表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁書館の魔導師は、万年2位の恋を綴る  作者: 秋津冴
第二話 禁書館ライフ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/27

魔導具泥棒事件


「ちょっと待ってください!  そこは絶対に入っちゃダメです!  危険すぎます!  今すぐ離れてください!」

 私は全力でアーガムを止めようとしていた。

 禁書館での勤務中、いつものように目録作成をしていた時のことだった。アーガムが、禁書館の奥の壁に不審な亀裂を見つけたのだ。

「でも、この壁、なんか変じゃね?  音が響くんだよ」

 アーガムは壁をコンコンと叩いていた。

「確かに空洞があるみたいだけど……」

「だろ? ってことは、この奥に何かあるんじゃね?」

「あったとしても、勝手に開けちゃダメです!」

「なんでだよ。ちょっと見るだけじゃん」

「ちょっとじゃないです!  もし罠があったらどうするんですか!」

「大丈夫だって。俺、丈夫だし」

「丈夫とか丈夫じゃないとかの問題じゃありません!」

 私が必死に説得している間に、アーガムは壁を押し始めた。

「おりゃあ!」

 ゴゴゴゴ……

 壁が動き始めた。

「あ、開いた!」

「開けちゃダメって言ったでしょう!」

 壁の向こうには――暗い通路が続いていた。

「おお、すげえ!  隠し通路だ!」

「だから入っちゃダメです!」

「でも、気になるじゃん」

「気になっても我慢してください!」

 私はアーガムの服を掴んで引っ張った。

 でも――

 その時だった。

 通路の奥から、人の気配を感じた。

「え……?」

「どうした?」

「誰かいます……」

 私は警戒した。

 そして――通路の奥から、黒い影が走ってきた。

「あ、誰か!」

 アーガムが叫んだ。

 影は私たちを押しのけて、禁書館の出口へ走っていった。

「待て!」

 アーガムが追いかけようとした。

 でも――

「待ってください! その前に!」

 私は急いで禁書館の展示室を確認した。

 そこには、貴重な魔導具が展示されている。

 そして――

「やっぱり……!」

 展示ケースが壊されていた。

 中の魔導具が――

 盗まれていた。


「魔導具が盗まれた……?」

 学園長が深刻な表情で言った。

 私たちはすぐに学園長に報告した。

「はい。『時詠みの羅針盤』が盗まれました」

「それは……」

 学園長は顔を青くした。

「あれは、古代の魔導具だぞ。非常に危険なものだ」

「危険……ですか?」

「ああ。時詠みの羅針盤は、禁呪の在処を示す力がある」

「禁呪の……!」

 私は息を呑んだ。

「つまり、犯人は禁呪を狙っているということか」

「おそらく……」

 学園長は立ち上がった。

「すぐに捜索隊を編成する。君たちも協力してくれ」

「はい!」


 私たちは犯人の痕跡を追った。

 魔力の残滓を辿っていく。

「この魔力……どこかで感じたことがあるような……」

「分かるのか?」

「はい……でも、誰の魔力かまでは……」

 私たちは学園の敷地を捜索した。

 そして――学園の裏庭、古い井戸の近くで魔力の痕跡が途切れた。

「ここで終わってる……?」

「待てよ」

 アーガムが井戸を覗き込んだ。

「この井戸、妙に深いな」

「まさか……」

 私も覗き込んだ。

 井戸の底が見えない。

「これ、ただの井戸じゃないんじゃね?」

「そうかもしれません……」

 私は魔法で井戸の内部を調べた。

「《構造解析――ストラクチャー・アナライズ》」

 すると――井戸の壁に、隠された階段があることが分かった。

「やっぱり……これ、学園の地下迷宮への入り口です」

「地下迷宮?」

「はい。学園創立時に作られた、訓練用のダンジョンです」

「へえ……そんなのがあったのか」

「今は使われていないはずですけど……」

 私は考え込んだ。

「犯人は、ここに逃げ込んだようです」

「じゃあ、追うか」

「でも、危険です。罠や魔物がいるかもしれません」

「大丈夫だって。俺たち、いいコンビだろ?」

 アーガムが笑った。

 私は少し迷った。

 でも――

「分かりました。一緒に行きましょう」

「おう!」


 井戸の中に降りると、確かに隠された階段があった。

 私たちは慎重に階段を下りていった。

「暗いな……」

「《光よ――ライト》」

 私は光の玉を作り出した。

 それが、周囲を照らす。

「おお、便利だな」

「これくらいは基本です」

 階段を下り切ると――広い空間が広がっていた。

「すげえ……本当に迷宮だ」

 石造りの通路。

 いくつもの分岐。

 古代の魔法陣が、壁や床に刻まれている。

「これが、訓練用のダンジョン……」

「でけえな」

「はい……学園の地下全体に広がっているらしいです」

「マジか……迷子になりそうだな」

「だから、慎重に進みましょう」

 私たちは魔力の痕跡を追って、迷宮を進んでいった。


 しばらく進むと――

 カチッ。

 アーガムが何かを踏んだ。

「え?」

「動かないで!」

 私は叫んだ。

「罠です!」

 瞬間――壁から、無数の矢が飛び出してきた。

「うわっ!」

「《風の壁よ――ウィンド・ウォール》」

 私は風の壁を展開した。

 矢が風に弾かれて、軌道が逸れる。

「ふう……助かった」

「だから言ったでしょう! 慎重に!」

「悪い悪い」

 アーガムが頭を掻いた。

「でも、罠があるってことは、ここを誰かが通ったってことだろ?」

「そうですね……犯人は、罠を避けて進んだはずです」

「じゃあ、俺たちも気をつけて進もうぜ」

「はい」

 私たちはさらに慎重に進んだ。


 次の部屋に入ると――そこには、巨大な石像が置かれていた。

「なんだ、あれ?」

「ガーディアン……守護者の石像です」

「動くのか?」

「おそらく……」

 私たちが部屋の中央に近づくと――石像が動き始めた。

 ギギギギ……

「やっぱり動いた!」

 石像が立ち上がった。

 高さ三メートル以上。

 巨大な剣を持っている。

「うお、でけえ!」

 石像が剣を振り下ろしてきた。

「避けて!」

 私たちは左右に飛び退いた。

 ドゴォン!

 剣が床に叩きつけられ、石が砕け散った。

「すげえ威力……」

「物理攻撃だけじゃありません!」

 石像の目が光り始めた。

「魔法も使います!」

「マジかよ!」

 石像の口から、火球が放たれた。

「《水の盾よ――ウォーター・シールド》」

 私は水の盾を展開した。

 火球が水に当たって蒸気になる。

「ネイサ、どうすんだ!?」

「石像の核を破壊しないと!」

「核? どこだ!?」

「胸の中心! そこに魔力の核があります!」

「了解!」

 アーガムが石像に突進した。

「おりゃああ!」

 石像が剣で迎撃しようとした。

 でも――

「《風よ、足を止めよ――ウィンド・バインド》」

 私は風の鎖で石像の足を拘束した。

 石像の動きが鈍る。

 その隙に――

「もらった!」

 アーガムが石像の胸に拳を叩き込んだ。

 ドゴォン!

 石像の胸が砕け、中から光る結晶が見えた。

「それが核です!」

「おう!」

 アーガムがもう一度拳を振るった。

 バキィン!

 結晶が砕け散った。

 瞬間――

 石像が動きを止めた。

 そして――

 ガラガラと崩れ落ちた。

「やった!」

「お疲れ様です」

 私たちは息を整えた。

「しかし、すげえな。こんなのがいるのか」

「はい……訓練用とはいえ、本物のダンジョンです」

「気をつけないとな」

「ええ」

 私たちは次の部屋へ進んだ。


 迷宮を進むにつれて、罠や魔物が増えてきた。

 でも――私たちの連携は完璧だった。

 アーガムが前衛で敵を引きつける。

 私が後衛で魔法で支援する。

 何度も何度も、危機を乗り越えた。

「お前との連携、完璧だな!」

 アーガムが嬉しそうに言った。

「あなたの動きが予測しやすいんです」

「それって、褒めてんのか?」

「褒めてます」

 私は笑った。

 確かに、彼との連携は完璧だ。

 まるで――何年も一緒に戦ってきたかのように。

 それが嬉しかった。


 迷宮の最深部に辿り着いた。

 そこには、大きな扉があった。

「これが……最後の部屋か」

「おそらく」

 私は扉に魔法をかけた。

「罠はなさそうです」

「じゃあ、開けるか」

 アーガムが扉を押した。

 ギィィィ……

 扉がゆっくりと開いた。

 中には――黒いローブを着た人物がいた。

「!」

「犯人……!」

 黒ローブの人物は、机の上で何かの作業をしていた。

 そして、その手には――盗まれた魔導具があった。

「そこまでです!」

 私は叫んだ。

 黒ローブの人物が振り返った。

「……ちっ」

 舌打ちをした。

「追いつかれたか」

「大人しく魔導具を返してください!」

「嫌だと言ったら?」

「力ずくで取り返します」

 私は魔法を構えた。

 アーガムも戦闘態勢に入った。

「……仕方ないな」

 黒ローブの人物が手を上げた。

「《闇よ――》」

「させません! 《沈黙よ――サイレンス》」

 私は詠唱妨害魔法を放った。

 でも――黒ローブの人物は無詠唱で魔法を発動させた。

「《闇の刃よ――ダークネス・ブレード》」

 闇の刃が飛んでくる。

「《光の壁よ――ライト・ウォール》」

 私は光の壁で防御した。

 闇と光がぶつかり合い、相殺される。

「やるな……」

 黒ローブの人物が呟いた。

「でも、これならどうだ!」

 彼は机の上の魔導具を掴んだ。

「時詠みの羅針盤、起動!」

 魔導具が光り始めた。

「まずい……!」

 羅針盤から、強力な魔力の波動が放たれた。

 それは――時間を歪める力。

「ぐっ……!」

 私の体が、重くなった。

 まるで、時間がゆっくり流れているかのように。

「な、なんだこれ……」

 アーガムも同じ状態だった。

「時間減速……の魔法……」

 私は必死に抵抗した。

 でも――この魔導具の力は強力すぎる。

「さらばだ」

 黒ローブの人物が転移魔法を準備し始めた。

 このままでは――

 逃げられてしまう!

「させ……ない……!」

 私は全力で魔力を放出した。

「《時よ、戻れ――タイム・カウンター》」

 時間魔法。

 高度な魔法だが――

 今なら使える。

 魔導具の力に対抗して、時間の流れを正常に戻す。

「な……!?」

 黒ローブの人物が驚いた。

「時間魔法だと!? 貴様、何者だ!」

「それは……秘密です!」

 私は攻撃魔法を放った。

「《氷の槍よ――アイス・ランス》」

 氷の槍が黒ローブの人物に向かって飛ぶ。

 彼は防御魔法を展開したが――

「俺の番だ!」

 アーガムが突進した。

「おりゃああ!」

 防御魔法を拳で粉砕する。

「ぐあっ!」

 黒ローブの人物は吹き飛ばされた。

 そして――

 壁に激突した。

「ぐ……」

 黒ローブの人物は倒れた。

「やった……」

 私たちは魔導具を回収した。


「しかし、こいつ誰なんだ?」

 アーガムが黒ローブの人物のフードを外そうとした。

 その時――

 フードが外れた。

 そこには――

「ラザール……!」

 私は驚愕した。

 オルビスの側近、ラザール・グレイだった。

「なんで兄貴の側近が……」

 アーガムも驚いていた。

「やはり……」

 私は拳を握った。

 オルビスが関与している。

 これで、確信した。


 ラザールを拘束して、学園長に引き渡した。

「ラザール・グレイ……オルビス様の側近か」

 学園長は深刻な表情だった。

「尋問する。オルビス様との関係を明らかにしなければ」

「お願いします」

 私は頭を下げた。

 でも――心の中では、既に答えが出ていた。

 オルビスが、黒幕だ。


 翌日、学園長から連絡があった。

「ラザールを尋問したが……」

「はい……」

「彼は、独断でやったと主張している」

「独断……?」

「ああ。オルビス様の指示ではなく、自分の判断で魔導具を盗んだと」

「そんな……」

 私は信じられなかった。

「嘘です! 絶対に嘘です!」

「しかし、証拠がない」

 学園長は苦しそうに言った。

「ラザールの証言以外に、オルビス様と結びつける証拠が何もない」

「でも……」

「それに、オルビス様からも抗議があった」

「抗議……?」

「ああ。『私の側近が勝手なことをして申し訳ない。しかし、私は一切関与していない』と」

 学園長は溜息をついた。

「証拠がない以上、オルビス様を疑うことはできない」

「そんな……」

 私は悔しさで震えた。

「それで、ラザールは?」

「釈放される」

「釈放!?」

「証拠不十分だ。魔導具は回収されたし、彼に実害はなかった」

「でも、盗んだのは事実でしょう!」

「それは……まあ、そうだが……」

 学園長は歯切れが悪かった。

 おそらく――王族の側近を罰することに、政治的な問題があるのだろう。

「せめて、学園からは追放される」

「……それだけですか」

「すまない……これが、限界だ」

 学園長は申し訳なさそうだった。

 私は――何も言えなかった。


 その日の夕方、私は一人で屋上にいた。

 悔しかった。

 オルビスの犯行を証明できなかった。

 ラザールも、大した罰を受けなかった。

 証拠不十分――その一言で、全てが無駄になった。

「なんでなの……」

 私は拳を握った。

「ネイサ」

 後ろから声がした。

 振り返ると、アーガムがいた。

「アーガム様……」

「悔しいよな」

「……はい」

「俺も、悔しい」

 アーガムは私の隣に立った。

「兄貴が関わってるかもしれないって、分かってる」

「……」

「でも、証拠がない」

 彼は空を見上げた。

「証拠がないから、何もできない」

「そうですね……」

 私も空を見た。

 夕日が、赤く燃えていた。

「でも」

 アーガムが言った。

「諦めないぜ」

「え?」

「いつか、証拠を掴む。そして、真実を明らかにする」

 彼は拳を握った。

「それが、兄貴のためでもある」

「アーガム様……」

「兄貴が本当に黒幕なら、止めなきゃいけない」

 アーガムの声が、震えていた。

「兄貴を……救いたいんだ」

その言葉に、私の胸が痛んだ。

 アーガムは――まだ、兄を信じている。

 いや、信じたい。

 だから――真実を知りたい。

 それが――彼の願いだ。

「私も、協力します」

 私は彼を見た。

「一緒に、真実を明らかにしましょう」

「……ありがとな」

 アーガムが笑った。

 ただ、その笑顔は、少し悲しげな気配を漂わせていた。


 その夜、寮の部屋でランスと話していた。

「悔しいな」

「ええ……」

 私は窓の外を見た。

「証拠不十分で、釈放された」

「政治的な理由もあるんだろうな」

「分かってる。でも……」

 私は拳を握った。

「許せない」

「お前らしくないな。冷静じゃない」

「冷静でいられるわけないでしょう」

 私は振り返った。

「アーガム様が狙われてるのよ」

「ああ」

「しかも、実の兄に」

 私は震えた。

「それを証明できない。助けられない」

「だから、悔しいのか」

「ええ」

 私は目を閉じた。

「私は……彼を守りたい」

「愛してるからな」

「……そうよ」

 私は認めた。

「愛してるから、守りたい」

「でも、今は証拠がない」

「ええ」

「じゃあ、これから見つければいい」

 ランスが言った。

「お前は諦めないだろ?」

「当然よ」

 私は目を開けた。

「絶対に、証拠を見つける」

「そうこなくっちゃ」

 ランスは尻尾を揺らした。

「頑張れよ」

「ええ」


 翌日、私は禁書館でアーガムと会った。

「おはよう、ネイサ」

「おはようございます」

「昨日はありがとな」

「いえ……」

「お前がいてくれて、良かった」

 アーガムが笑った。

「地下迷宮、お前がいなかったら無理だった」

「そんなことないです。あなたも頑張りました」

「でも、お前の魔法がなかったら……」

「お互い様です」

 私は笑った。

「私も、あなたがいなければ無理でした」

「そっか」

 アーガムも笑った。

「やっぱり、俺たちいいコンビだな」

「そうですね」

 私は頷いた。

 いいコンビ――

 それ以上の関係を、私は望んでいる。

 でも、今は――この関係を、大切にしたい。


 その日の午後、オルビスが禁書館を訪れた。

「やあ、弟よ。それにネイサも」

 彼は相変わらず優雅に微笑んでいた。

「兄貴……」

 アーガムの声が、少し硬かった。

「昨日は、大変だったそうだね」

「ああ……まあな」

「私の側近が、迷惑をかけて申し訳ない」

 オルビスは頭を下げた。

 でも――

 その目は、笑っていなかった。

「ラザールには、既に厳重注意をした」

「そうか……」

「今後、このようなことがないよう、監督を強化する」

「分かった……」

 アーガムは複雑な表情だった。

 私は――

 オルビスを睨んでいた。

 この人は、演技をしている。

 全てを知っていて、知らないふりをしている。

 許せない。

「では、失礼する」

 オルビスは優雅に去っていった。

 私は、彼の背中を見送った。

 そして――

 心の中で誓った。

 いつか、必ず――あなたの正体を暴く、と。


 その夜、私は師匠に報告していた。

「オルビスの側近が犯人だったか」

「はい……でも、証拠不十分で釈放されました」

「そうか……」

 師匠は考え込んだ。

「オルビスが黒幕である可能性は高い」

「はい……私もそう思います」

「だが、証拠がない」

「……はい」

「ネイサ、引き続き警戒を怠るな」

「はい」

「そして、証拠を掴め」

「分かりました」

 私は決意した。

 絶対に、証拠を掴む。

 オルビスの正体を暴く。

 そして――アーガムを守る。

 それが――私の使命だ。


 数日後、学園は平穏を取り戻した。

 魔導具泥棒事件は、一応解決したことになっている。

 でも――

 私たちは知っている。

 まだ、事件は終わっていない。

 オルビスは、まだ動いている。

 次は、何を仕掛けてくるのか。

 分からない。

 でも――

 私たちは、準備を怠らない。

「なあ、ネイサ」

 禁書館で、アーガムが話しかけてきた。

「はい?」

「この前の地下迷宮、楽しかったな」

「楽しかった……?」

 私は驚いた。

 あんな危険な場所で?

「ああ。お前と一緒に冒険してる感じがしてさ」

 アーガムが笑った。

「なんか、ワクワクしたんだよ」

「そうですか……」

 私も笑った。

 確かに、彼と一緒なら――

 危険な冒険も、楽しい。

「また、一緒に何か冒険したいな」

「はい……でも、今度はもっと安全なやつでお願いします」

「はは、分かった」

 私たちは笑い合った。

 そして、また、仕事に戻った。

 でも、心の中では――

 彼との冒険を、また楽しみにしている自分がいた。


 その夜、私は一人で考えていた。

 オルビスとの戦い。

 これから、どうなるのか。

 いつか、決着の時が来る。

 その時――私は、どうするのだろう。

 アーガムに、真実を告げるのか。

 それとも、黙ったままなのか。

 答えは――

 まだ、出せない。

 でも、一つだけ確かなことがある。

 私は、彼を守る。

 どんな犠牲を払っても。

 それが――

 私の、愛だから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ