1. それは、嵐のように突然に
私の人生はその日、貴方によって決まってしまった。逃れられない運命を悟るにはまだ幼かった。
あれはいつだったか……全てが始まった瞬間を思い出すにはもう少し時間が必要だ。埃っぽい部屋の中へ進み長年放置されていたソファーに座る。革は劣化し、中身はあちこち飛び出してるが構わない。惰性で背もたれに体を預け、ふーっと息を吹く。こんな場所でも思考はできる。……さて、激動の旅を始めるとするか。
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「キミの通っている学校には七つの怪談がある――。」
そんな、ありきたりな、だけど、どこか体がうずうずしてしまう言葉は唐突に。
驚き思わず声の方向へ向いてしまう。そこには、ぼくに向かって微笑んでいる女性が立ってた。
いまは登校中。穏やかで変化のないこの道に表れたお姉さん。手入れの行き届いている黒色の長髪、すらっとした手足、そして青空のような瞳。蛍光色のスポーツウェアを身にまとっており通勤前の運動を終え、休憩しているように見えた。別におかしなことはない。だけど、妙な緊張感。横を通り過ぎるまさにそのときのことだった。
お姉さんの言葉にぼくはしばらく動けなかった。唖然としているぼくに向け、
「今夜また逢いましょう」
そう言い終えたお姉さんは満足そうな顔をして去っていった。
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「――ねえ。どうしたの? さっきの授業中ボーっとしてたよね?」
一時間目の授業が終わると同時に、隣の席に座っているマヤが心配そうな顔をして尋ねてきた。
「どこか体でも痛いの…? わたし、保健委員だから何かあったら言ってね」
「ありがとう……。でも大丈夫だよ」
心優しい友人に感謝を告げ、教室を出る。向かうは図書室。この学校の歴史をまとめた史料がどこかにあったはず。教室から図書室までは離れている。すこし急がないと。
図書室に入りお目当てのものを探す。……あった。持ち出しは不可とのこと。急いで読んでしまおう。