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9. 弾む心にトゲいばら
「キミはこの部屋に入ろうとしたかい?」
宿直室の扉をじっと見たまま、ユラさんが話しかけてきた。その瞳には何が映っているのだろう。
入ることはなかったけど気になった、そう彼女に伝える。
「そうか……」
彼女はそう言い顎に手を当て考え出した。依然扉から目を離す気配はない。
「命拾いしたね。この部屋の中には今、亡霊が出現している。――鎧武者だ。」
ゾッとする。保健室でホッと一息ついたのもつかの間、こんな近くで怪異が発現していたなんて。
「この場所から今すぐ離れましょう!!」
ぼくは彼女の腕をつかみ一緒に離れようとする。
が、ビクともしない。
「次に奴が行く場所を確認しなきゃダメなの。キミもそのうち出来るようになるさ」
「なに……言ってるんですか……?」
「ちょっとしたカラクリがこの学校には仕組まれているのさ」
扉の前に立ったことでソレに気付く。奥からトンデモナイ殺気が放たれていることに。