6. 判断は慎々重々に
男が指をさした直後、それまで月が出ていた夜空が赤く染まっていった。突然のことに立ち尽くすぼくたち。対照的に二人は落ち着いた様子のままだ。
「何が起こってるんだよ……」
「これは文珠川さんたちがやったの?」
「ねえ、ソウタ、もう帰った方が良いんじゃない?」
一分も経たないうちによどんだ赤色に変化した空を眺め、タケルたちが口を開く。やる気に満ちていたぼくたちの顔には恐怖やおびえが見えている。侵入してきた方へ続く道にふと目をやる。
「残念だけど――、もう帰ることはできない」
「七不思議でもっとも強い力を持つ『鎧武者』。彼が動くとき、この学園は異世界へと迷い込むの」
そんなぼくの心を見透かしたように探偵が言う。不安が、ぼくたちを襲う――。
「ここから出る方法はたった一つ。それは、鎧武者をこの世から葬り去ること」
「安心して、キミたちには仲間がいる。巻き込んだのは私たちの責任だから。キミたちは生きて家に帰すと約束するよ」
彼らはいつの間にかぼくたちの前に立ち、トイレの窓から学校の中に侵入しようとしていた。
……ここで待っているだけでいいんだろうか、何かできることはないんだろうか?
彼らはこんな非日常にいきなり放り込まれても、平然としている。きっと、何もしないまま待っていても、ぼくたちは日常に戻ることはできるだろう。
……でも、それじゃあここに来た意味がない。それに、あのお姉さんにやられっぱなしなのはなんか嫌だ!!
「ソウタっ!!」
耳に飛び込んでくる、自分の身を案じる友の声もお構いなしに、ぼくは――、
彼らの後を追いかけた。