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びしょうじょ・ぱんでみっく!  作者: カシノ
あなたにわたしのすべてを捧げる

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24/26

023

 あれからどれほどの時間が経っただろうか。

 僕と金剛さんは、ただ互いのことだけを想って、ひたすらに交わり続けた。

 交わって、眠くなったら抱き合いながら睡眠をとり、起きたらまた交わるの繰り返し。どれだけ欲求をぶつけても金剛さんは受け止めてくれて、彼女もまた、飽きることなく僕を求めた。

 玻璃さんはいつの間にか食料を持って消えていたが、どうでもいい。僕達に食事は必要ない。喉の渇きを覚えることはあったが、汗と唾液で満足できる。

 それでも、体の汚れだけは無視できなかった。

 不快という訳ではない。肌の上で乾燥すると、触れ合った時に干渉して密着感が薄まるからだ。

 だから時たま、風呂場に移動し、お互いを洗いながら、濡れた体でまた交わるというのがお決まりの流れだったのだが。


「あれ」


 シャワーが止まった。そういえば、電気も点いていない。JCの被害も、とうとうライフラインにまで及んだらしい。

 金剛さんは悲しそうな顔でシャワーヘッドを振るが、管に残った水が僅かに落ちるだけだ。仕方がないので、てきとうなタオルでお互いの体を拭き合う。


「どうしようか」


 わざわざ一階に降りたのに、目的も果たせないまま戻るのは何となく悔しい。折角だし、何か新しい試みはないかと家の中を歩き回る。


「……なんだろう」


 居間の、庭に繋がる大きな窓。雑草の生えた芝生に、黒い塊が落ちている。

 あれは、ドローンだろうか。一つではない。少なくとも、五個以上はある。いずれのドローンにも、足に白い紙切れが括り付けられている。

 郵便代わりのつもりか。文明的なのか原始的なのか、よく分からない方法だ。

 興味本位で窓を開け、てきとうな一つから紙を外し、広げてみる。

 住所と名前。それだけなら、誰かの救難信号が偶々同じ場所で力尽きたと考えることもできた。

 しかし、この名前は。


瑪瑙(めのう)(あんず)


 久しぶりに聞いたので記憶に自信はないが、恐らくは合っているだろう。

 瑪瑙(めのう)(あんず)

 僕の、もう一人の妹の名前だ。




 ◇◆◇




 久しぶりに出た外は、少し様子が違っていた。

 動かないJCの数が増えている。前は十人に一人くらいの割合だったが、今は動いているJCがいない。全員が目を瞑り、道の壁際にへたり込んでいる。死体は風化が早いのか、幾つかの亡骸は全身を真っ白に染め、所々が欠けていた。

 触れる気にはならないが、硬そうな質感だ。姿勢は違えど、同じ整った顔立ちがへたり込む様は、崩れかけの彫像が並んでいるようにも見える。

 いずれ僕達も、ああなるのだろうか。

 五日以上は間違いなく生きているが、僕等の体はほとんどJCだ。エネルギーの補給なしに永遠に生き続けられるはずはなく、動けなくなる未来は近い、気がする。


「できれば一緒に死にたいな」


 深く考えないでの発言だったが、金剛さんは咎めるように繋いだ手に力を込めた。むっとした顔で僕を見下ろす。


「ふふ、ごめん。そうだね、一緒に生きられるように頑張ろうか」


 彼女は納得してくれて、口元をふわりと緩める。

 僕等は今、あの紙に書かれた住所に向かっている。科学者である、杏に会うために。

 僕はただの興味本位だが、金剛さんは妹がウィルスについて、何か知っているのではと考えているようだ。妹に会ったところでどうにかなるとは思えないが、ここは金剛さんの直感に任せることにした。

 JCの死体が散在する道を歩く。紙に書かれた住所は近所にあり、数分で目的地に辿り着く。

 僕の実家だった。

 壁はひび割れ、緑の生え散らかした外観は、僕の知る家から随分変わっていたが、剥がれかけの表札は瑪瑙(めのう)の苗字を示している。

 中学ぶりの帰省だ。けれど、感慨は湧かない。牡丹のいないこの家に、帰りたいと思ったことはない。

 とにかく、やるべきことをして早く帰ろう。

 ドアノブに手をかける。鍵はかかっておらず、扉は簡単に開いた。あちこちに薄っすら埃が積もった玄関を、土足で上がる。

 居間の方に人の気配はない。妹がいるとしたら、きっと二階だ。軋む階段を昇り切ると、ようやく見知った光景が出てきた。

 奥から一つ手前が僕の部屋で、その隣が牡丹の部屋。向かいの部屋は杏の部屋だったか。あの子は家にいなかったから、入った記憶は一切ない。

 しかし、今だけは無視できない。二階の三部屋の中で、杏の部屋の戸だけが開いている。

 まあ、今更気後れする必要もないか。中に誰がいようと、僕達に触れる人間はいない。

 金剛さんの手を引いて、杏の部屋に入る。


「……ようやく来た」


 使われた形跡のないベッドと、子供用の学習机だけの殺風景な部屋。小さめのキャスター付き椅子に座っているその人は、僕達の足音を聞きつけ、くるりと反転する。


「久しぶり。兄さん」


 JCと同じ顔をした白衣の少女が、大義そうに指を組んだ。

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