを選んでいた。
新が隣に来た。
「また、同じやつ選びましたね」
「偶然です」
「いや、これは、シフトの神様の仕業かも」
「神様、時給で動いてるんですか?」
「すずさんの笑顔が見られるなら、無償でもいいかも」
——その一言で、時給の概念が崩れた。
——恋って、無償労働かもしれない。
——でも、満足度は高い。
4. 恋の収支報告
バイト終わり、すずはスマホのメモに書いた。
“本日の収入:3,800円
恋の収支:+2,000(目が合った×2、会話×1、笑顔×1)
満足度:120%
リスク:低
期待値:上昇中”
そして、こう付け加えた。
“恋って、時給じゃ測れない。
でも、測りたくなるのが、経済学部の性”




