5話
1. ストーリーは、恋の予告編
「このスタバ、誰と行ったの?」
ひなたからLINEが来た。
あかりはスマホを見つめた。
ストーリーに載せた、抹茶ラテと、ちょっとだけ写った男子の腕。
「……ゼミの帰りに、藤堂さんと」
「それ、匂わせすぎじゃない?」
「でも、顔は写ってないし。タグもつけてないし。炎上してないし」
「炎上未満が一番危ないんだよ。女子大生の恋は、火種が多い」
あかりは、スマホを伏せた。
でも、心の中では、もう一回ストーリーを再生していた。
——あの腕。あの距離。あの抹茶ラテ。
2. 承認欲求と恋のバランス
「なんで載せたの?」
すずに聞かれた。
「……見てほしかったのかも。誰かに。藤堂さんに、じゃなくて、誰かに」
「それ、恋じゃなくて承認欲求」
「でも、恋って、誰かに見てほしいものじゃない?」
「見てほしいけど、見られすぎると壊れるよ」
「じゃあ、どこまで見せていいの?」
「それは、恋のプライバシーポリシー次第」
「……文学部的には、“曖昧なままが美しい”ってことにしていい?」
「経済学部的には、“曖昧はリスク”ってことになるけどね」
3. ストーリーの向こう側
その夜、藤堂さんからDMが来た。
「今日のストーリー、俺の腕、写ってた?」
「……ちょっとだけ」
「俺、タグ付けされてないから、気づかれないと思ったけど、気づいた」
「すみません……」
「いや、嬉しかった。なんか、俺のこと、ちょっとだけ好きなのかなって思った」
「……ちょっとだけ、かもしれません」
「じゃあ、今度は顔も載せていいよ。俺の方から、載せる」
あかりはスマホを握りしめた。
その言葉が、通知音よりも響いた。
——恋って、拡声器みたい。
——でも、音量は、自分で決めたい。
4. 恋の通知は、静かに鳴る
翌朝、あかりはストーリーを更新した。
抹茶ラテ。
藤堂さんの顔。
でも、タグはなし。
音楽は、静かなピアノ。
ひなたからLINEが来た。
「ついに、顔出し。恋、始まった?」
あかりは返信した。
「始まったかどうかは、まだわかんない。
でも、音量は、ちょっとだけ上げた」




