4. 呼び声が聞こえてくる
夜、家を出るのは簡単だった。
両親は夜遅くまで仕事をしていて、姉は友人たちとボイスチャットをつなぎゲームをしている。
あとは、こっそりと家に帰ってくれば問題ない。……何事もないだろうけどね。
待ち合わせ場所は学校から少し離れた公園。すでに他の三人は来ていた。動きやすい服装に身を包み、顔には少し緊張が伺える。
「よし。ソウタも来たことだしそろそろ行くか」
「なんだか落ち着かないなー。もう行かなきゃだめ?」
「深夜に子どもだけで歩いているのを見られたら、怪しまれるからね。早く動くことは大事だよ」
「じゃあ行こう。……みんな、来てくれてありがとう」
七不思議のことを誰にも話していなかったら、きっとぼくは一人で夜の校舎に忍び込んでいた。友達がいるだけでこんなにもリラックスできるなんて。
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「―よいしょっと。大丈夫?」
「あ……ありがとう」
敷地内に侵入するのは簡単だった。正門横の花壇に上り、塀を超える。これだけだ。
問題はこの後。放課後に開けていた鍵が開いていたらいいんだけど……。
ぼくたちは校舎に沿うように固まってかがみながら進む。時間は夜9時を回ったところだ。学校の周りは人通りも少ないが、誰にも見られないように念を入れる。そして、曲り角を左に曲がった――。
「――やぁ。なんだか、キミとはここで会う予感がしていたよ」
「この子たちがおまえの言っていた少年か?」
今朝出会った女性と見知らぬ男性が満月に照らされ、こちらを向き立っていた。